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70代年金暮らし主婦が“初孫フィーバー”で大暴走…2年後、「貯金枯渇」と「親子断絶」二重の危機に「よかれと思ってやったのに」【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月30日 8時15分

70代年金暮らし主婦が“初孫フィーバー”で大暴走…2年後、「貯金枯渇」と「親子断絶」二重の危機に「よかれと思ってやったのに」【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

平穏な年金生活を送っていた田中さん夫婦(仮名)。待望の孫の誕生に加え、息子家族が近くに引っ越してくることになり、ますます幸せな老後を送れるはずでした。しかし、孫への愛情が暴走し、気づけば貯金は激減。さらに息子夫婦との関係も最悪の事態に……。本記事では、「孫のため」と始めた行動が思わぬ結果を招いてしまった夫婦の苦悩について、FPの三原由紀氏が解説します。

孫への愛情が招いた予想外の展開

「まさかこんなことになるとは……」田中ミネ子さん(仮名・72歳)は、深いため息をつきました。

夫の正雄さん(仮名・75歳)と2人で年金生活を送るミネ子さん。2年前、遠方に住んでいた息子夫婦が近くに引っ越してきたときは、こんな未来が待っているとは想像もしていませんでした。

もともと息子夫婦は生まれたばかりの子ども(ミネ子さんにとっての孫)と3人、東京でマンション暮らしをしていました。しかし、東京での子育てにはお金がかかります。また、落ち着いた場所で子育てをしたいという希望もあり、ミネ子さんたちの住む実家近くのマンションに引っ越してきたのでした。

これにミネ子さんは大喜び。近くに息子がいれば何かと安心ですし、なにより孫の成長を近くで見守れることが嬉しかったといいます。

そして、「可愛い孫のためなら……」と、おもちゃに洋服に、ミネ子さんは惜しみなくお金を使っていきました。一人息子の子どもということもあり、孫への愛情は人一倍。正雄さんも最初は妻の行動を黙認していました。

夫婦の年金額は月22万円。同世代の平均的な額とはいえ、孫への出費を賄うには十分ではありません。老後資金として貯めてきた貯金は残り1,100万円ほどありましたが、金額がみるみる減っていく通帳を見て、正雄さんは次第に危機感を募らせていきました。

しかし、事態が決定的に悪化したのは、孫の初節句でのことでした。

亀裂を生んだ「五月人形事件」

ミネ子さんは、孫の初節句に特別なものをプレゼントしたいと考えました。そして、息子夫婦に相談することなく、ガラスケース入りの立派な五月人形を購入したのです。

ガラスケースには家紋入りを特注オーダー、人形本体と合わせて22万円。なるべく大きく見栄え良いのがミネ子さんの好みだったのですが店員さんの助言もあり高さ50センチほどに抑えました。それでも32インチのテレビの高さを超えます。

「立派な五月人形なら、きっと喜んでくれるわ。本当は兜にしたかったけど、ご実家のほうで用意されるかもしれないし」

嫁の実家への配慮は見せたものの、現代の住宅事情を考えると、大きな五月人形の収納は深刻な問題となり得ます。実際のところ、五月人形を購入する際に重視するポイントとして、「サイズ」は上位に挙げられています。

息子夫婦も例外ではなく、この突然の大型プレゼントに困惑しました。特に、息子の妻が不快に思ったであろうことは容易に想像できます。息子からは「勝手なことをしないでほしい」「気持ちはわかるけど、うちの住環境を考えていない」とキツく言われてしまったのです。

この出来事を境に、息子夫婦との関係は急速に冷え込みました。善意とはいえ、夫婦の希望も聞かずに孫の洋服やおもちゃを買ってくるミネ子さんに、元々夫婦はストレスを溜めていたのです。さらには、大きなジャングルジムを購入しようとしたり、アドバイスといいながら子育てに口出しをし過ぎて嫁の反感を買った経緯もあり……。ついには、孫に会うことさえ禁止されるという最悪の事態に発展してしまったのです。

「すべては孫や息子夫婦のことを思って、よかれと思ってやったのに。こんなの、あまりにひどすぎる……」

ミネ子さんはどうしてこんなことになってしまったのか理解できず、息子夫婦が冷たすぎると、悲しみと怒りを正雄さんに訴えました。

適切な関係とお金の考え方とは?

この事態を重く見た正雄さんは、家族の仲介役を買って出ました。まず、ミネ子さんと話し合い、息子夫婦の立場に立って考えることの大切さを説いたのです。このままでは毎月の赤字だけに止まらず、貯金も底をつく危険性を指摘しました。

次に、息子夫婦とも率直に話し合う機会を設けました。その場で正雄さんは、「ミネ子の気持ちを汲んでほしい」と頼みつつ、「今後は、必ず事前に相談することを約束する」と伝え、さらに、五月人形の問題については、「一緒に良い解決策を考えよう」と提案しました。

例えば、コンパクトな五月人形に交換する、あるいは、正雄さん宅で預かり、毎年の節句の時期だけ飾るなど具体的な解決策を出したのです。

実は、こうした“孫フィーバー”による暴走はめずらしくありません。学術的にも老年期において、特にストレスがかかりやすい大きなライフイベントとして孫の誕生が示されています。

これを「ストレスフル・ライフ・イベンツ」といいます。孫の誕生は、一見、嬉しい出来事に思えることでしょう。しかし、孫費用や孫の面倒を見るなど節度を超えた関わりは、金銭や体力の面での負担になり、高齢夫婦の穏やかな暮らしを乱す大きなストレス要因となります。

ミネ子さんも節度を守りつつ、息子家族と関わっていたら、今回のような事態を避けられたかもしれません。

また、一般的なケースでも「孫育て」にかかる費用は意外と高額です。ソニー生命「シニアの生活意識調査2024」によると、祖父母が孫1人あたりにかける年間金額は平均約11万円。「おこづかい・お年玉・お祝い金」「一緒に外食」「おもちゃ・ゲーム」が主な支出項目となっています。

しかし、孫へ過度にお金を使うことは老後破綻のリスクを高めます。同時に、干渉しすぎることで、人間関係にヒビが入ることもあり得ます。

最後に、子ども世帯へ迷惑をかけないためにも、以下のポイントを提案しました。

金銭感覚の共有

年金生活者としての現実的な収支を息子夫婦に伝え、理解を得ることが大切です。無理なく続けられる範囲でのサポートを心がけること。

役割の明確化

孫育ては基本的に親の役割です。祖父母は脇役に徹し、必要な時にサポートする立場であると意識すること。

貯蓄の重要性

年金生活では、急な出費に備えて貯蓄を維持することが重要です。孫のためとはいえ、自身の生活を脅かすような出費は避けること。

非金銭的な愛情表現

お金を使わなくても、孫との時間を大切にすることで十分に愛情を伝えられます。公園での遊びや絵本の読み聞かせなど思い出作りを重視すること。

話し合いを通じて、家族全員が互いの気持ちを理解し合える方向に進むことを願ってやみません。

三原 由紀 プレ定年専門FP® 

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