すべて私の責任です…亡父が残した「まさかの遺言内容」に猛反発!絶縁の三兄弟、きっかけとなった「55歳長男の妻」涙の懺悔
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月6日 7時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
いつかは誰もが直面するだろう親の死。それに伴い、必ず相続が発生します。相続ではお金はもちろん、いろいろな感情が絡み合いトラブルに発展しがち。特に相続の場に「部外者」が登場すると、面倒くさいことになるようです。
3人の息子は介護施設と考えていたが…長男の嫁が反対
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』で親の主な介護者をみていくと「子」が45.7%、「配偶者」が39.8%、「子の配偶者」が10.9%でした。同居・別居でみていくと、同居の場合は「配偶者」が49.9%、「子」が32.3%。「子の配偶者」が11.8%、別居の場合は「子」が86.5%、「子の配偶者」が7.7%でした。
同居家族が介護をする場合、配偶者、つまり夫の介護を妻が、妻の介護が夫を担うケースが最多であるものの、その介護が終わったあと、残された妻または夫に介護が必要になった場合、子や子の配偶者が介護を担う……そんな画が見えてきます。
佐々木敬一さん(仮名・85歳)の場合、10年前に妻を亡くし、以来自宅(一軒家/持ち家)でひとり暮らしをしてきましたが、3年前にその自宅で転倒し大腿骨を骨折。3ヵ月の入院を余儀なくされました。入院を機に歩く力が衰え、介護が必要になるケースはよくあるもの。敬一さんも同じ。退院が迫っていましたが自力での歩行が困難となり、自宅での生活は難しい。また3人の息子たちは、みな現役で仕事をしているため、介護を担うのは難しい。退院後は介護施設に入ってもらうほうがいいのでは、と話し合っていたそうです。
そこで「もしみなさんがよいというなら、私がお義父さんの面倒をみます」と手を挙げたのが、長男の妻、聡子さん(仮名・55歳)でした。夫含め、息子たちは「そんな無理をすることはない」といったものの、敬一さんが以前から「最期まで自宅で暮らしたい」といっていたため、本心では願ったり叶ったり。また聡子さんも、自身の親の介護に対して心残りがあり、同じような思いを義父にはしてほしくない、という思いも強くありました。介護は大変であるものの、何もしないで介護施設を頼ることはしたくなかったといいます。
こうして、聡子さんが義父・敬一さんの介護を担うようになりました。敬一さんも義娘に頼りっきりでは申し訳ないという気持ちもあったのでしょう。聡子さんに頼りながらも、できることは自分でするというスタンスでいました。そのため、わずかではありますが筋力も回復。手すりや杖を使い、ひとつひとつの動作はゆっくりではあるものの、自活もできるようになっていったといいます。
自宅に戻っても、寝たきりの生活……そう思っていた敬一さん。充実した生活を取り戻せたいのも聡子さんのおかげ。そのような思いが強くあったのでしょう。
――聡子さん、本当にありがとう
ことあるごとに、口癖のようにいっていたといいます。退院後、自宅での生活は3年ほどではありましたが、敬一さん、願い通り、最期まで自宅で過ごすことができました。
父が残した遺言書に、2人の弟たちが大反論!
――最期は自宅で
父親の願いがきちんと叶ったこともあり、葬儀ではときに笑みがこぼれる、温かなものになったといいます。しかし、そんな雰囲気もそこまで。次男がふと、「遺言書を作っておいた。万一の際は、遺言に従い遺産分割をするように」という敬一さんの言葉を思い出しました。
そこで調べてみると、公証役場に遺言書が保管されていることが判明したといいます。遺言書を開封する日。3人の息子が目にした遺言の内容は、思いもしなかったことでした。
・自宅は売却し、その売却金は兄弟3人で等分する
・預貯金2,000万円はすべて聡子さんに相続する
ここで納得いかないのは、次男と三男。
――なぜ聡子さんに遺産が?
――兄貴と聡子さんが仕組んで書かせた遺言書なのではないか
――とても遺言の内容を認めるわけにはいかない
そんな弟たちの主張に対し、長男は憤りを露わにしたといいます。
――自分も遺言の内容には驚いた。でも父さんの面倒を全面的に担ったのは聡子だ。恩を感じた父さんの、当然の遺志ではないか
そういうものの、弟たちの間で、最初から兄と兄嫁が結託していたというストーリーは固まり、兄と2人の弟という対立構造に。
――すべて私の責任です。お義父さんの介護をみますと出しゃばったばかりに
遺言書の内容で兄弟喧嘩が勃発したことに責任を感じた聡子さんは涙ながらに懺悔。そして遺産の受け取りを拒否。実家の売却金と貯金を合わせて、遺産は3兄弟で三等分となりましたが、相続を機に、兄弟仲は最悪になったといいます。
遺言書をつくれば相続対策は万全!というわけではない
民法で相続人となることができると定められた相続人である法定相続人。今回の事例では、3兄弟だけが法定相続人でした。しかし被相続人の有効な遺言があった場合、その遺言に従って相続されるのが原則であり、そこに法定相続人以外の人物がいたとしても問題はありません。しかし遺言内容が、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない遺産の一定割合の留保分である遺留分が侵害されていれば、遺留分減殺請求」により、遺留分を侵害している範囲で遺言内容が修正できます。
仮に実家が3,500万円で売れたとすると、1,000万円の貯金と合わせ、3等分した1,500万円が法定相続分。その半分である750万円は遺留分として主張できるというわけです。
一方、法定相続人ではない長男の妻は、たとえ遺言書に遺産分割の話がなかったとしても、特別の寄与料を請求できたと考えられます。特別の寄与料は、被相続人の親族のうち相続人でない人が、被相続人を無償で療養看護するなどして、被相続人の財産の維持や増加について特別の寄与をした場合に寄与に応じて請求できる金銭のことをいいます。
ただ今回の事例では、遺留分の侵害や特別の寄与が問題の争点ではなく、法定相続人以外に遺産を継ぐこと自体に反対であること。遺言書の内容と異なる遺産分割は、遺言書に遺産を分割すると記された受遺者全員の同意があれば可能であり、今回は長女の妻・聡子さんが遺産の受け取りを拒否したため、遺言内容とは異なる遺産分割を行うことができました。
結局、遺言に記された遺志を叶えることはおろか、遺族の仲も険悪に……相続において、最悪の結末といってもいいでしょう。このことからも相続対策は遺言書を作成さえしたら御の字というわけではないことがわかります。法定相続人以外にも遺産を分割したり、法定相続分とは異なる分割となったりしたら、どうしても不公平感を覚える相続人は出てくるもの。遺言書でその事実を初めて知れば反発が起きて当然です。そのような遺言を残すのであれば、関係者には事前に遺言内容を知らせるとともに、なぜそのような相続を望むのか、しっかりと説明しておくことが肝心です。
[参考資料]
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