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最期まで自宅で暮らしたい…年金140万円「90歳父の願い」はわかっていたが、年収250万円の64歳娘は限界。やむなく「特養」を勧めた後悔【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 10時45分

最期まで自宅で暮らしたい…年金140万円「90歳父の願い」はわかっていたが、年収250万円の64歳娘は限界。やむなく「特養」を勧めた後悔【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

老老介護や介護離職といった事態を避けるためにも、老人ホームは有効な選択肢のひとつでしょう。一方で、老人ホームへの入居をめぐり、本人だけでなく家族が頭を悩ませるケースもあって……。本記事ではAさんの事例とともに、家族介護のあり方と老人ホームの選び方について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。

日本の「老老介護」の現状

日本の少子高齢化が進む中、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」は年々増加しています。厚生労働省の「令和6年度版厚生労働白書」によると、2022年には介護者と要介護者の約8割が60歳以上同士、約4割が70歳以上同士であることが報告されており、高齢者同士が支え合う現状が浮き彫りになっています。

また、家族が介護のために仕事を辞める「介護離職」も問題であり、働き盛りの世代が家計を支える役割を放棄せざるを得ない状況となっています。総務省の「令和4年就業構造基本調査」によれば、年間約10万人が介護を理由に離職しており、経済的な負担や将来の生活設計に影響を与えています。

このような背景から、多くの家族が「自宅介護」ではなく、老人ホームのような専門的な施設での介護を検討するようになっています。

老人ホームを利用するメリットとして、

・24時間の介護体制が整っている

・介護の専門職が医療やリハビリのサポートを提供してくれる

・家族の身体的・精神的負担が軽減される

上記の点が挙げられます。さらに、一定の生活リズムや医療管理が確保されるため、認知症の進行抑制や生活の質の向上が期待されます。

しかし、老人ホームを選ぶ際には費用面や居住環境、家族の関わり方など、さまざまな要素を考慮する必要があります。特に、特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームなど、施設ごとに異なるサービスや費用が存在するため、家族の考えに応じて選択するかが必要となります。

90歳父を介護する娘の葛藤

〈事例〉

・父・Aさん(90歳):年金140万円で生活している独居の高齢者。体は動くが、認知症の症状が進行している。

・娘・Bさん(64歳):年収250万円の契約社員。自身も年金生活が近づきつつあり、限られた収入で父の介護費用を捻出している。

Bさんは、実家で一人暮らしをしている父Aさんの介護を一人で担っていました。Bさん自身は64歳で退職も間近、将来の経済的不安も抱えているなか、父の世話が次第に負担となり、体力的・精神的な限界を感じていました。

父Aさんも認知症の影響で日常生活が難しくなり、訪問介護などの支援を利用しても限界が見え始めていたため、Bさんは老人ホームの利用を検討するようになります。Bさんは老人ホームの候補を調べ、いくつかの施設を見学しました。

介護付き有料老人ホームでは、医療ケアが充実しており、父のような認知症の進行がある場合でも安心だと感じましたが、年金と自分の収入から賄うのが難しいと感じ断念しました。そのため、親族と相談して特別養護老人ホームで支援を受けることを決め、最終的に父を入居させることを決断しました。

ある日、父Aさんへ特別養護老人ホームへの入居を提案した際、父は「自宅で最後まで暮らしたい」と強く希望しました。しかし、Bさんには自身の体調や仕事があり、父の介護をしながらの日常生活は困難を極めていたのです。

「お父さん、私もこれ以上1人で頑張るのは難しいの」とBさんが父に語りかけると、Aさんはしばらく沈黙したのち、静かに答えました。「私も家にいたいが、皆に迷惑をかけてしまうなら、施設に入ることも考えないといけないかもしれないな」。この言葉にBさんは涙があふれましたが、父のためにも最善の環境を探そうと決意しました。

父を特養に入居させて数ヵ月…父の苦労

老人ホームに父Aさんを入居させてから数ヵ月が経過したある日、Bさんはふと自分が感じている違和感に気づきました。当初、介護の負担から解放されてホッとしたはずのBさんでしたが、最近はどこか後悔の念が強まっていることに気づいたのです。

というのも、入居当初から父Aさんは、新しい環境に適応するのに苦労していました。Bさんが面会に行くたび、Aさんは「やっぱり自分の家が一番だ」「この年齢で新しい人と関わるのは辛い」と、施設での生活に馴染めない様子を見せるようになりました。

さらに、Aさんの認知症の症状が少しずつ悪化し、ますます家族への依存が強くなっていることにBさんは心を痛めました。

Bさんは、親の介護を考える際、物理的なケアの負担だけでなく、本人の精神的な満足度や家族の心理的な影響も考慮するべきだったと痛感しました。父Aさんの場合、老人ホーム以外の在宅介護の補完策(デイサービスの活用や地域の見守りサービスなど)をしっかりと検討するべきだったと感じています。

家族の介護のあり方、老人ホームの選び方

 老人ホームの利用を決断する家族が増えるなかで、施設選びの際に「安易な選択」をしてしまうケースも少なくありません。その原因は金銭的な問題だったり、環境的な問題だったりとさまざまです。

しかし、施設選びは慎重に検討しなければ、後に家族や本人が困難な状況に直面することもあります。ここでは、家族の介護におけるポイントを解説します。

本人の気持ちを理解する

高齢者の介護において、老人ホームへの入所を検討する際、本人の意思と家族の意向をどのように調整するかは重要です。多くの高齢者は、住み慣れた自宅での生活を望んでいます。このような気持ちを尊重し、なぜ入所を拒否するのか、その背景や不安を丁寧に聞き取ることが大切です。

家族の状況を共有する

一方で、家族も介護の負担や生活状況に限界を感じている場合があります。在宅介護を無理に続けると、介護者が「介護うつ」を発症したり、生活費の負担が増加したりするリスクがあります。家族の現状や感じている負担を正直に伝え、ともに最適な解決策を見つける姿勢が求められます。

第三者の意見を活用する

話し合いが進まない場合、ケアマネージャーや地域包括支援センター、主治医などの第三者に相談することも有効です。専門家の意見やアドバイスを取り入れることで、客観的な視点から最適な介護方法を見つける手助けとなります。

老人ホームへの入所は、本人と家族双方の意向を尊重し、十分な話し合いを重ねることが重要です。無理に入所を勧めるのではなく、双方が納得できる形での介護方法を見つけることで、よりよい生活環境を築いていただけたらと思います。

参考

令和6年版厚生労働白書

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/23/backdata/01-01-01-14.html

令和4年就業構造基本調査

https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/pdf/kall.pdf

伊藤貴徳 伊藤FPオフィス 代表

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