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「入居金1,000万円・月額32万円」老人ホームに仲良く入居の夫婦…「年金月17万円」の73歳夫が風呂場で急死、動転の同い年妻。強制退去不可避の「まさかの遺族年金額」に49歳長男がとった最終手段【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月13日 10時45分

「入居金1,000万円・月額32万円」老人ホームに仲良く入居の夫婦…「年金月17万円」の73歳夫が風呂場で急死、動転の同い年妻。強制退去不可避の「まさかの遺族年金額」に49歳長男がとった最終手段【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦2人で受け取る年金は、夫と妻のそれぞれの老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせてもらえるため、ある程度の金額になります。しかし、どちらかが先立った場合には、亡くなったほうの老齢基礎年金は受給できなくなり、老齢厚生年金は老齢遺族年金として受け取れますが、金額は少なくなってしまいます。本記事では、杉本さん(仮名)の事例とともに、老後の年金について、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。

地方に住む親が終活で決めた「老人ホーム入居」

今回相談を受けたのは、私立の大学に通う子どもが2人いる49歳の杉本さん(仮名)でした。故郷に残した両親は、杉本さんから見ても本当に仲のよい夫婦でした。ところが昨年、73歳の父親を亡くしたことにより、父と同い年の母親が思わぬ事態となっているとのこと。

父と入居した老人ホームにひとり取り残された母

杉本さんの両親は、70歳を前に自宅も古くなったし、自分たちの健康にも不安を感じていたことから、夫婦で住宅型有料老人ホームに入ることにしました。当時は夫婦とも年齢の割には比較的健康でしたが、体の衰えも感じていることや、物忘れが増えたとお互いに自覚があり、いまの状況でも入居できるところで、将来の介護などのことも対応できるところを考えて、住宅型有料老人ホームに決めます。

入居時は夫婦2人で入れる部屋を選び、月額利用料金は32万円。両親の年金月額収入は、父親が17万円で、母親も正社員として働いていた時期が長かったということもあり13万円。あわせて30万円ですが、社会保険料や源泉徴収されて振り込まれる金額は、26万円です。不足する6万円は、自宅を売却して諸々の経費を払ったあとに手元に残った500万円から支払っていく予定にしました。

入居後、妻は新しい環境にとまどっていましたが、少しミーハーな一面があり積極的にほかの入居者ともコミュニケーションをとる父の人柄に引っ張られるように、2人とも楽しく生活を送ることができていたようです。しかし、元気だった父親が昨年に亡くなってしまいます。風呂場で心臓発作を起こしたことによる突然死でした。

コロナ明けのタイミングで、家族葬が多くなってきていることもあり、杉本さんも家族葬を選び、ひっそりと葬儀を挙げました。葬儀代などは、遺産で賄ったそうですが、家族葬にしたことで、香典も少なく、実費は100万円程度と父の最期といえど、大学生の子ども2人を抱える杉本さんにとっては痛い出費となりました。また、墓がなかったので、霊園に永代供養をお願いし、今後の母親のこともあり、2人用の墓を建てたため、こちらの費用は50万円程度かかりました。

遺産分割は母親と杉本さんの2人だけだったので、母親の今後のことも考えて、全額渡したいという思いもありましたが、杉本さんは家族を養う立場であることから、遺留分だけを受け取ることにしたそうです。遺留分とは、遺言などで特定の人に全額相続させるという内容であっても、相続人が最低受け取れる権利で、法定相続分の2分の1となります(相続人が直系尊属だけのときは3分の1)。

年金額減少でも支出が多くなる

父親が他界して、母親は1人部屋に移ることになったのですが、月額利用料は半額になるわけではなく、23万円に。入居時に父親と母親の貯蓄から入居金1,000万円を払っていたので、家を売却したお金とわずかな貯蓄になっていたのです。

母親は遺族年金が受け取れますが、父親が受け取っていた老齢厚生年金の4分の3が遺族年金として受け取れることになります。ただ、全額が受け取れるのではなく、自分が受け取っている老齢厚生年金分を引いた差額を受け取ることになります。杉本さんの母親の場合は、老齢厚生年金が6万2,000円、遺族厚生年金が7万6,500円で差額の1万4,500円を受け取り、老齢基礎年金と合わせると14万4,500円となります。

これまで貯蓄から6万円を取り崩して、月額利用料に充てていましたが、1人部屋になって逆に支払いが3万円増えてしまいました。このころ、母親も体調が悪くなることが多く、医療費も増えて、支出が思っていた以上に増えていきます。心配性の母親は、支出が増えていることで「ホームを退去させられるかもしれない。このままでは路頭に迷ってしまう」と、杉本さんに連絡をし、いまの母親の状況をようやく理解しました。

子どもたちが独立したあとは母を支援

現在、大学に通う2人の子どもも、あと4年すれば大学を卒業します。遺産相続の際に受け取った相続分は、アパートに住んで通学する子どもたちの学費などで使ってしまい、すぐに母親の面倒を見る余裕がありませんでしたが、まだ母親には貯蓄もあり、数年のあいだはいままでどおりの生活はできる様子です。そのため、子どもが卒業後は、母親に仕送りをすることを考えてもらいました。

また、これまでは、国民健康保険料を母親が自分で払っていたようですが、杉本さんの扶養に入ってもらうことで、母親の負担が減らせることもアドバイスをしました。その後は、心配性の母親に杉本さん本人が、今回のアドバイスを説明し、安心してもらうことができました。子どもに頼るのは最終手段かもしれません。しかし、母を路頭に迷わせるくらいならと、杉本さんもそれしかないと、決断に踏み切りました。

複雑な年金制度

老齢年金は、夫婦2人のときには、それぞれの年金が受け取れるので、多くなりますが、厚生年金の加入期間や金額が多い夫が先立たれた場合、これまでの2人合わせた年金から、少なくなります。

今回は、母親も会社員勤めが長かったことで、自分自身の年金も多かったのですが、これまで扶養控除内で働いていた人などは、自分自身の年金が老齢基礎年金と僅かな老齢厚生年金になります。仮に配偶者の夫が先立ってしまうと遺族厚生年金が受け取れるとしても、夫がもらっていた額の4分の3になってしまいます。

社会保険の加入要件も厳しくなり、多くの企業が新たなルールに適応する必要に迫られています。2024年10月からは、パートやアルバイトなどの短時間労働者に対する社会保険の適用範囲が広がったのです。それまでの従業員101人以上の企業というルールから、「従業員51人以上の企業」で働く人に適用範囲が拡大され、一定の収入があることや、就労時間があることにより、社会保険に自分自身で加入しなくてはならなくなりました。しかし加入者からすると、社会保険に加入しておくことにより、夫婦2人のケースで年金を受け取るようになると、収入が増えることになります。つまり、長寿化を考え、年金を受け取りながら貯蓄を増やすこともできるのではないでしょうか。

年金制度に不信感を抱く人が多くいますが、仕組みについて、しっかりと理解しておくことが大切です。  

吉野 裕一

FP事務所MoneySmith

代表

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