相変わらず投票率が低かった第50回衆議院選挙…米大統領選に学ぶ、テレビ討論会で使われている「選挙が盛り上がる」ための一枚のカードとは?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月31日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
10月27日(日)に投開票された第50回衆議院選挙は裏金事件の影響を受けた自民党が大敗し、2009年以来の自公過半数割れという展開に。投票率は53.85%と戦後で3番目に低い数字でした。国外では11月5日にアメリカ大統領選を控えていますが、「ソフトバンク」孫正義氏の元右腕で、英語コーチング・スクールを営む三木雄信氏によると、大統領選のテレビ討論会では“あるカード”を片手に国民が盛り上がるそうです。日本国民の政治参加にも参考になりそうな仕掛けについて解説します。
衆議院選挙の結果は10月9日に決まった!?
10月27日(日)に投開票された第50回衆議院選挙では、自民党と公明党が合わせて215議席にとどまり、過半数を割りました。一方で、立憲民主党が148議席を獲得したことに加えて、国民民主党は28議席を獲得し大躍進しました。
この結果、与党は少数与党となり、連立再編や政権交代の可能性さえある政局となっています。
私が、今回の選挙では注目していたのは、10月9日(水)に行われた自民党の石破茂首相と野党4党の党首間で行われた党首討論でした。石破首相の就任が10月1日(火)で、衆議議院選挙の公示の10月15日でしたから、大変慌ただしいスケジュールの中で行われた討論会だったと思います。
この討論会は、「政治とカネ」が最大のテーマとなっていたことは言うまでもなくありません。それに加えて石破首相の自民党総裁選での主張と首相になってからの発言や党内での対応が「変節」しているというものでした。
私は、この討論会での流れがその後の衆議院議員選挙の趨勢(すうせい)を決定づけ、今回の与党過半数割れという結果的に繋がったと思います。
候補者討論会が当選のカギとなるアメリカ大統領選
2024年のアメリカ大統領選挙は11月5日(火)に投票が行われる予定になっています。共和党のドナルド・トランプ前大統領と民主党のカマラ・ハリス副大統領の対決となっていますが、現時点での世論調査では、激戦州で接戦が続いています。選挙の行方は予測が難しい状況です。
そうした中で大きなターニングポイントになったのが、2024年11月の米国大統領選挙に向けて、2024年9月10日(火)にペンシルベニア州フィラデルフィアでトランプ前大統領とハリス副大統領が直接対決した討論会です。テレビとオンラインで生中継されました。
調査会社ニールセンよると、このテレビ討論会はオンラインを除くテレビ視聴者数のみで6,710万人となり大変な盛り上がりとなりました。この討論会について、討論会後のCNNの世論調査では、63%がハリス副大統領が優勢、37%がトランプ前大統領が優勢と回答した報道され、ハリス副大統領がトランプ前大統領と十分渡り合える候補であることが印象づけられることになりました。
そもそもハリス副大統領が大統領候補になったのはこの討論会より前に行われたバイデン大統領とトランプ前大統領のテレビ討論会で、あまりにバイデン大統領が冴えなかったことがありました。結果、ハリス副大統領に民主党の候補が変わったのでした。このように、アメリカ大統領選では候補者のテレビ討論会が非常に重要なのです。
アメリカでのテレビ討論会の楽しみ方
さて、このようなテレビ討論会の楽しみ方としてアメリカで広く行われている方法として「プレジデンシャル・ディベート・ビンゴ」というものがあります。
「プレジデンシャル・ディベート・ビンゴ」は、いわゆるビンゴゲームなのですが、そのビンゴカードには、討論会でよく使われる「銃規制」「薬価」「民主主義」などの単語が書かれています。
そしてゲーム参加者はテレビで放映される討論会を見ながら、候補者がこれらのフレーズを言ったり、特定の行動を取ったりするたびに、そのマスをチェックします。縦、横、斜めのいずれかで一列揃ったらビンゴです。
アメリカでは、このビンゴカードはアメリカの主要な新聞社一つであるUSA Todayのサイトなどでもダウンロードできるようになっています。そして、このビンゴを使ったパーティーが様々なコミュニティで行われています。また、イベントとして有料で開催していることもあります。このように広く広まっている討論会の楽しみ方なのです。
日本でも、もっと党首討論を楽しもう
今回の衆議院選挙で私がやはり問題だと感じたとは、有権者の投票率の低さ、特に若者の投票率の低さでした。
有権者の全体の投票率は約53%と低調で、戦後3番目に低い水準となりました。また、世代別では、60代以上の投票率は72%超え、高い投票率となる一方で20代の投票率が特に低34%と低調でした。こうした傾向は、若年層の政治参加の意識の低さが依然として課題であることを示しています。
また、一部でネットでは白票を投じることが民意を示すことになるとの論調も見られました。しかし、白票は無効票の一部として公表されない場合が多く、例えば東京1区(新宿区)小選挙区での無効票率は約2.81%でした。
全国の数字を見ないと全国の傾向は言えないのですが、少なくとも東京一区においては、過去の選挙と比較しても大きな変動はなく、無効票が増えたというとはなかったようです。
このようにまだまだ日本人の政治参加意識の高まりは見られないと言えると思います。このような状況ですが、11月5日のアメリカ大統領選の後、日本でも11月11日に臨時国会が招集される見込みです。
石破首相が続投して再び組閣するのか? それとも他の党首の誰かが首相になるのかはわかりません。しかし、白熱した党首討論が行われることは間違いないでしょう。その時には、日本版「ディベート・ビンゴ」をやってみてはいかがでしょう。誰もが政治のキーワードを押さえながら党首討論を楽しみながら見る良いきっかけになると思います。
三木 雄信
元日本年金機構 理事
トライズ株式会社 代表取締役社長
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