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息子が浮かばれません…孤独死した44歳息子の葬儀代95万円まで出し渋る元妻の仕打ちに〈69歳母〉唖然。さらに発覚した〈まさかの事態〉に絶望したワケ【行政書士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 11時15分

息子が浮かばれません…孤独死した44歳息子の葬儀代95万円まで出し渋る元妻の仕打ちに〈69歳母〉唖然。さらに発覚した〈まさかの事態〉に絶望したワケ【行政書士の助言】

※写真はイメージです/PIXTA

近年社会問題として取り上げられている「孤独死」ですが、離婚歴がある人物が亡くなった際に、相続人以外の人物が喪主を務める場合があります。本記事では、その場合に起こり得る葬儀等の費用をめぐったトラブルについて、行政書士の露木幸彦氏が桂さんの事例を通して解説します。

一体、なぜ? 突然亡くなった44歳の息子

突然ですが、質問です。1年のうち、最も亡くなる人が多いのは何月だと思いますか? 正解は12月(約15万人。令和4年、厚生労働省の人口動態統計)です。逆に最も少ないのは6月(約11万人)。朝晩が冷え始める11月(約13万人)から増加していき、1月(約14万人)、2月(約13万人)は高止まりします。

「孤独死」が社会問題として取り上げられて久しいですが、警察庁によると今年1~3月に「自宅で」「一人」で亡くなった人は、3ヵ月で約2万人。警察が取り扱ったケースのうち、孤独死が36%を占めています。次に孤独死した人の年齢ですが、79%は65歳以上のお年寄りです。残りの21%はどのような人なのでしょうか?自分で自分の食事、洗濯、掃除などができない「セルフネグレクト」という言葉が最近、注目を集めています。

今回の相談者・桂美紀子さん(69歳。仮名)の一人息子・有起哉さん(享年44歳)もその一人です。有起哉さんは当時、独り暮らし。美紀子さんが訪ねたところ、すでに息をしておらず、病院に搬送しました。そこで医師が発行した死体検案書には「自殺」と書かれていました。警察庁によると自殺者の数は令和2年から令和5年にかけて約2万1千人で高止まりしています。有起哉さんの身に何があったのでしょうか?

なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また離婚の経緯や養育費の条件、遺体発見の経緯や遺産の金額などは各々のケースで異なるので、あくまで参考程度に考えてください。

結婚5年目に離婚、家の名義はそのまま家を出た有起哉さん

<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は相談時)>

母:桂美紀子(69歳)→パートタイマー(年収90万円)☆今回の相談者

息子:桂有起哉(享年44歳)→会社員(年収800万円)

息子の元妻:天野愛海(42歳)

息子の長男:天野栄斗(12歳)

息子の次男:天野陸斗(10歳)

<有起哉さんの遺産の詳細>

1.資産(計4,912万円)

死亡退職金798万円

預貯金48万円

生命保険1,500万円(死亡保障、受取人は元妻)

不動産2,480万円

自動車86万円

2.負債(2,383万円)

住宅ローン2,270万円(ただし団体信用生命保険と相殺)

自動車ローン32万円

カードローン81万円

有起哉さんは新卒から22年間、同じ会社で汗を流しましたが、2ヵ月前から休職中。直属の上司は「一人になってから精神的にまいっている様子でした。まさかこんなことになるなんて…僕らももう少し、何かしてあげられれば」と後悔の念を口にします。

筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして離婚の手続をお手伝いしています。有起哉さんは妻、そして二人の息子とマイホームに暮らしていたのですが、結婚5年目に離婚。有起哉さんは妻子を残し、家を出たのです。家の所有権、住宅ローンの債務者は有起哉さんのまま。自宅は、有起哉さんの母方の祖父が頭金300万円を出した家でした。その自宅を妻に明け渡し、有起哉さんは家を出ました。 子の養育費代わりにローンを毎月9万円、返済すると約束しました。筆者はその約束を公正証書に残す手続をお手伝いしたのですが、離婚してから7年間。有起哉さんは実家の敷居をまたがなかったそう。

美紀子さんが「最近、どう?」「話を聞いてあげるからご飯でもどう?」「今度のお正月は返ってくるの?」とLINEで何度、問いかけても、有起哉さんは「了解!」「分かったから!」「はいはい!」というスタンプを返すだけ。美紀子さんが有起哉さんの死後に遺品整理のために訪れた部屋は片付けはおろか掃除もろくにされておらず、“汚部屋”と呼ばれるような状態でした。有起哉さんも冒頭でご紹介したようなセルフネグレクトの状態だったと想像できます。

自腹を切って息子の葬儀をあげた母

美紀子さんが筆者の事務所に電話をくれたのは有起哉さんの四十九日法要が終わったタイミングでした。「元嫁があまりにも無責任なので困っています。突然、息子を亡くして心を痛めているのに、そんなことはお構いなしという感じで……」と声を振り絞りますが、何があったのでしょうか?

美紀子さんは有起哉さんの逝去が明らかになったとき、「お父さんの死を伝えないといけない」と思い、まずは元妻にLINEを送ったそう。「お久しぶりです。有起哉の母です。突然のことですが、有起哉が亡くなりました。栄斗君や陸斗君(どちらも息子の名前)には最後に顔を見せてあげたい。お葬式をそちらであげるなら、お任せするつもり」と。

しかし、既読になるものの、元妻からの返事はなし。音声電話やLINE電話をかけても、電話をとる気配はなく、留守番電話にも切り替わりません。

さすがに3日目には葬儀場の担当者から「ドライアイスにも限りがある。早く決めてほしい」と急かされ、美紀子さんは元妻の返事を待たず、通夜や葬儀をあげ、火葬を行い、とりあえず、遺骨を預かることに。そしてアパートの部屋も引き払い、スマートフォンや財布、銀行の通帳や保険の証券以外の遺品を処分。筆者が「諸費用(95万円)はどうしたんですか?」と尋ねると美紀子さんは「自腹を切りました」と答えます。

2019年から葬儀等の費用を故人の口座から支払うため、いったん凍結を解除し、出金できるように金融機関に申し入れる制度が始まりました。しかし、この制度を利用できるのは相続人のみ。今回の場合、相続人は二人の息子だけ(民法887条)。母親(美紀子さん)は相続人ではないので、金融機関へ仮払いを申請できなかったのです。

<葬儀等にかかった費用の一覧(95万円)>

葬儀代(香典で足りない分)60万円

遺体検案費用6万円

埋葬(前払)2万円

火葬5万円

家財等の処分15万円

家賃の滞納分7万円

元妻からの反応があったのは四十九日のタイミングでした。「財産関係をすべて引き渡してください」と。有起哉さんと元妻は夫婦だった二人です。美紀子さんは「『お悔み申し上げます』の一言くらいあってもいいのに…」と嘆きます。長男、次男はまだ二人とも未成年です。この場合、親権者である元妻が子どもに代わって交渉できます(民法824条)。

とはいえ美紀子さんは元妻からの要求を拒むつもりはありませんでした。しかし、条件があります。それは遺産のなかから葬儀等の費用(95万円)を繰り戻すこと。美紀子さんがすべてを取り仕切ったのは元妻がずっと無視し続けたから。「代わりにやってくださり、申し訳ありません」と思っていれば、その条件をのむでしょう。しかし、しかし、元妻は「勝手にやったことですよね? 頼んだつもりはありませんから!」と言い放ったのです。

葬儀費用を負担するのは喪主、相続人のどちらなのか。これは裁判所の見解が分かれますが、筆者は美紀子さんに「相続人が負担すべき」と判断した判例(津地裁・平成14年7月26日判決、東京地裁・平成18年10月19日判決)だけ伝えました。

美紀子さんはそのことを踏まえた上で「何もせずに放置して(有起哉さんを)腐らせるわけにいかないでしょ。私がやらざるを得なかったのよ。私の気持ちも考えてください」と切り返したのです。

子供たちに会えないままだった息子

当時、元妻は有起哉さんの遺産がいくらなのか。正確な金額を知らなかったでしょう。それでも(死亡)退職金、生命保険、そして自宅を合わせれば、かなりの金額になることは予想できたはずです。実際のところ、資産から負債を差し引いた金額は2,529万円。

しかも、有起哉さんは住宅ローンを組んだ銀行で団体信用生命保険(=団信)に加入しています。団信とは債務者(有起哉さん)が途中で亡くなった場合、その時点のローン残債と同額の保険金が支給されるものです。そして保険金は優先的にローン返済(逝去時は2,270万円)に充てられます。

つまり、自宅はローンなしの状態で二人の子どもが相続するのです。そう考えると住宅ローンは負債から削除することができ、遺産の価値は4,799万円まで膨れ上がります。

一方、美紀子さんの請求額はわずか95万円です。筆者は「95万円を渋って、4,799万円の受取が遅れるのでは本末転倒ですよ」と励ましました。最終的には美紀子さんの必死の訴えが通り、元妻は遺産相続が終わったタイミングで95万円を返すことを約束したのです。

美紀子さんはその約束を信用し、元妻に通帳や証書、権利証などを引き渡したのです。美紀子さんが元妻に会ったのは実に9年ぶりでした。そこで元妻は「彼(有起哉さん)のことなんて覚えていませんよ。一度も会わせていないんだから」と捨て台詞を吐いたのです。有起哉さんが「会わせてほしい」と頼んでも元妻は無視し続けたことが明らかになりました。つまり、有起哉さんは何の報いもなく、毎月9万円を負担し続けたのです。

有起哉さんのように離婚歴がある男性が亡くなった場合、相続人ではない人間が喪主をつとめることがあります。その場合、葬儀等の費用をめぐってトラブルが起こる可能性があります。そのことは前もって知っておいたほうが良いでしょう。

露木 幸彦 露木行政書士事務所 行政書士・ファイナンシャルプランナー

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