気象庁「今年は暖冬にならない見通し」…〈気温〉が景気に与える影響【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月23日 7時15分
(※画像はイメージです/PIXTA)
記録的猛暑となった今夏。暑すぎる気温は、景気へマイナスに働きました。マイナス影響の結果として、「秋物衣料品の売れ行きの不調」があげられます。残暑を引きずり、秋の到来も例年より遅れていますが、暑さが緩和されれば景気はプラスに作用するのでしょうか。また、今後の冬の気温は経済へどのような影響を与えるのでしょうか。気象庁の予報などからエコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきます。
猛暑は景気にマイナスの影響か
今夏、福岡県太宰府市で最高気温が35℃以上である猛暑日が62日になり、国内の最多記録が更新されました。暑すぎる気温は景気にマイナスに働きました。9月「景気ウォッチャー調査」で「気温」関連現状判断DIを計算すると48.1と、8月48.3から悪化し、2ヵ月連続で景気判断の分岐点50.0を下回りました。業種別の現状判断DI(原数値)をみると、秋物衣料の売れ行きが不振だった、衣料品専門店の悪さが目立ちます。衣料品専門店の現状判断DIは7月39.7、8月38.9、9月39.5と30台の低水準で推移しました。
なお、2~3ヵ月先の先行き判断での「気温」関連DIは9月56.5です。今年の秋は遅めにやってきました。この数値は、気温が秋らしくなれば、景気に対するマイナスの影響がなくなることを期待していることを示唆しています。
四国の衣料品専門店(経営者)が「気温は少し秋めいてきたようだが、長期予報によると10月はまだ少し暖かく、11月以降に気温が下がる予報である。いまより気温が少し下がれば、売上は「そこそこよくなるとみられる」と、「ややよくなる」という判断理由をコメントしています。
全国的にほぼ平年並みの寒さが予想される12月と1月の気温
気象庁が10月22日に発表した「季節予報(3ヵ月予報)」によると、向こう3ヵ月(24年11月~25年1月)の気温は、11月では寒気の影響が弱いため、東・西日本では平年並み、もしくは高いと予想され、沖縄・奄美で高い見込みとのことです。12月と1月の気温は全国的にほぼ平年並ということで、全国的に平年並みの寒さが予想されています。12月以降は、上空の偏西風は中国付近では北に、日本付近でやや南に蛇行する見通しだそうです。
シベリア高気圧は南東側への張り出しがやや強く、アリューシャン低気圧は西側で強い見込みということです。このため、12月以降は東・西日本を中心に、冬型の気圧配置の強まる時期があるという予測です。
向こう3ヵ月の降水量は、北日本の日本海側は低気圧の影響を受けやすく、東日本の日本海側は冬型の気圧配置が強まる時期があるため、平年並みが多い見込みだそうです。向こう3ヵ月間の降雪量は、北日本の日本海側で平年並みか多くなるということです。
今後の見通しで、ラニーニャ現象発生確率が低下
10月10日発表の「エルニーニョ監視速報」で、9月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値偏差が0.2℃とエルニーニョ現象でも、ラニーニャ現象でもない平常状態であることがわかりました。その後に発表された10月上旬分の海面水温の基準値偏差は0.0℃、10月25日発表の10月中旬分の基準値偏差は0.3℃となりました。
気象庁はエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5ヵ月移動平均値が6ヵ月以上続けて0.5℃以上のマイナス幅となった場合をラニーニャ現象と定義していますが、その目安の0.5℃に届いていません。
一般的には、エルニーニョ現象が発生すると冷夏・暖冬に、ラニーニャ現象が発生すると酷暑・厳冬になりやすく、天候要因による季節商品の売り上げを通じて、消費などに影響をおよぼすことが多いですが、平常状態ならば景気には中立的ということになりやすいです。
「エルニーニョ監視速報」で、今後のラニーニャ現象発生確率が低下
10月10日発表の「エルニーニョ監視速報」で、今後に関し、平常状態の可能性が50%、ラニーニャ現象が発生する可能性が50%と同程度になりました。現在、ラニーニャ現象時の特徴に近づきつつあり、冬にかけてラニーニャ現象時の特徴が明瞭になりますが、その状態は長続きしないとされています。
以前の見通しをみると、5月10日発表のエルニーニョ監視速報で、今後(その後)に関し、平常状態の可能性が40%、ラニーニャ現象が発生する可能性が60%になって以降、9月10日まで5ヵ月連続でラニーニャ現象が発生する可能性が60%になっていました。
コロナ禍前を上回った、岐阜・長良川鵜飼の観覧船・乗船人員
今年は西日本の気温が高かったといえます。24年の姫路の最高気温35℃以上の猛暑日は26日で、平年を20日ほど上回りました。
猛暑の中で9月の姫路城の入場者は、11万7,361人で23年9月の11万9,377人を1.7%下回り、8月に続き2ヵ月連続マイナスになりました。コロナ禍前の19年9月11万9,957人も2.2%下回りました。24年の猛暑日がゼロだった函館の五稜郭タワー・入場者は前年同月比+32.8%、19年9月比+20.5%と好調だったことと対照的です。
毎年5月11日から10月15日がシーズンの、24年の毎月の岐阜・長良川鵜飼の観覧船・乗船人員をみると、23年の数字を5月から10月の6ヵ月すべてで上回りました。コロナ禍前の19年を5月から9月の5ヵ月間は下回りましたが、10月で初めて、コロナ禍前を上回ることになりました。この背景には、気温など気候面の落ち着きもあるのではないかと思われます。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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