年金30万円・退職金2,000万円でも「生活が苦しい…」元エリートサラリーマンが嘆くワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月29日 21時30分
(※写真はイメージです/PIXTA)
大企業で勤め上げ、年収は1,000万円以上。そんな元エリートサラリーマンのなかには「年金を月30万円以上もらっている」という羨ましい人もいます。退職金も数千万円をポンともらっている世代なので、悠々自適の老後を暮らしているはずですが……? 厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」などと共にみていきましょう。
まさに俗に言う「勝ち組」だったが…
厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金で14万4,982円です。これが平均の金額ですが(ちなみに標準報酬月額の平均は32万1,000円)、世の中には、もっと多額の年金を受給している高齢者も存在します。
現役時代に年収1,200万円以上もらっていたようなエリートサラリーマンならば、月に30万円ほどの年金を受給していることもあります。
退職金も2,000万円ほどもらっているでしょう。中央労働委員会『令和3年賃金事情等総合調査』によると、定年退職による平均退職金は1,872万9,000円で、さらに満額勤続した場合の定年退職金は、大卒で2,230万4,000円、高校卒で2,017万6,000円です。
所有する金融資産で考えると、まさに俗に言う「勝ち組」。
「現役時に支払った額も多かったのだから、多くもらうのは当然。むしろ少ないくらいだ」
と考える人もいるでしょう。年金の受給総額は「×受給された年数」です。エリートサラリーマンとして、長い間ストレスにさらされながら多くの保険料を納めてきたわけですから、当然という意見にも頷けるかもしれません。
またこの世代に多いのが、妻が専業主婦で夫を懸命に支えていたケースです。妻の家事努力なしには、エリートサラリーマンもエリートたる働きはできなかったわけですが、専業主婦の場合、国民年金のみの受給で月5万円ほど、ということもあります。現役時代と同様に年金生活においても、収入面で妻を支え続ける必要があるのです。
プライドを捨て「生活レベルを落とすこと」は難しい
ここで、悪いケースを考えてみましょう。妻が認知症などで要介護となり、老人ホームに入る必要性が出てくると、入居一時金や月々の利用料で、かなりの金額が持っていかれます。老後資産に余裕があればまだいいですが、引退時に多額の退職金を手にしたことで、知識なしに言われるがままに「資産運用」に手を出して失敗してしまう人も多いのです。
「それでも年金が月30万円も入ってくる」と考えるかもしれませんが(ちなみに年金30万円と言っても、社会保険料などを引くと受取額はもう少し小さくなります)、すぐに入所できる有料老人ホームは高額なことも多く、高品質なプランを選択すると月額およそ20万円ほどもかかることがあります。
手元に残った額で、家事をしてくれた妻もおらず、エリートサラリーマンとして暮らしていたときのような生活を目指すと、破綻すらも見えてきます。
高齢になると、いろいろなことができなくなってくるものですが、意外と難しいのが「生活レベルを落とすこと」と「それまでのプライドをなくすこと」です。とくに元エリートサラリーマンはここが苦手なことが多く、危機的な状況に陥っていても、積み上げてきたものにすがってしまう傾向があります。
「現役世代の老後」はさらに険しい…?
上記のような年金受給世代の「プライドが捨てられず、破綻」ケースは、わかっていても避けることが難しく、なかなか厳しいものがありますが、現役世代が迎える年金生活はさらに険しいものがあります。
前述の通り、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、老齢年金で14万4,982円でした。標準報酬月額の平均は32万1,000円とありましたが、実際、どのようなレベルの人なのでしょうか。
厚生労働省の運営するホームページ『いっしょに検証!公的年金』のQ&Aでは、「おおよその年金額を知りたいときはどうしたらいいんだ?」という質問に対して、下記のようなケースで回答しています。
“厚生年金に40年間加入して、その期間の平均収入(月額換算した賞与含む)が月43.9万円の場合、受給額は月額約9.0万円の老齢厚生年金と、月額約6.5万円の老齢基礎年金を合計した約15.6万円(令和2年度)になります。”
40年間加入、その期間の平均収入が月43.9万円というのは、かなり順調に収入があるケースではないでしょうか。それでも月額約15万6,000円となります。前述の平均年金月額14万4,982円より、月1万円ほど高いケースです。元エリートサラリーマンの場合と違い、夫婦共働きで同程度の収入を得ていたとすると、ふたりで年金は月約30万円ほど給付されます。
「コツコツと地道に」投資できる世代が勝つ
このレベルが平均として、先ほどの配偶者どちらかが要介護になってしまったケースを想定するとどうでしょうか。特別養護老人ホームの空きが順番待ちとなってしまっている場合、民間の有料老人ホームに入所させようとしても、高額な入居一時金がかかります。
月にかかる費用負担も大きく、元エリートサラリーマンのように切り崩せる資産がなければ、打つ手がなくなる可能性すらあります。
「誰もがそうなるわけではあるまい」「年金というのはそのための“保険制度”」という意見もありますが、超高齢化社会、老々介護や病病介護の問題はすでに顕在化しています。
この先、2050年には1人の高齢者を現役世代1.2人が支えるようになるとも言われており、「危機的状況」の人は増加していくでしょう。社会として崩壊してしまう飽和地点に達する前に、現役世代は資産形成の知識を身につけ実践していく必要があるのです。
「勝ち逃げ」に見えた元エリートサラリーマンが、多額の退職金でいきなり資産運用に失敗するケースは多くありますが、現役世代から地道に小さな失敗を重ねながら資産形成に成功、これもよくあるパターンです。
「サラリーマン時代の賃金は決して高くなかったが、投資などの資産運用のおかげで老後も楽しく暮らせている」という声も聞かれます。まずは厳しい状況を直視して、将来の「勝ち」をつかみましょう。
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