なぜ、あんたのほうが年金が多いのよ!夫婦で年金月34万円だったが、67歳夫を亡くした妻、同じ境遇の高校同級生の「遺族年金額」に怨み節
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月28日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
60代と70代の資産状況をみていくと、大した減っていないことがわかりました。「将来のために」と思ってコツコツと積み上げていった資産は、いつか残されるであろう家族の安心のために手つかず……もしかしたら、よくあるパターンなのかもしれません。一方で、実際にパートナーに先立たれ残された場合、そこで理不尽に直面することも多いようです。
60代と70代の保有資産を比べてわかった「老後生活の実態」
将来不安から若いときから資産形成に取り組むのが当たり前になりつつありますが、誰もが「いったいいくら必要か」という疑問をいだいたことがあるでしょう。実際はその人のライフスタイルなどによって用意すべき金額は変わってくるので一概にいえませんが、いまどきのシニア層がどれほどの資産をもっているのかは、ひとつの目標になるかもしれません。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査 [二人以上世帯調査]』によると、金融資産保有世帯における保有額は、60代で平均2,588万円、中央値が1,200万円。70代で2,188万円、中央値で1,100万円となっています。
*定期性預金・普通預金等の区分にかかわらず、運用のためまたは 将来に備えて蓄えている部分とする。ただし、商・工業や農・林・漁業等の事業のために保有している 金融資産や、土地・住宅・貴金属等の実物資産、現金、預貯金で日常的な出し入れ・引落しに備えている部分は除く
その資産配分をみていくと、60代平均2,588万円のうち「預貯金」が1,130万円。全体の43.7%を占めています。続いて「株式」が520万円で、全体の20.1%。「生命保険」264万円(全体の10.2%)、「投資信託」243万円(全体の9.4%)。70代では平均2188万円のうち「預貯金」が964万円で、全体の44.1%。続いて「株式」が459万円で全体の21.0%。「生命保険」248万円(全体の11.3%)、「投資信託」190万円(全体の8.7%)と続きます。
60代と70代で、それほど際立った大きな差はなく、世代間で資産額は平均値で400万円、中央値では100万円ほどしか違いありません。あくまでも将来のために資産形成をしてきた層に限りますが、老後生活のなかで意外と資産を減らしていないのです。多くの人は老後と聞いたとき、年金だけでは足りないから貯金を取り崩して生活していると想像するでしょう。実際は普段は年金だけでやりくりし、急かつ少々大きな出費に際しては貯蓄を取り崩す……そんな生活を送っているかもしれません。
共働き夫婦がもらえる「遺族年金額」…ゼロの可能性も高い
コツコツと積み上げてきた資産は、残される家族のために手をつけない……そんないまどきの高齢者の実態がみえてきましたが、生活のベースとなる年金はどれほどもらっているのでしょうか。厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢基礎年金受給者の平均受取額は5万6,428円、老齢厚生年金受給者の平均受取額は14万4,982円。65歳以上に絞ると、男性で16万7,388円、女性は10万9,165円です。女性のほうが結婚、出産、子育てでキャリアが中断しやすいため、年金額においても男女差が生じています。
金子隆さん・洋子さん夫婦(仮名・67歳)の場合、祖父母の全面的なサポートがあったため、洋子さんはキャリアの中断などなく定年まで勤め上げることができたとか。そのため、年金は隆さんも洋子さんも月17万円、夫婦で月34万円。平均よりもだいぶ多くの年金を手にしていました。
――手取りにすると月29万円ほど。住宅ローンも完済しているので、年金だけで十分でお釣りがくるくらいです
預貯金も4,000万円程度あるので、老後を生きていくのに差し迫った心配もなし。夫婦の老後は安定的に続いていくものと思っていましたが、悲劇は突然やってきます。隆さんが脳卒中で倒れたのです。そして意識を取り戻さないまま帰らぬ人になりました。
茫然自失のなか、いつのまにか葬儀まで終わっていたといいます。
――あまりのことで、記憶がすっぽり抜け落ちているんです
そんな洋子さんを心配して、いろいろな人が声をかけてきてくれます。そのなかにいたのが高校の同級生の里中さん(仮名)。実は里中さんは、1年ほど前に夫に先立たれ、洋子さんと同じ境遇にいました。
――私の場合専業主婦だったから、急いで遺族年金の手続きをしたわ。自分の年金だけだと月6.8万円だけど、遺族年金を合わせたら月17万円ほどになるから。それでやっていけてる
と里中さん。さらに「急ぐ必要はないが、5年の手続き期限がある」という情報も。
先延ばしていいことはないと、洋子さんも落ち着いたころに年金事務所に手続きにいったといいます。しかし、年金事務所からいわれたのは、「金子さんの場合、遺族年金は支給停止となります」ということ。よくわからず「それって、遺族年金はゼロ円ということですか?」と尋ねると、「そうです」の返事。
遺族厚生年金の受給額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3。そして65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある人の場合は、「①死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「②死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高いほうの額となります。
金子さんの場合、①7.65万円、②は10.2万円。さらに65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある人は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。つまり自身の老齢厚生年金のほうが多い場合は、全額支給停止になるということ。洋子さんの場合はまさにそのパターンです。しかも遺族年金は非課税のため、同程度の年金であっても、遺族年金でもらっている人のほうが、手取り額は多くなると考えられます。
――えっ、なんで私、専業主婦だった里中よりも年金が少ないの? 納得がいかない!
自分も遺族なのに、どうして一方は非課税で、自分は課税されるのか……考えれば考えるほど納得がいかないと、金子さん、首を傾げるばかりだといいます。
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