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西田敏行さん、76歳で逝去。車いすの役柄が増え、心配されるなか貫いた“俳優人生”に学ぶ「“老い”というキャリア」の重ね方――高齢者の4人に1人が働く日本で

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月1日 8時15分

西田敏行さん、76歳で逝去。車いすの役柄が増え、心配されるなか貫いた“俳優人生”に学ぶ「“老い”というキャリア」の重ね方――高齢者の4人に1人が働く日本で

(※写真はイメージです/PIXTA)

俳優の西田敏行さんが都内の自宅のベッドのうえで2024年10月27日に急逝しました。原因は虚血性心疾患と所属事務所より発表。最期まで俳優として現役を貫いた西田敏行さんは、2021年のTBS系ドラマ『俺の家の話』では認知症が進行し要介護となる「能楽」保持者の人間国宝を演じています。昨今は西田さんのように第一線で活躍する表現者に限らず、働くことを選択するシニアが増えています。本記事ではシニアと労働と介護について解説します。

西田敏行さんが急逝。最期まで俳優として話題作に出演

西田敏行さんは2001年に頸椎症性脊髄症2016年に頸椎亜脱臼、胆のう炎を発症しました。晩年は体調や足腰が万全ではなく、風前の灯火に身をすり減らしながら仕事を続けていたと伝えられています。車いすの役柄や椅子に座っている場面を演じ、74歳を迎えてもなお話題作への出演をつづけていました。

一昔前には、俳優のように定年のない職業(個人事業主)と、終身雇用の企業勤めをしている人とでは老後のライフプランが大きく乖離していました。しかし、近年は定年退職後に引退しない人が増え、働くシニアが増加しています。総務省の「労働力調査」によると、2023年の65歳以上の就業者数は914万人と過去最多を記録。20年間連続で増加をつづけています。

(参考:労働力調査「高齢者の就業」|総務省)

10年前の2013年には女性が247万人、男性が390万、計637万人でしたが、最新調査の2013年には、女性が380万人、男性が534万人、計914万人です。この10年間で65歳以上の就業者数は、女性が約54%、男性が約37%、男女計では約44%増加しています。

特筆すべきは平均寿命が86.4歳と世界一(※)寿命が長く、65歳以降のシニア人生が21年間ある女性のみに当てはまる傾向ではない点です。79.6歳と、平均寿命が女性と比べて6.8歳短く、65歳以降のシニア人生が15年間となる男性も上昇傾向にあります。新型コロナ拡大後も目立った減少は見られず、ゆるやかに上昇していることが見てとれます。

65歳以上人口における就業者の割合は25.2%となり、高齢者の4人に1人が仕事をする時代を迎えています。

「生活のため」「社会と関わりをもつため」働く理由はそれぞれ

背景には、インフレによる物価の上昇や年金の目減り傾向などを受け「老後の生活費を稼ぐため」や、「社会参加することによるQOLの向上」。「これまでのキャリアや資格、経験を活かした自己実現」等が挙げられます。

(※)令和5年簡易生命表の概況|厚生労働省)

(参考:主な年齢の平均余命|厚生労働省)

(参考:統計からみた我が国の高齢者 |総務省)

「労働意欲のある"高齢者”」と「労働力不足に悩む"企業”」

これまでは、西田さんのように年齢を活かして仕事をすることは、俳優や文筆家など芸術分野で大成している人や、著名な経営者や研究者など一部の人のみと考えられてきました。

しかし、昨今は労働意欲のある高齢者が増える一方、少子高齢化により労働力不足に悩む企業が増加。経験値や非認知能力が高く、即戦力となる人材が求められています。年齢を問わず個人の能力が発揮できる機会が増えました。

政府は年齢や性別に関係なく、誰しもが職場や家庭などで生きがいをもち充実した生活を送る「一億総活躍社会」を推進。その一環として「意欲のある高齢者が年齢にかかわりな く働き続けることのできる生涯現役社会の構築が必要(抜粋元|厚生労働省)」という方針を掲げています。

具体的に、初期高齢者となる65歳以降のシニア人材について「(所属企業の)継続雇用」と「再就職支援」を両輪とし、助成。下記【図表2】、31人以上規模の企業を対象にした政府調査を見てみましょう。

平成21年に216万人だった60 歳以上の常用労働者の数は、令和4年には442万人と急増。13年間で105%増、約2倍以上に推移しています。

(参考:令和4年 高年齢者雇用状況|厚生労働省)

15年後には高齢者の15%、6~7人に1人が認知症に

働くシニアが注目される一方、高齢認知症患者の増加が深刻な社会課題となっています。認知症は要介護の原因として最も多く、健康寿命に大きく影響します。

厚生労働省の研究結果では「認知症の高齢者の数は2025年に472万人、2040年に584万人に増加」と推計されています。すなわち、15年後には高齢者の15%、6~7人に1人が認知症になると予測されています。背景には2040年に団塊ジュニア世代全員が、65歳以上の初期高齢者となり高齢者人口の大幅な上昇があります。

2021年のドラマ『俺の家の話』(TBS系)で西田敏行さんは、認知症が進行する「能楽」保持者の人間国宝・観山寿三郎を演じています。第8話では、家族が在宅介護をつづけることが困難となり、認知症対応型のグループホームに入所するシーンが描かれています。

(参考:認知症有病率の全国調査|厚生労働省、国立大学法人 九州大学)

要介護者を対象にした施設の種別

要介護者を対象にした施設には、複数の種別があります。老人福祉法によって定義づけられた公的施設である「特別養護老人ホーム(特養)」や、介護度別の定額を支払う「介護付き有料老人ホーム」。認知症に対応した共同生活介護を提供する「グループホーム」などです。

たとえば、特養は要介護3以上の人しか入居できないなど要件は厳しいですが、24時間スタッフが常駐しており、利用料金が安く人気です。そのため入居待機者が多い傾向にあります。

西田さん演じる寿三郎が選択した、認知症対応型の共同生活介護の受給者数は、近年右肩上がりに上昇しており、認知症患者の選択肢の一つになっています。平成19年に125万人だった利用者は、平成31年に207万人に。12年間で66%増加しています。5~9人の少人数で共同生活を送る同施設は、家庭的な雰囲気を維持しつつ、専門的な介護を提供できるのが特徴です。

認知症を患いながら「はたらく」という選択

それでは労働意欲のあるシニアが認知症を発症したら、はたらくことはできないのでしょうか。昨今は生活課題を抱えた人とそれをサポートする人を分けることに疑問を感じる人が増え「支援を受けながら、社会に貢献する」という概念が一般的になりつつあります。

たとえば、利用者に企業のイベントの手伝いや農作業の仕事の案内を行う、デイサービスが登場しました。(※)

デイサービスは、利用者が可能な限り自立した生活が送れるよう、食事や入浴など日常動作の訓練をする通所介護サービスです。介護士が利用者の自宅に出向くのではなく、利用者がデイサービスセンター等の施設へ出向くのが特徴です。「提供される側に提供する機会を提供する」という新しい機能が注目されています。

(※ボランティアとして地域に貢献し謝礼を受け取る形が一般的です。介護保険サービスの利用者は、ボランティア活動の謝礼受領に要件があるため、確認が必要です)

「患者」や「要介護者」となってから新しい人生がスタート

現在、健康なまま最期を迎えられる人はごく一部です。多くの人が「患者」や「要介護者」となってから新しい人生がスタートします。そうなったときにつらい身体症状や自尊心の喪失、孤独に心身を蝕まれない社会をつくっていくことが今、求められています。

THE GOLD ONLINE 編集部

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