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トランプ氏がアメリカ大統領に!さらなる遺産税の大減税があるのか?トランプ氏の演説をかたずを呑んで待つアメリカ富裕層たち

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月9日 11時15分

トランプ氏がアメリカ大統領に!さらなる遺産税の大減税があるのか?トランプ氏の演説をかたずを呑んで待つアメリカ富裕層たち

(画像はイメージです/PIXTA)

アメリカ大統領選(11月5日投開票)は11月6日、共和党のドナルド・トランプ前大統領の当選が確実になりました。トランプ氏の大統領就任によって選挙後に注目を集めているのが、遺産税の行方です。議会の構成次第では遺産税が大幅に増税になる可能性があるからです。大統領決定を機にアメリカの税金について触れてみたいと思います。

選挙前にトランプ氏が語った海外居住者の「2重課税」問題

アメリカは日本と違って予算も税制も具体的に国民に提示する必要があるのですが、民主党のハリス副大統領と共和党のトランプ前大統領はうまく説明できたのかどうかです。

日本のように「老後安心した生活を送れる社会に」「若者が子育てを無理なくできる国に」という程度の説明では、アメリカの大統領にはなれません。

トランプ氏はアメリカの主要紙に大統領選挙中に海外居住のアメリカ人に対して2重課税を避け、税金を引き下げるといった内容の発言をしています。トランプ氏はこれまで、税金の引き下げについては「年金、チップ、残業代を非課税にする」と述べてきていたのですが、具体的な言及を避けていました。

大谷選手はアメリカで所得税申告すればいいが…

アメリカでは国外居住者への課税は日本とは異なります。アメリカ市民権者およびグリーンカードホルダー(アメリカで自由に住む・学ぶ・働くことができる資格の証明)は、国外に居住していても全世界の所得をアメリカのIRS(内国歳入庁)に申告する必要があります。

日本のように、居住者、非居住者で課税判断する税法とは大きく違います。たとえばロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手はアメリカで所得税の申告をし、アメリカで税金を払えば済めばいいわけですが、アメリカは自国民に対してそうはいきません。

そもそもアメリカの税法は南北戦争の費用を工面するために制定された歴史があります。1860年代の古い所得税法に基づくものなのです。

海外に住むアメリカ人は約440万人いるとされ、そのうち投票権を持つ18歳以上は約280万人と推定されています。「海外居住のアメリカ人に対して2重課税を避け、税金を引き下げる」というトランプ氏の発言は彼らの票を取り込もうと考えたのではないかと推察されます。

海外居住のアメリカ人に対しては12万6,500ドル(1,800万円)までの収入に対し所得控除が認められています。日本に住んでいるアメリカ人であれば、外国税額控除もありますので、アメリカでの税率が日本よりも高ければアメリカのみでの税金を納めることになります。

現実としては、税率が日本のほうが高いので、そうはいきません。そうであれば2重課税にはならないので、今のところ、彼の意図はよくわかりません。

ですが国によって税率が異なりますので、かなりの高額所得者および年金等の収入のある納税者には、2重課税になることも考えられます。

アメリカから脱出者激増の可能性も

アメリカ人の海外居住者にとって問題なのは、2重課税よりもむしろ、海外金融口座があたり、海外の会社で役員をしていたり、一定以上の会社持ち分があったりすると、IRSに対して開示フォームを提出する義務があり、これが厄介です。

一方で提出しなければ、そのペナルティーが大きく、このコンプライアンスを確保するためにコストがかかります。

仮にトランプ氏のアイデアが合法になるとすれば、今度は個人所得税が極めて低いモナコのような無税国もしくは低税率の国々へ出ていくアメリカ人が激増すると思われます。

アメリカでは、最近ではまた相続税専門の弁護士は大変忙しいようです。現在、アメリカの相続税基礎控除額は1,361万ドル(20億円、日本の基礎控除額は約4,800万円)。インフレ率の上昇によって基礎控除額は2025年には1,399万ドル(21億円)となる見込みです。

だが、現在の基礎控除額は2025年までの時限立法となっていますので、議会に動きがなければ、2026年には基礎控除額は2017年の水準である550万ドル(8億円)に戻ることになります。そうなれば大きな減額となり、大変な騒ぎとなる可能性が高いでしょう。

そこで多くの富裕層は撤回不可能なトラスト(信託)を作成し、そこに資産を移転しています。この信託(Irrevocable Trus)は日本には存在しません。

このようなことはオバマ大統領時代にもありました。ブッシュ大統領時代の相続税減税政策が2012年に廃止になり、相続税控除額も500万ドルから100万ドルに減額されるのを恐れ、トラストの作成が盛んに行われました。しかし、そのまま500万ドルの相続税基礎控除額がアメリカ議会の承認を経て継続されました。

この過去を鑑み、2024年は年間贈与税基礎控除18,000ドル(270万円)まで、贈与は1,361万ドル(20億円)の相続税・贈与税基礎控除枠にはカウントせずに受贈者に贈与できるので、とりあえずこの方法で昔のようにマメに毎年自分たちの資産を少しずつ子や孫に贈与する人も出てきているようです。

来年1月にはトランプ政権になります。富裕層たちはトランプ大統領がそのときの演説でどのような発言をするのかをかたずを呑んで待っているといっても大げさではありません。

税制への議論が乏しい日本

日本はどうでしょうか。悲しいかな相続税はおろか、所得税の議論もないといっていいでしょう。党首討論でもせいぜい消費税率をどうするかを表面的に語るだけで、税制の議論は国会の予算委員会でほとんど行われない印象です。

「政治とカネ」の問題が解決できれば日本は豊かになるのでしょうか。税制に無関心の、これでも国会議員が日本ではつとまるのが不思議で仕方ありません。先進国首脳たちにとっては不思議の一つともいわれているようです。

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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