地中海クルーズのはずが北関東の温泉旅館に…月収52万円で退職金2000万円、60歳まで勤め上げた大手食品メーカー会社員の大誤算とは?妻に懺悔の涙を流したワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月30日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「辞めようと思ったことは一度や二度ではないです」大変なことやつらいことがあっても何とか歯を食いしばって新卒で入社した会社で40年あまり勤め上げた秀典さん(仮名)。長年の貢献のカタチとしてもらった退職金。「定年退職を迎えたら、退職金で何をしようか」と考えている人は少なくないでしょう。しかし、とんだ誤算もあるようで……。
大卒サラリーマンの定年退職金の平均額
長年の功労に報いる形で会社が支給する退職金。しかし、昨今は誰もが退職金を手にできる、というわけではなさそうです。
厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、退職給付金制度がある企業は74.9%。「従業員1,000人以上」の企業では90.1%、「従業員300~999人」で88.8%、「従業員100~299人」で84.7%、「従業員30~99人」が70.1%と、規模の小さな企業ほど、定年時に退職金がもらえない、ということになっています。またいまや転職が当たり前。十分な退職金がもらえるほどの勤続年数を満たしている人は、以前と比べてだいぶ少なくなっているでしょう。
定年退職金の平均額は「大学・大学院卒」で1,896万円、「高校卒」で1,682万円。月収換算でそれぞれ36.0ヵ月分、38.6ヵ月分。つまり定年直前の月収は、大学・大学院卒サラリーマンで52万円、高校卒サラリーマンで43万円ほどだったと推測されます。
大学・大学院卒の退職金について勤続年数別にみていくと、「勤続20~24年」で1,021万円、「勤続25~29年」で1,559万円、「勤続30~34年」で1,891万円、「勤続35年以上」で2,037万円となっています。新卒で入社してプロパーとしてずっと同じ会社で働いた場合、2,000万円ほどの定年退職金が期待できます。
それでは退職金が出たら何に使っているのでしょうか? 一般社団法人投資信託協会『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2022年3月)』によると以下の通りです。
「預貯金」…59.3% 「日常生活費の充当」…25.6% 「旅行等の趣味」…21.7% 「住宅ローンの返済」…20.3% 「資産運運用のための金融商品の購入」…20.3% 「住宅のリフォーム」…19.0% 「家電など、耐久消費財の購入」…11.0%旅行好きの妻に地中海クルーズをプレゼントしたかったけれど…
退職金を受け取れた人たちの約6割が「預貯金」に回し、旅行などの趣味に使っている人は約5人に1人ということです。意外に少ない?
――定年退職を迎えたらクルーズ旅行に出かけようか?
先ほどの60代の秀典さんはそんな話を妻としていました。秀典さんは大学卒業後、大手食品メーカーに就職し死に物狂いで働いてきました。妻は大学時代から付き合っていた同級生で大学卒業後、大手旅行代理店で働いていましたが第一子の出産をきっかけに退職。それ以来、専業主婦として秀典さんを支えてきました。「辞めようと思ったことは一度や二度ではないです」と語っていた秀典さんがそれでも会社を辞めなかったのは、妻が支えてくれたから。そんな妻への感謝も込めて、二人でクルージングの旅に出ようとあれこれ計画していました。
60歳で定年退職を迎えた秀典さん。退職時の月収は52万円ほどでした。元々旅行好きで大手旅行代理店で働いていたこともある妻が探し出してきた地中海のクルーズ旅行は、決して安いとは言えないものの、長年の労を労わる金額としては高くもなく、退職金と照らし合わせてみても「痛手」とは言えない金額でした。しかし、結局二人で行ったのは自宅から約2時間ほどで行ける北関東の温泉旅館でした。
定年を迎え、解放感もありしばらくは舞い上がっていた秀典さん。しかし定年後を考えると生活費が潤沢とは言えない状態に気付きました。秀典さんの現役時代は一人娘の教育費もかかりました。「早めに資産形成をしておけばよかった」と肩を落とす秀典さん。
さらによく考えてみると、妻は共働きで働く娘夫婦をサポートするため足しげく娘の家に通っています。同じ都内とは言え、今や妻のサポートに頼り切っている娘一家。長い期間、家を空けることはこのタイミングでは難しい状態でした。
落ち込む秀典さんに妻は「何十年も昔の話だけれど、旅行代理店時代、北関東は私の担当だったから懐かしかったわ。それに私たちはまだ60代。健康でさえいれば旅行に行く時間はまだあるわ」と声をかけました。そんな健気な妻に秀典さんは「すまない」と人知れず涙を流すのでした。
先ほどの『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査(2022年3月)』によると、投資経験のある人は54.8%。半分以上の人が投資経験があります。また、初めて投資をした年齢については60代で17.8%と5人から6人に1人です。
投資は元本を保証するものではないので、退職金のすべてを投資につぎ込むのはかなりリスクがありますが、FPなど専門家に相談するなど検討してもよいかもしれません。
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