年金「夫婦で28万円」の70代夫婦、激愛する孫に「年100万円・20年分」の贈与も、税務署「これは贈与になりません」と撃沈するワケ「何かの間違いでは?」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月7日 9時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
年金世代のなかには「子どものために」「孫のために」と身を削ってコツコツと貯金をしている人も多いのでは。きっと税金がかからないように、と細心の注意を払っているはず。しかし、その苦労も無駄に終わることも珍しくないようです。
倹約家の老夫婦、孫のために毎年100万円をコツコツ貯金
結婚50年だという、佐藤実さん(仮名・78歳)和子さん(仮名・76歳)。年金は実さんが月20万円、和子さんが月8万円ほど。手取りにすると夫婦で月24万円ほどだといいます。対し、生活費は月に12万円ほど。
――定年前に(住宅)ローンを返し終わったし、使うことといえば食費と光熱費くらいだから。元々お金を使うほうではなかったし
年金だけでは生活できない……そんな声が聞こえるなか、月10万円以上も余裕のある生活を送ってきた佐藤さん夫婦ですが、残ったお金はすべて孫の大翔くん(仮名)のために貯金してきたといいます。
佐藤さん夫婦には、長男・大輔さんと次男・拓也さんがいますが、孫は大翔くん。大輔さん・拓也さんの年齢を考えても、さらに孫が増えるとは考えにくい……そのため、夫婦の愛情は大翔くんひとりに注がれてきたのです。
大翔くんが誕生してから、大翔くん名義の口座をつくり、コツコツと貯金。毎年100万円、10年間で1,000万円になっていたとか。毎年100万円としていたのは、「年間110万円以内の贈与なら贈与税はかからないから」。最近、よく耳にするこの常識を佐藤さん夫婦も事前に知り、税金がかからないように注意を払ってきた、というわけです。
ちなみに、この110万円というのは、1人の人が1年間に受け取った財産の合計額であり、1人の人が贈与した金額ではありません。仮に実さんから100万円の贈与、和子さんからも100万円の贈与があったら、110万円を超える部分に対して10%~55%の税金がかかります。
税務署が「110万円以内の生前贈与」を否認する理由
さらに気を付けたいのが、生前贈与加算。もともと、生前贈与の3年内加算」という規定があり、贈与から3年以内に亡くなった場合は、相続財産に含まれるとされていました。それが2024年1月1日からの贈与では、対象期間が3年から7年に延長となりました。
令和5年度税制改正により変更になったこのルール。1年前にベンチャーサポートグループ株式会社が全国の60代以上の親を持つ男女を対象に実施した調査では、認知度20.3%。5人に1人しか知られていませんでした。
子どもや孫への贈与をコツコツしている……そんな年金世代も多いでしょう。しかし、自身に突然の不幸が生じることも考えられます。そうなった場合、それまでは「直近3年分の贈与は認められません」だったのが、「直近7年分の贈与は認められません」となるのですから、大きな変更ポイントです。
さらに気を付けたいのが「名義預金」です。これは口座の名義人と実際にお金を出した人が違う預金のこと。佐藤さん夫婦の場合も、大翔くん名義の口座にコツコツとお金を振り込んでいたら、「これは実質、佐藤さん夫婦の預金ですよね」と見なされ、仮に相続が発生した場合、相続財産とみなされます。また名義預金という意識がない場合は、相続財産であるという申告もしていないでしょう。最悪、あとから税務署から指摘され、「これは贈与になりません。相続の申告漏れです」と、ペナルティが科されるケースも考えられます。
ちなみに国税庁『令和4事務年度における相続税の調査等の状況』によると、相続税の税務調査は年間8,196件、そのうち申告漏れ等の指摘を受けたのは7,086件。税務調査が入ったら追徴課税となる可能性は実に8割以上と高確率。1件あたり816万円の追徴額となっています。また無申告と指摘され税務調査に至ったのは705件で、実際に申告漏れが指摘されたのは607件。1件あたり1,570万円の追徴額でした。
さらに贈与税に関する税務調査は2,907件で、申告漏れは2,732件。1件当たり270万円の追徴額となっています。
――これ、お孫さんのお金じゃないですよね
――えっ、これはおじいちゃん・おばあちゃんからの贈与で……
――いえ、贈与とは認められません
――は、何かの間違いでは?
孫のためにという優しさが、きちんと報われるよう、事前に対策をしておく必要があります。
相続税に関する預貯金等の帰属の裁決事例では、「その資金源、預入れの経緯、印章の使用状況、入出金の管理状況及び名義変更等に伴う贈与税の申告状況等を総合勘案して判断するのが相当である(国税不服審判所平成19年3月5日裁決・TAINS F0-3-309)」としています。
確実に年間110万円以内の贈与を名義預金とみなされないためには、「贈与契約書を作成」「贈与に伴う資金の移動は預金口座間で実施」「預金通帳、銀行印の管理は受贈者自身が行う」の3点がポイント。
さらに受贈者が未成年者の場合には、民法824条で親権者がその子の財産を管理することになっているため、両親などの親権者が法定代理人として、通帳と銀行印を管理し、贈与契約書には受贈者と親権者が署名押印することが重要です。
[参考資料]
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