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世界一の保険大国・日本での新たな選択肢…本格的に拡大しつつある「保険買取りサービス」とは?【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 8時15分

世界一の保険大国・日本での新たな選択肢…本格的に拡大しつつある「保険買取りサービス」とは?【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

あなたは保険買取りサービスをご存じですか? 名前だけ聞くと、「保険を売買するなんて怪しい」「違法行為ではないのか?」と思うかもしれません。実際はどうなのでしょうか? そこで本記事ではファイナンシャル・プランナーの松本耕太郎氏が、保険買取りサービスとは一体どういうもので、アメリカと同じように日本でも流行る可能性があるのかについて、解説します。

保険買取りサービスとはどんなものか?

保険買取りサービスは、アメリカでは1980年代から始まっていて、どんどん拡大しています。日本でも2022年から始まり、今年の7月から大手証券会社であるマネックスグループが本格的にサービスの提供を始めました。

では、保険買取りサービスの内容とはどんなものなのでしょうか。

例えばガンに罹患し収入が減ってしまった、治療費の増加によって生活費が増えたことで保険料を払うことが難しくなった場合、今までであれば保険を途中解約して保険料を削減する(とはいえお金はほとんど戻ってこない)という選択肢しかありませんでした。

しかし保険買取りサービスを利用することで、保険料の負担を減らしたり解約返戻金を受け取りたい時に、保険を買い取ってもらったりすることでお金を受け取ることができます。

買い取られた後は、その会社が保険料を負担する形で契約は継続します。また、保険金受取人もその会社に変更となり、被保険者に万が一のことがあれば保険金は同社が受け取るという仕組みです。

買取り金額は保険金、医師による診断書など総合的に考えて決められます。病状が重く保険金が支払われる可能性が高いほど、買取り金額は高くなる傾向にあります。

保険買取りサービスのメリット

保険買取りサービスのメリットとして以下のものが考えられます。

1. 保険料の負担を減らす

保険買取りサービスでは、買取り後の保険料を買取り先の会社が払うことになります。そのため、保険料の負担を減らす効果があります。

2. まとまったお金を得ることができる

保険買取りサービスは解約返戻金より高い金額を受け取ることができます。現時点で解約しても、少額しかお金が返ってこない場合などに効果的なサービスです。

保険買取りサービスのデメリット

保険買取りサービスのデメリットは以下のものが考えられます。

1. すべての保険が買い取れるわけではない

この保険買取りサービスは、種類によって買い取れない保険もあります。保険金にレバレッジを効かせられない年金保険や医療保険などは買取りが出来ません。そのためすべての人に保険買取りサービスを提供できるわけではありません。

契約日から2年以上経過していない契約は買い取れませんし、買い取る場合は家族や保険金受け取りの同意がないと買い取れないことも覚えておきましょう。

2. 買取り金額の相場が分からない

日本での保険買取りサービスはまだ始まったばかりで、競合他社が少ないです。そのため買取り金額の相場が分からず、顧客側が損をしてしまう可能性も少なからずあるといえるでしょう。

アメリカにおける保険買取りサービスの現状と歴史

1980年代にエイズが大流行した時に、患者の高額な治療費や生活費の足しにするために、生命保険を第三者に売却し、保険金の一部を前払いで受け取ることができる“ヴィアティカル・セトルメント(Viatical  Settlement)が始まりました。当時、エイズは治療法がなく、患者は余命が短いと予測されていたため、この制度は末期患者の経済的負担を軽減するための手段として大いに活用されました。

1990年代になると、ヴィアティカル・セトルメント(Viatical Settlement)に限らず、末期患者でなくても保険契約を売却できる「ライフ・セトルメント(Life Settlement)」という形態が登場しました。これにより保険買取りサービスは格段に広がりました。

2000年代に入ると、ライフ・セトルメントの市場は拡大しましたが、一方で詐欺や不正取引も増加しました。これに伴い、州ごとの規制が強化され、生命保険買取り業者に対して、厳しい基準が設けられました。これにより、業者の透明性や契約者保護(ライセンス制度の整備、売却条件や手数料の情報提供の義務付けなど)が強化され、消費者が安全にサービスを利用できる環境が整えられました。

現在アメリカにおける、ライフ・セトルメント市場は数億ドル規模に成長していて、多くの高齢者が退職後の資金確保や、経済的な不確実性に備えるために、このサービスを利用しています。

保険買取りサービスを利用するにあたってのFPとしての注意点

保険買取りサービスを利用するにあたって注意すべきことがいくつかあります。

まず一つ目は、保険買取りサービスを安易に利用しないことです。

通常は、保険を解約せずに最後まで契約を継続した方が金銭的には有利になるということを覚えておきましょう。また、生前に保険を売ってしまうことで、遺族に対する保障がなくなり、それによって残された家族が不利益を被る可能性も出てくるでしょう。

また、保険会社にお金を借りることができる契約者貸付制度、重篤な状態の場合に生前に保険金を受け取ることができるリビングニーズ特約などもあるので、ご自身の病気の状態、保険契約の内容を確認した上で、サービスを利用するかどうか考えることが大切です。

二つ目は、業者の安全性を調べることです。

日本において保険買取りサービスはまだまだ一般的ではありません。欧米の例でもお伝えしましたが、ライセンス制度など体制整備が整っていない場合、詐欺や悪質な業者が増える可能性があります。またデメリットでも話しましたが、買取り金額の相場がわかりづらいため、買取り金額を不当に安く見積もってくる業者がいる可能性もあります。

現状、安全性を調べることは客観的な基準がないので簡単ではありませんが、まずは長くサービスを扱っている、大手が取り扱っているなどの基本的な部分から会社の安全性を見ていくとよいかもしれません。

保険利用についての新たな選択肢として

がんなどの大きな病気に罹ったとしても、医学の発達で患者が亡くなるまでの期間が延びています。これ自体は喜ばしいことですが、それに伴い治療費や通院交通費、患者の介護を行うことによる家族の収入減少など、以前よりも経済的負担は増加しています。

また少子高齢化が加速し、それに伴い高齢者の治療費の自己負担割合が増える法改正も起きており、今後日本において治療費が増加することは避けて通れない事態となっています。そのような状況で、保険利用の新しい選択肢が増えたことは、消費者にとって喜ばしいことだと言えます。

日本は「世界一の保険大国」と言われるほど、保険加入率が非常に高い国です。もちろん上手に使えばという前提ではありますが、それだけこのサービスの恩恵を受けることができる人が多くいるともいえます。保険買取りサービスが今後日本でどのように広がっていくのか、注目されるところです。

松本 耕太郎

ファイナンシャル・プランナー

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