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繰下げ受給で年金が増えているはずが…65歳で「月19万円」だった70歳男性、年金事務所で聞いた年金額に唖然「えっ、難しくて意味がわかりません!」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月1日 8時15分

繰下げ受給で年金が増えているはずが…65歳で「月19万円」だった70歳男性、年金事務所で聞いた年金額に唖然「えっ、難しくて意味がわかりません!」

(※写真はイメージです/PIXTA)

複雑で難しいといわれる日本の公的年金。プロでもあるまいし、細かなルールを一つひとつ把握なんてできるわけがありません。しかし、その細かなルールを知らずにいると、とんでもない勘違いで唖然とするようなことも、しばしば発生するようです。

具体的な将来像、それに向けた具体的な経済的準備ありは「日本人の4割」

生命保険文化センター『「生活保障に関する調査 2022年度』で「自分や家族の将来をどのようにしたいか、そのための経済的準備をどうしたらよいか」と、具体的な生活設計の有無を調査したところ、「生活設計あり」は39.9%。男女別・年齢別にみていくと、男性全体では40.6%、女性全体では39.3%。男性では40代が最多で46.7%、女性では50代が最多で42.5%。具体的な将来像が描けていないのか、経済的な準備ができていないのか、それとも両方なのか、わかりませんが、半数以上が「生活設計なし」という状況です。

とはいえ、将来不安、とりわけ老後に対する不安から、資産形成に対する関心は高まる一方。多くの人が多かれ少なかれ準備を進めているのではないでしょうか。

清水一昭さん(仮名・70歳)。世の中、資産形成、資産形成と騒がしだしたころには、すでに会社を定年。継続雇用制度により、とりあえず定年後も働くことを選択していました。

――うちは家内はしっかりしているから大丈夫と、何も考えていませんでした

家庭を守ってくれるパートナーがいるサラリーマンは、みな同じ調子かもしれません。ただ唯一、清水さん自身が将来のことを考えて選択したのが、「年金の繰下げ受給」だったといいます。

――定年を過ぎたあたりから、いつから年金をもらうか、という話を仲間内でも結構するんですよ。そこで繰下げ受給のことを知って、もし65歳以降も働いていたら、給与で生活はできるだろうから、年金は後回しでいいかなという話になって。家内とも相談して、家内は65歳から、自分は仕事の状況に応じて成り行きで受け取るようにしよう、という話になりました

老齢年金は原則65歳からの受給ですが、60~64歳の希望尾するタイミングに繰り上げて受給(繰上げ受給)したり、66~75歳の希望するタイミングに繰り下げて受給(繰下げ受給)することができます。繰下げ受給では、1ヵ月受給開始を遅らせるごとに0.7%の増額。最大84%に増額となることから、受給額を最大化させたいと思っている人たちに選ばれているスタイルです。

年金が1.5倍に増えたと、意気揚々と年金事務所に向かったが

清水さんが勤める会社では、継続雇用で働けるのは最大75歳まで。そこまで働いて年金の受け取りを開始したら、年金は84%アップします。清水さんが65歳段階で受け取れる年金は、併給の老齢基礎年金も合わせて月19万円。そこから考えると、月34.96万円。手取りでも30万円弱はもらえる計算です。

――ここまで増えたら、何も心配はないな

ちょっとウキウキしながら、年金の受け取りを待機していたといいます。しかし人生は何が起こるかわかりません。清水さんが67歳のとき、奥さんが急逝。脳卒中で、病院に運ばれたときには手遅れだったといいます。

そんな不幸にも見舞われましたが、さすが、清水さんの奥さん。老後を見据えていただろう資産形成はバッチリで、いつ仕事を辞めても問題ないほどの預貯金額がありました。だからこそ清水さんも、安心して気が済むまで働けたといいいます。

――仕事以外、特に趣味らしい趣味もないから。体がしんどくなるまでは働きたいと思っているよ

一方、「どうせなら区切りよく、年金を1.5倍くらいにしたいな」とも思っていたそうです。清水さん、こうして71歳まで働き、現役を引退。繰下げ受給による増額率は50.4%。年金は28.57万円と、月10万円弱、増やすことができた……清水さん、ちょっとした達成感を覚えたといいます。

しかし、それはあまりにも想定外でした。清水さんが年金の手続きをしに年金事務所を訪れたとき、思いもしないことをいわれます。

――清水様。4年ほど前に奥様が亡くなられて、遺族年金の受給権が発生しているので、その時点で増加率は固定となっています

――んん? 言っていることが難しくて意味がわかりません

実は66歳に達した日以後の繰下げ待機期間中に、ほかの公的年金の受給権を得た場合、その時点で増額率が固定され、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えないというルールがあるのです。清水さんの場合、67歳のときに奥さんが亡くなり、遺族厚生年金の受給権を得ていました。遺族年金の手続きは5年以内とされていて、手続きをしていれば、もっと早くこのルールを知ることができたかもしれません。

――つまり、繰下げ受給は67歳で終わっている、ということですか?

――そうです、増額率は……20.3%で固定となり、受取額は月22.8万円になります。

――なんと、なんて少ないんだ……

想定より月6万円ほど受取額が少ないという事実を、すぐには受け入れられない清水さん。ただ5年弱も、年金の受け取りを待てば待つほど受取額が増えると思って働いてきた自分が、また天にいる奥さんにも笑っているんだろうなと思うと、滑稽でたまらなくなってきたといいます。

清水さんの場合は、十分な預貯金があったからよかったものの、通常であれば同様の勘違いは勘弁しておきたいところ。一見、年金が増えてお得に見える「年金の繰下げ受給」。細かな注釈はいろいろとあるので、一つひとつきちんと把握しておきたいものです。

[参考資料]

生命保険文化センター『「生活保障に関する調査 2022年度』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』

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