〈金利のある時代〉の資産運用…シニアが最大限のメリットを得る、具体的な選択肢とは【証券アナリスト資格を持つFPが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月6日 11時15分
(画像はイメージです/PIXTA)
ゼロ金利時代が終焉し、金利のある時代へと突入した日本。それに伴い、長きにわたって低迷していた賃金も上昇が見込まれていますが、シニアの場合、それについてはメリットを享受できません。では、シニア世代に適した資産を運用はどのようなものがあるのでしょうか。元銀行員で大学教授のキャリアを持ち、いまも教壇に立つFPが解説します。
いまのシニア世代が子どものころ、定期金利は5~6%だったが…
金利のない時代から金利のある時代への移行が始まりました。円安や資源高を契機にインフレが進み、デフレマインドが消え、シニア世代の方々は、インフレ対策として金利の知識が必要な時代となりつつあります。
シニア世代の方々は子どもの頃の高度経済成長時代、お年玉を貯める定期預金の金利が5~6%であったことを憶えているかもしれません。しかし、1960年代の名目GDP成長率は約16%で、実質では10%程度、賃金は10%程度で増えました(内閣府「国民経済計算」、厚生労働省 「毎月勤労統計調査」等より筆者試算)。これに比べて当時の定期預金の金利は、大変低いものでした。当時は定期預金の金利水準は低めに規制されており、いわゆる「人為的低金利政策」がとられていました。
通常、1年の短期金利はその国の経済成長率の水準と一致することで経済のバランスが取れます。したがって、金利のある時代への移行は、経済成長と賃金のベースアップが起こる時代への移行を意味します。
長期的には、物価の変動を含まない実質金利が「潜在成長率」に一致することで経済の均衡が保たれます。潜在成長率とは、国の経済がどれだけ成長できるかを示すものです。 過去20年(2023年度までの20年)の名目GDP成長率の平均値は0.66%であり、物価の変動を除いた実質GDP成長率は0.62%でした(筆者試算)。
この成長率が経済のバランスのとれたものであれば、短期金利も0.66%程度となり、賃金も毎年0.66%程度のベースアップとなったはずです。しかし、実際はさまざまな要因でそうはなりませんでした。
政府、インフレ率を0.9~2.0%と予想→では、短期金利は?
政府は、わが国の長期的な潜在成長率を「全要素生産性」と呼ばれる技術革新や効率化などによる生産性上昇率の水準に応じて、0.4~1.8%と推定しています(内閣府「中長期の経済財政に関する試算」2024年7月)。
短期金利は長期的には先述の潜在成長率とインフレ率の合計値となりますが、政府はインフレ率を0.9~2.0%と予想していますので、短期金利は1.3~3.8%となることが見込まれます。短期金利を潜在成長率とインフレ率の合計値と考えるのは、「フィッシャー方程式」と呼ばれる考え方に基づいており、日本でもおおむね成立することが確かめられています。
一方、名目DGP成長率は、0.7~3.2%と予想されており、その多くを占める個人消費の裏付けとなる賃金上昇率は1.0~3.3%の予想となっています。
次の図を見てください。この図は、名目GDP成長率、短期金利、名目賃金上昇率の関係を示しています。これを見ると、金利のある時代は賃金が上がる時代であることがわかります。
つまり、長期的には名目GDP成長率と短期金利と名目賃金上昇率は概ね同水準となるのであり、金利のある時代とは賃金上昇のある時代です。
これからは、現役世代は住宅ローンの借入金利においては金利上昇のデメリットがあります。しかし、表からわかる通り、賃金も上昇するので金利上昇の負担を軽くできるでしょう。
一方、シニア世代の方々は賃金上昇のメリットは受けないのですが、賃金の上昇を起こす要因となる「経済成長による金利の上昇」は、資産運用においてシニア世代の方々の大きなメリットとなります。
銀行の定期預金金利があまり上がらない場合は、3年間の固定金利型個人向け国債で運用することで、より高い金利を得ることができます。また、経済成長率が高まると内外の債券、株式に分散投資を行う資産運用の収益性も高まりますので、シニア世代の方々もこうした資産運用に取り組んで金利のある時代のメリットを得てはいかがでしょうか。
経済成長にはマイルドなインフレが伴いますので、その対策としても金融資産の一部をこうした運用に振り向けることをお勧めします。
藤波 大三郎 中央大学商学部 兼任講師
この記事に関連するニュース
-
植田総裁・名古屋講演のメッセージ~政府・日銀にとって御誂え向きの2024年7-9月期GDP~(愛宕伸康)
トウシル / 2024年11月20日 8時0分
-
もはや経済大国でない日本、資産形成も「国内債券・株式」のみの運用では限界…有効な分散投資を行う注意点【証券アナリスト資格を持つFPが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月13日 11時15分
-
長期金利の上昇局面、債券投資に食指を動かすシニアも多いが…シニアだからこその「留意点」と「選択肢」【証券アナリスト資格を持つFPが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月12日 11時15分
-
【10月開催】日銀の金融政策決定会合直前! 0.25%への利上げによる家計への影響は? 7月の会合内容を振り返り
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月29日 9時40分
-
IMFの経済見通し、米国の成長率は上振れも、関税引き上げなどに伴う下方リスクを警戒(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年10月23日 11時30分
ランキング
-
1【冬の乾燥対策に】ドラッグストアで手軽に買える! ハンドクリーム5選
マイナビニュース / 2024年11月21日 17時0分
-
2書店に行くとなぜか急にトイレに行きたくなる「青木まりこ現象」とは?
マイナビニュース / 2024年11月21日 16時2分
-
3【風呂キャンセル界隈】医師「心身が疲れた時こそ入浴を」 - 安全で健康的な方法とは
マイナビニュース / 2024年11月21日 11時0分
-
4とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
5生産性を上げ、まわりと差がつく5つの栄養素 ライバルを出し抜くために必要なのは「食事」
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 10時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください