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母の墓前で「ごめんね、ごめんね」…自分が勧めた〈老人ホーム〉で年金15万円の70代母が死去。40代娘の終わりない懺悔【FPが解説】<br />

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月1日 10時45分

母の墓前で「ごめんね、ごめんね」…自分が勧めた〈老人ホーム〉で年金15万円の70代母が死去。40代娘の終わりない懺悔【FPが解説】&lt;br /&gt;

(※写真はイメージです/PIXTA)

なにかと心配な高齢親の一人暮らし。しかし、老人ホームへ入居すれば安心、というわけではないようです。ここでは、一般的に資産が5,000万円から1億円未満の人のことを指す「準富裕層」にあたる母を老人ホームに入れたことで、苦境に立たされることとなった高橋美香さん(仮名)の事例から、セカンドライフの資産管理について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が解説します。

老人ホームという選択肢

高橋美香さん(仮名/42歳)は大企業に勤める会社員です。都内で夫と一人息子とともに、仲睦まじく生活していました。

母親の幸子さん(仮名/74歳)は郊外に持ち家があり、預金は5,000万円程度。これは、準富裕層と呼ばれる資産額です。幸子さんは5年前に夫を亡くしており、広い家にひとりで住んでいました。夫と一緒に築いた家に思い入れがあり、掃除や維持は楽ではないもののこだわりをもっています。

昨今、美香さんは幸子さんの体調を気にかけていました。背中が丸くなった気がする、動作に疲労がみられるなど、気に出したらキリがありません。美香さんは幸子さんに確認してみることにしました。

「お母さん、最近体調よくないんじゃない? もしもきついようなら、なにか相談に乗ってあげられるかもしれない。離れても家族なんだから、なんでも話してね」幸子さんにとってこれは、図星を突かれた形でした。「そんなに目に見えて弱っていたのか……」いささかショックではありましたが、それ以上に娘の優しさに心を打たれます。

「実は……」幸子さんは美香さんに最近体調が優れないこと、そして家の維持が難しいことを打ち明けました。美香さんは母の話を親身に聞き、解決策を講じました。老人ホームへの入居を勧めたのです。

幸子さんの預金が5,000万円もあれば、十分にいい施設で暮らしていけるだろうと美香さんは安心していました。母親も娘の提案を受け入れ、高額な入居金と毎月の費用がかかる高級老人ホームへと入居することになりました。

幸子さんの新しい生活は、初めこそ順調でした。快適な施設、プロによるケア、そしてほかの入居者との交流は、彼女にとって新しい生活のスタートを切るいい機会でした。しかし、その快適な生活は、想定以上に多額の支出を伴うものであり、数年後には予想外の事態に直面することになります。

予想外の支出と資産の減少

幸子さんが老人ホームでの生活を始めてから5年が経過し、預金は急速に減少していきました。入居時の高額な費用だけでなく、医療費や特別な介護サービス、施設内での追加オプションなどが想定以上にかかり、残りの預金はわずか数百万円程度になってしまいました。

「お母さん、少し節約したほうがいいかもしれない」母の年金額は月に15万円程度。老人ホームで収入を超える支出を続ける母に美香さんは、節約を勧めましたが、すでに老後資産は尽きかけています。そんな状況のなか、幸子さんは突然の病で亡くなります。

美香さんは母親の相続を考え、残された資産を調べました。しかし預金はほぼ使い果たされ、残っているのは母親が住んでいた郊外の家とその土地だけでした。土地の評価額は高く相続税の対象となることが判明しましたが、問題は、現金がまったく残っていないということでした。

郊外の土地はそれなりに価値がありましたが、売却するまでのプロセスには時間がかかります。そのあいだに、相続を放棄する選択肢が取れる3ヵ月の期限が迫り、美香さんは現金を工面できず、相続税を払うことができなくなりました。

やむなく相続を放棄することに

美香さんは、土地を相続することを一度は考えました。母親の思い出が詰まった家を失うことなく引き継ぎたいという気持ちもありましたが、相続税の支払いの問題が立ちはだかりました。相続税は評価額に基づいて課されるため、土地の価値が高いほど、相続税の負担も大きくなります。

預金や現金があれば支払うことは可能でしたが、母親の生活費と医療費により現金はほとんど残っておらず、準備ができていない美香さんは苦境に立たされました。

不動産を売却して相続税を支払う方法も考えましたが、売却に時間がかかること、そして買い手がすぐに見つかる保証がないため、期日までに必要な資金を用意できる見込みが立ちませんでした。

相続税の支払いを延長することも可能ではありましたが、それでも現金の不足が問題となり、最終的に美香さんはやむを得ず相続を放棄することを決断しました。

母親の思い出の家や土地は、ほかの相続人や国に渡ることになり、美香さんはその財産を引き継ぐことができなくなりました。母親の生活のために使われた資産は、最終的には美香さんが期待していた相続の形では残らず、彼女は精神的にも経済的にも打撃を受けました。母の墓前で「ごめんね、ごめんね……」と繰り返し懺悔しています。

資産が十分でも、相続と資産管理の計画が必要

準富裕層であっても、老後の資産管理と相続対策を怠ると困難に直面することがあります。

美香さんと幸子さんは当初は十分な資産を持っていると信じていましたが、予期せぬ出費と計画不足により、最終的には相続を放棄する事態に追い込まれてしまいました。実際には、相続税には延納や分割、物納などの措置をとることができますが、それぞれ条件を満たさなければ活用することはできません。特に、老後にかかる医療費や施設費用、そして相続税の問題は、計画的に対処しなければ大きな負担をもたらすことがわかります。

準富裕層であっても、早めに資産運用や相続対策を行い、現金の流動性を確保しておくことが、家族全体にとっての安心に繋がります。

相続を円滑に進めるためには、遺言書の作成や不動産の早期売却、または贈与などを通じて相続税の負担を軽減する手段を検討することが重要です。家族が幸せな老後を過ごし、財産を円滑に引き継ぐためには、早めの計画が不可欠です。

波多 勇気 波多FP事務所 代表ファイナンシャルプランナー

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