1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

借地権評価4,000万円が705万円に!? 叔父からの遺産をすべて相続した70歳男性…通帳を管理して発覚した「まさかの事実」【相続の専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月3日 10時15分

借地権評価4,000万円が705万円に!? 叔父からの遺産をすべて相続した70歳男性…通帳を管理して発覚した「まさかの事実」【相続の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

叔父の身の周りの世話をずっとしてきた憲一さん。(70代男性)叔父のきょうだいも皆亡くなり、遺言書には「すべての財産を憲一に相続させる」と記載されました。しかし、作成からほどなくして叔父の地代滞納が発覚し、さらには買い手が見つからない事態に…。本記事では、憲一さんが取るべき対応方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

叔母から相続した自宅は借地権

70歳の憲一さんは、ずっと独身だった叔父(母親の弟)と自宅が近く、母親からも頼まれていたことから、妻と一緒に叔父の身の回りの世話などをずっとしてきました。母親のきょうだいは4人で、長男、長女、次女(憲一さんの母親)、次男(叔父)という構成。きょうだいのなかでも特に母親と叔父は仲がよかったといいます。

しかし母親はすでに亡くなってしまい、長男、長女も亡くなり、最後の叔父が昨年、亡くなったのでした。

いちばん身近な立場で相続を引き受ける

憲一さんには姉もいますが、伯父の一番近くに住んでいるのが憲一さんということで、母親からも叔父の面倒を看るようにと言われてきました。叔父は独身で、配偶者や子どももいないため、憲一さん夫婦が子ども代わりに定期的に叔父のもとへ行き、身の回りのことなどサポートをしてきました。

叔父の相続人はきょうだいですが、すでに全員亡くなっているため、代襲相続人は、長男の子1人、長女の子2人、次女の子(憲一さんと姉)2人の計5人となります。

長男の子、長女の子は離れたところに住んでいるため、ほとんど行き来はありません。親族の法事で会う程度で、叔父の家に来たこともないほどです。

憲一さんの姉は、結婚前は母親と一緒に叔父のところへは行き来をしてきましたが、結婚後はほとんど行き来ができず、結果的には叔父の面倒を看てきたのは憲一さん夫婦ということです。

財産が変わっても公正証書遺言の作り直しは不要

叔父は自分が亡くなった後は憲一さんに財産を相続させたいということで、公正証書遺言を作成されています。夢相続で叔父からの意思を確認したあと、証人となり、公正証書遺言を作成しました。その後、叔父には現金が多く残っていましたので、区分マンションを購入して賃貸するという節税対策にも取り組んでもらいました。

公正証書遺言の作成後ではありましたが、遺言書は「すべての財産を憲一に相続させる」という記載をしていましたので、あらたに作り直す必要はありませんでした。

叔母から相続した自宅は借地権

叔父が亡くなったのは遺言書を作成してから10年後。享年93歳でした。叔父は親から相続した自宅にずっと住んでいましたが、土地は借地でした。親の代から借りている土地ですので、相続した叔父がずっと住み続けてきたといいます。

地代は叔父が相続した当時は地主へ持参していましたが、地主も相続になり、振り込みに変わりました。地代は月45,000円です。

地代の滞納

叔父は公正証書遺言の作成時は意思確認も問題なくできていましたが、それからほどなく、地代の滞納が発覚。それがわかったのは、自宅の1人暮らしが大変になったため、叔父が老人ホームに入り、憲一さん夫婦で通帳の管理をすることになったからです。

憲一さんあが、地主のところへ叔父が老人ホームへ入ったこと、地代の振り込みは自分たちが代わりにすることなどを伝えに行った際に「叔父が地代を2年ほど滞納しているので、借地権はもうない、底地を買い取りますか?」と言われたのです。

驚いた憲一さんは早速その足で叔父にも確認し、いままでの通帳なども調べました。すると、確かに支払った形跡がありません。弁護士にも相談して、とりあえず地代を供託するよう指示を受け、滞納分から計算し、地代を供託したといいます。

相続後、借地権をどうする?

そのような経緯で、憲一さんから「叔父が亡くなったので、相続手続きをお願いたい」と委託を受けました。公正証書遺言があるので、叔父の財産はすべて憲一さんが相続します。

財産を引き受けるのは1人ですが、法定相続人は5人ですので、相続税の基礎控除は6,000万円となります。

不動産は賃貸している区分マンションと自宅の借地権。預貯金も合わせて7,500万円。大部分が自宅の借地権で、4,000万円という評価です。相続税は150万円という試算になりました。憲一さんには自分の自宅があり、叔父の家に住むことはないため、借地権を売却したいと依頼もされました。

借地権が売れない、地主の許可が得られない

叔父の住む自宅の土地は敷地延長となる旗竿地で80坪あります。けれども、侵入道路部分の幅員が1.5mしかありません。隣接する土地をあと50cm買うか、借りるかしないと、建て直しができないのです。

こうした現状があり、建売業者は二の足を踏み、買いたいと意思表示があったとしても、次は地主の承諾が必要になります。

結果、だれも購入する希望者がないという借地権になっています。地主に借地権の購入を打診すると、以前の地代の未納と現在の空き家を理由として、地代の供託金分程度で買い取るとのこと。供託金は705万円です。

4,000万円の借地権が705万円?

憲一さんと地主とは確執があり、地代は長年、法務局へ供託しています。借地権の購入希望者が現れると交渉の余地があるのかもしれませんが、買い手が見つからず。最後の方法として地主に買い取ってもらうよう伝えました。

窓口の地主側からの回答は、買取金額は供託金705万円。建物はそのままでよいが、建物の荷物は撤去し、庭の物置などもすべてきれいにすることが条件だというのです。

相続税申告の準備のため、業務提携先の税理士に評価をしてもらっていましたので、4,000万円の借地権が705万円の価値しかないということです。

これはあまりに理不尽だと業務提携先の弁護士にも相談してみました。家庭裁判所に借地非訟の申立てをして適切な価格を出してもらうことができないか? と考えたのです。

借地権の地主への売却について弁護士からの回答

顧問弁護士からの回答は下記のとおりです。

「地主に買い取るよう請求する権利はございません。そのため、借地権について買受人が現れない場合に、借地権を手放し地代の負担から解放される方法としては地主側が提示した条件に応じざるを得ないと思われます。結局、借地権の相続評価価格も買受人がいなければ絵に描いた餅ですので、4,000万円という価格を基本において地主と交渉をすることは難しいと考えます。

他方で、何とか借地権の買受人が見つけられた場合は、地主がその譲渡を認めない場合には、第三者への譲渡について地主の承諾に代わる許可を求めて裁判所に対して申立てをすることができます。その場合には裁判所に適正な価格を判断してもらうことが可能です。

裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える場合は、地主に対して名義書換手数料として借地権価格の10%程度を支払うよう要求されることが多いです。

また、同申立てに対して、地主が優先譲渡の申立てをしてきた場合(地主に優先して賃借権を譲渡するよう請求してきた場合・介入権の行使)は、地主が借地人に対して支払う相当対価を判断することになります。

その場合、建物譲渡代金と土地借地権の譲渡代金から名義書換手数料を差し引いた価格(借地権価格の約10%)が相当価格とされることが多いです。

もっとも、借地権の価格が賃貸借契約当初と比較して上昇している場合は公平上地主に分配される部分を清算して借地権価格が決められることになります(したがって、第三者に譲渡される価格よりも低くされることが多いです)。

以上のとおり、借地権の買受人が見つけられない場合は、地主に対して優位に立てないので、地主側の要求に応じざるを得ないと思われます。

せめてもの相続税節税。時価申告をすれば相続税はかからない!

憲一さんの叔父の借地権はいくつかの不利な要因が重なり、4,000万円の評価ではなく705万円が時価ということで、相続税の申告を担当する税理士と相談し、時価申告することにしました。せめてもの節税になるからです。

結果、相続財産は4,205万円となり、基礎控除の範囲内。相続税は0ということになりました。

憲一さんの場合は一時期地代を滞納したことで借地権が消滅したと指摘され、また、地形により、買い手が見つからないということが重なって理不尽な結果となりました。借地は自分の決断だけでは進められないため、できれば解消しておく、買い取っておくなど、早めの決断が必要だと言えます。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください