ニュージーランドの不動産業界は「繁忙期」に突入!少しでも安く買いたがる「バーゲンハンター」と売り手との交渉模様はいかに?【現地バイヤーが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月8日 11時15分
※画像はイメージです/PIXTA
年内にマイホームを購入したい家族や、お得な価格で物件を探している投資家たちが活発に動く、不動産業界「繁忙期」に突入しました。今回はそんな繁忙期における、売り手・買い手の葛藤についてお届けします。※本記事では、ニュージーランドのオークランド在住で不動産会社を経営する著者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。
繁忙期に登場する「バーゲンハンター」
現在、私が暮らすニュージーランドでは、年内にマイホームを購入したい家族や、お得な価格で物件を探している投資家たちが活発に動いています。そのため私たちも、週末はオープンホームを開催し、平日の内覧希望者も多く、昼夜を問わず電話が鳴り続ける日々を送っています。
繁忙期に特徴的なのは、「バーゲンハンター」と呼ばれる買主です。彼らは、何らかの理由で家主が急いで売却したい物件を探し、市場価格より安く購入できるケースを狙って、明確な値段志向で問い合わせをしてきます。また、実際に物件を見学して、「ここがこうだから、もう少し安くならないか」など、具体的に指摘してくる買主も増えてきました。
以前からそういった人はいましたが、最近は多くの買主が、家主の購入価格や、賃貸運用をしていた投資家か、自己所有者だったかなど、公開されているデータを研究して、価格交渉をしてくる傾向が強まっています。
子育て世帯は、お子さんの学区を気にしながら物件を探しています。自分たちの予算とも相談しながら購入しなければならないので、綿密に資料を見て、データ分析をしてくる買い手の人が目立つようになっていると感じます。
私たちも、言われるままにしていては、売却価格が伸びないので、強気で交渉する必要があります。
20年近く前に建設された投資用住宅地があります。ほぼ同じ間取りとデザインで建設されているため、家の基本的な価値には、ほとんど差がありません。しかし、内装の改装状況や、日当たりのよさ、庭の手入れ具合によって、微妙に価格帯が変化します。
一つ例をあげると、私たちが担当する物件の近隣に、一ヵ月早く販売が開始された物件がありました。私たちの物件にも購入希望者が現れ、価格交渉が始まると、この近隣の物件が先に売れて価格が一般公開されていたため、買主たちはその金額を参考に交渉を始めました。
しかしながら、私たちが担当する物件は、先に売れた家よりも、土地が狭く、レイアウトも若干異なりました。また、先方の家のほうが、リビングも広く、庭の手入れもされているようでした。そのため、買主たちは低い価格でオファーを出そうとします。我々が目指す金額より、2~3万ドル低い値段でした。この状況をどう説得、交渉すべきでしょうか?
もしこの近隣物件の一般公開がなければ、予定通りの価格帯で売れる可能性が高かったのです。買い手も必死ですので、「あの家よりどうして、高いのか」と言ってきます。
しかし、家主の希望はさまざまで、購入された時期も異なるため、それぞれ希望する価値観が異なります。私たちも、家の位置関係や日当たりの面でもこちらが良い物件であると信じていました。そのため、「そうですか、あなたの言う通りですね。価格を下げましょう」などと言っていては商売になりません。買い手の購入希望の度合いを探りつつ、この人との交渉が不成立となった場合の、次の買い手の可能性も考えつつ交渉を進めていきました。
不動産バイヤーの一番の腕の見せどころ
実際には、購入希望度が高いと確信した買い手に対して、別の買い手の存在をほのめかしながら、強気で価格交渉に挑みました。ただし、買い手が投資家でしたので、すぐテナントが見つかるように、管理マネージャーの紹介や、物件引渡し前の内覧など、協力的な姿勢で交渉を続けました。
結果的には、家主の最低販売希望価格を上回る金額で売却が実現し、二週間後に物件の引き渡しが決まりました。
この価格交渉は我々にとって、一番腕の見せどころでもあり、取引の山場でもあります。住宅ローンの金利が下がったものの、基準がまだ高いため、マイホーム購入にとっても金額交渉は重要です。
売主も、希望金額に固執せず、期待値を少し抑えることで合意に至りやすくなります。次の計画へと進むためにも、良い方向へと進むことを期待しています。
現在、市役所の評価額というものを基準にし、以前は、その金額の10~20%アップで市場価格は動いていましたが、近年は、逆に10~20%ダウンで動いています。
家の内装の状況、今後のメンテナンスがどれだけ必要かで、金額が前後するため、売る時は、やはり、お化粧直しが大事になってきます。お見合いと同じで、第一印象が物件の売買にも影響します。
具体的には、レンタル家具を入れて、印象をよくし、買い手の購買意欲を高めることなどができるでしょう。このレンタル家具の予算も安くはないので、先行投資を躊躇するもいますが、かけた分以上に戻るため、やっておいて損はないでしょう。
しかし、全ての家主がお金のかかるレンタル家具に同意されることはないので、私たちは、キッチンやバスルームをきれいにすることや、庭周りの雑草取りを行うことで、お金をかけずに物件の清潔感を保ち、そのうえでオープンホームを実行しています。
「売買を決めたらその瞬間に決める」
今回は、繁忙期における、売り手・買い手の葛藤をお伝えしました。物件購入は大きな買い物です。理由がどうであれ、この物件売買の結果次第で、その先の計画が決まっていきます。そのため、購入に踏み切れないということもあるかもしれません。
私が長年この業界にいて感じるのは、売買を実行したいと思った時、その瞬間に決めてしまうのが、結果的には一番タイミングが良いということです。今の売買状況に対して、「もう少し待てばよい買い手が来るのでは?」「絶対この価格帯以下では売りたくない」というような考えを持つと、必然と売れず、結果、チャンスを逃し、3か月経過しても、売れていない状況に陥り、最悪は固執していた金額より低いどころか、最初にもらったオファー価格より、今は、低い金額で世の中に告知をする羽目になり、時間も、資金もロスという最悪パターンになることが生じます。
新築物件で、定価が告知され、その価格を交渉することが少ない状況にある場合は、このようなことがあまり起きませんが、ニュージーランドは中古物件売買マーケットが占めるため、この時価の価格交渉が必至となります。
次の交渉も目前、12月中旬までニュージーランドの不動産売買は、活気に満ち、必死で日夜動きます。クリスマス・年末年始をどれだけ楽しく過ごせるかが、決まる時期です。
これから、家を売りたい人、家を買いたい人の参考になれば幸いです。
一色 良子 Goo Property NZ LTD 代表取締役社長 Arizto Ltd 所属
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