えっ?被相続人の銀行口座が凍結された!難解な口座解約手続き、相続人全員の合意が必要です【相続専門税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月3日 11時15分
(画像はイメージです/PIXTA)
銀行預金口座の名義変更も非常に重要な手続きです。銀行預金口座を継続して使うのなら、口座の名義変更をすることになります。使わないなら、預金口座を解約して預金を払戻してもいいでしょう。いずれにせよ、相続人が手続きをおこなわなければなりません。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。
被相続人の口座は凍結される
まず理解しておきたいのは、被相続人の銀行預金は「亡くなった日に相続財産」となるということです。
相続人が複数いる場合は、亡くなった日にすべての相続人にとっての共有の財産になります。遺産分割が確定する前の相続財産の保全を目的に、口座は凍結されます。入金や出金といった取引が一切できません。
葬儀費用等を故人の口座から引き出せる「仮払い制度」
葬儀費用の支払いなどでお金がどうしても必要になってくる場合、仮払い制度を利用すれば、例外的に一部の金額だけ引き出すことができます。150万円が上限ですが、「預金残高×3分の1×法定相続分の金額」までは引き出すことができます。
ただし、仮払い制度を利用すると、相続放棄できなくなるので、その点は注意が必要です。
そのあとお金を引き出すには、銀行預金を解約するか、名義変更が必要になります。
相続する人が複数いる場合、相続人全員の直筆の署名と実印と印鑑証明書が必要になります。遠く離れた所に住んでいる相続人や、これまでまったく連絡をとっていない相続人がいたとしても、ひとりひとりに連絡して対応しなくてはなりません。
遺産分割協議に合意できなければ、いつまでたっても銀行預金の相続手続きが進まないわけです。亡くなったお父さんの預金口座が複数の金融機関にある場合、すべての金融機関で手続きが必要となりますので、本当に大変です。
遺産分割協議書はどの金融機関でも必要です。相続人全員で実印を押すことになりますので、印鑑証明書も用意してください。
あと、戸籍謄本と住民票です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と住民票の除票、そしてすべての相続人の戸籍謄本です。通帳とキャッシュカードがあれば、それも提出する必要があります。
銀行預貯金口座の名義変更の必要書類
●遺産分割協議書
●被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
●すべての相続人の戸籍謄本
●すべての相続人の印鑑登録証
●相続手続依頼書
●被相続人の通帳、キャッシュカード
相続が発生したとき、故人の銀行口座の扱いに迷う人、存在する口座を把握できず困る人は多くいます。被相続人の銀行口座の残高は相続財産となるため、扱いには十分な注意が必要です。
通帳がすべて保管されていれば問題ないかもしれませんが、長らく記帳していない可能性や、通帳自体を紛失している可能性も考えられます。そのため、亡くなった方の全財産を漏れなく把握するには、銀行残高証明書を取得したほうがいいでしょう。
相続人が知らない口座が出てきたり、借入金など、通帳だけでは把握しきれない負の資産があったりするかもしれません。
銀行残高証明書は、取引されていた口座の各残高を書面で証明するものであり、借入金などもすべて記載されます。
金融機関での「残高証明書」の取得方法
残高証明書は、各金融機関に申請すれば発行してもらえます。
金融機関によって多少の違いがあるかもしれませんが、申請の際に必要なものは、原則として下記になります。
残高証明書申請の必要書類
●亡くなった方の戸籍謄本または除籍謄本
●相続人の戸籍謄本
●申請する方の本人確認書類
●実印と印鑑登録証明書
発行手数料も必要ですが、こちらも金融機関によって金額に差があるので注意しましょう。
相続財産としての「既経過利息」って何?
残高証明書には、普通預金だけでなく、定期預金の残高も記載されますが、定期預金には注意点があります。
通常は「既経過利息」という〈預金を相続開始日で解約したときに支払われる利息・未収になっている利子所得の金額〉が記載されていないため、それを記入してもらうように依頼することが必要です。金融機関によっては、残高証明書とは別に「既経過利息計算書」を発行してくることもあります。
残高証明書に記載してもらう残高の日付は「相続開始日」であり、残高証明書の申請日ではない点も要注意です。
預金利息を受け取る際には、20.315%の税率を乗じて算出した所得税と住民税が源泉徴収されるため、源泉徴収額を控除した金額が、相続財産となります。
故人の銀行口座の所在を探す方法は?
もし、通帳を紛失していた場合やどこの金融機関に口座があるかわからない場合も考えられます。
亡くなった方が遺言書を書いていれば、どこの金融機関と取引していたかわかりますが、遺言書がない場合は、相続人が自分で調べなければいけません。
調べる方法は、まず家のなかをくまなく探し、通帳やキャッシュカード、利用明細書といった手がかりを探すという、地道な作業からはじめます。
金融機関の社名が書かれたカレンダーや、広告宣伝の郵便物が残されていた場合は、その金融機関に口座が存在している可能性があると考えるべきでしょう。
インターネット専用銀行の場合は、メールやスマートフォンの銀行アプリを確認するか、郵便物を確認するしかありません。
相続発生で「預金口座は凍結される」というのは本当か?
相続が発生したことを金融機関に伝えると、そこにある口座の預貯金が凍結されて引き出し不能に…という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
被相続人が亡くなったことを金融機関に知らせると、被相続人の口座は凍結され、出金だけでなく入金も含め、一切の取引ができなくなります。
口座が凍結されるのは、預貯金を相続財産として保全するためです。預貯金は遺産分割が確定するまで、相続人のうち誰のものになるか決まっていない状態にあるため、誰にも引き出せないようにする必要があるのです。
遺産分割が確定したあと、名義変更の手続きが完了すれば、被相続人の口座は相続人の名義の口座になります。その口座で今後取引するつもりがなければ、解約して払い戻しすることも可能です。
葬祭費用等を賄う「預貯金の払い戻し制度」
しかし、人が亡くなれば、葬儀や火葬の費用、未払いの医療費の支払いなど、多額のお金が必要となります。被相続人の口座からその費用を引き出したいと考える方も少なくないでしょう。
実は、「預貯金の払戻し制度」といって、一部のお金を先に引き出せる制度があります。法定相続人であれば、単独で払い出しすることが可能です。
ただし金額には制限があり「預貯金残高の3分の1に、法定相続分をかけた金額」が引き出せる上限となります。そのうえで、1つの金融機関から引き出せるのは最大150万円までとなっています。
「預貯金の払戻し制度」を利用する場合、金融機関には「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本」「相続人全員の戸籍謄本」「申請する相続人の実印と印鑑証明書」が必要となります。
岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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