【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…11月第2週の「米国経済」の動き
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月10日 20時15分
(※画像はイメージです/PIXTA)
大きく注目されていた米大統領選でトランプ氏の再選が確実視され、「米ドル円」に対する世の中の関心はかつてないほどに高まっています。そこで、来週の米ドル円相場の動向に影響を与えそうな、先週の米国経済の動きについて、東京海上アセットマネジメントが解説します。
FOMCでは大方の予想通り、0.25%の利下げを決定
米労働省が公表した2024年10月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査)は前月差+1.2万人と、市場予想(同+10.0万人)を大幅に下回ったほか、8月、9月の2か月分が計▲11.2万人下方修正されました(図表1)。
雇用増勢が大幅に鈍化した要因として、米南部を襲ったハリケーン「へリーン」や「ミルトン」などが影響したとみられます。公表元は、これらの影響を量的に示すことは困難としながらも、同調査の回答率が通常より大幅に低下したとして、ハリケーンが雇用者数に影響したことを指摘しています。
実際に、雇用者数を算出する事業所調査の回答率は47.4%と、1991年以来の低水準となり、企業が公表元に対して迅速に回答できなかった可能性があります。
また、非農業部門雇用者数を業種別にみると、輸送機器製造が前月差▲4.4万人と減少幅が拡大しており、ボーイング社のストライキも影響したとみられます。もっとも、雇用者数が過去2ヵ月分大幅に下方修正された点を踏まえれば、基調的な雇用の鈍化はハリケーンやストライキ以外の影響によるものと考えられます。
一方、10月の失業率(家計調査)は4.1%(9月︓4.1%)と市場予想通りの結果となりました(図表2)。
ここ数ヵ月の失業率は、9月のFOMCで示された⻑期均衡水準である4.2%近傍で安定しつつあります。失業率は6月の4.1%から7月に4.3%へ急上昇し、サーム・ルール(※)に抵触したことで米景気後退への懸念が急浮上したものの、8月に4.2%、9月に4.1%と低下した後、10月は横ばいとなっています。
※ 失業率の過去12ヵ月平均の最低値に対して直近3ヵ月平均が0.5%を上回った時に景気後退が始まるとされる
これにより、サーム・ルールに基づく数値は8月の0.57%から9月に0.50%へ低下し、失業率からみた景気後退懸念はいったん和らいだ格好となりました。その後、10月は0.43%へ一段と低下しており、サーム・ルールに基づく数値は6月以降、景気後退について誤ったサインを出した可能性があります。
トランプ政権発足後の見通しは?
FRBは11月6、7日に開催したFOMCで大方の予想通り、0.25%の利下げを決定し、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが従来の4.75〜5.00%から4.50〜4.75%へ引き下げられました(図表3)。
0.50%の利下げを決定した9月会合に続き、インフレ率の鈍化や労働市場の軟化を理由に、追加利下げにより金融引き締めの度合いを一段と緩めることが適切と判断したとみられます。
パウエルFRB議⻑は記者会見で、経済活動が9月時点での見通しより力強くなっている点やインフレが抑制されている点に自信を示しつつも、「労働市場をさらに冷え込ませる必要はない」とこれまでの認識を繰り返しました。その上で、「今日の利下げでも政策は依然として制約的だ」と明言しつつ、今日の決定も労働市場を維持するための、中立に向けた政策の再調整の一環だと強調しました。
また、政策金利が中立水準に近付けば、「いずれペースを緩める段階に達する可能性がある」としたものの、「これはまだ検討を始めたばかりのことだ」とも述べました。
パウエルFRB議⻑はさらに、FOMCはトランプ新政権がどのような政策を実施するか、またその政策が経済にどのような影響を与えるかについて推測したり想定したりするつもりはないとしつつも、「今のところ、原則として、政権の政策や議会が実施する政策は、⻑期的には我々の二重(物価と雇用)の使命の目標達成にとって重要な経済効果をもたらす可能性がある」と述べました。
パウエルFRB議⻑は政策金利を中立水準に戻す考えを強調しているものの、来年1月に誕生するトランプ政権の下で、拡張的な財政政策が講じられれば、経済見通しと利下げペースについて修正を迫られる可能性があります(9月会合での経済見通しは図表4参照)。
5日に投開票が始まった米大統領選において、選挙人の獲得人数は共和党のトランプ候補が312人と、⺠主党のハリス候補の226人を大きく突き放しています。また、連邦議会選では上下院ともに共和党が優勢な状況となっています(日本時間8日10時時点)。
東京海上アセットマネジメント
※当レポートの閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【米ドル円】東京海上アセットマネジメントが振り返る…11月第2週の「米国経済」の動き』を参照)。
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