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「貯金2,500万円と年金月22万円あれば生きていけるかと」…浪費もせず堅実に暮らしていた67歳・元サラリーマンが、定年後わずか2年で〈老後破産危機〉に陥ったワケ【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月13日 11時15分

「貯金2,500万円と年金月22万円あれば生きていけるかと」…浪費もせず堅実に暮らしていた67歳・元サラリーマンが、定年後わずか2年で〈老後破産危機〉に陥ったワケ【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

たとえ潤沢な老後資金があっても、無計画なまま老後を迎えてしまうと思わぬ破産につながりかねません。サラリーマン時代の金銭感覚で「定年後もなんとかなるだろう」と老後の生活を始めたところ、思いがけない出費で家計が破産しかけた60代夫婦の事例をもとに、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

「余裕の老後」が送れると考えていたが…

Aさん(67歳)は、大学卒業後より40年以上にわたり勤め上げた会社を2年前に定年退職し、5歳年下の妻Bさん(62歳)と大学生の息子の3人で、埼玉県の戸建て住宅で暮らしています。成人した長女(29歳)もいますが、すでに結婚し、東京郊外で夫と子どもと住んでいます。

Aさんは謹厳実直な性格で、これまでの人生で贅沢をしてお金を散財することもなければ、お金がかかる趣味を持ったこともありません。家族を愛し、家族の幸せを常に考える、よき父、よき夫でした。

定年退職をするにあたり、Aさんは「退職金1,500万円を含めた貯蓄が2,500万円ある。今後は年金も入るし、Bも65歳まで今のパートを続けるといっている。退職祝いに家族みんなで海外旅行くらい行ってもバチが当たらないだろう」と考えていました。

その他、住宅ローンの返済や自宅のリフォームなど、「必要最低限」のことに退職金は使うこととし、退職後の家計収支については特に深く考えることなく老後生活に突入しました。

「思わぬ支出」が重なり、たった2年で貯蓄が大幅減

Aさん夫婦はまずは、30年余り暮らした自宅のリフォームがてら、介護が必要になった場合に備え、室内のバリアフリー化の工事、そして大型家電や自家用車の買い替え、さらに、あと3年残っていた住宅ローン約400万円の返済、そのほか家族で海外旅行と、当初予定していた通りに退職金を使いました。

しかし、昨今の物価上昇でリフォーム費用も旅行費用も、Aさんがなんとなく想定していた以上に高額となってしまい、その結果、この約2年間であれよあれよと、退職金を含めた貯蓄残高が500万円まで減ってしまったのでした。

ここに、さらなる追い打ちをかけたのが、子どもたちの想定外の出費。

まず、地元の理系私立大学に通学していた長男(23歳)が、卒業を前に昨年1年間留年してしまいます。学費は、本人がアルバイトで稼ぐといったものの、親として黙ってはおれずに、約80万円の出費です。

また、長女が昨年離婚したため、娘と孫の当面の生活費などで、100万円以上の出費です。夫婦は娘の生活が落ち着くまで、さらに援助は必要と考えていました。

Aさんは、一気に減った預金通帳の残高を見て、退職金を自由に使い過ぎてしまったことを激しく悔やみました。そしていまさらながら今後の生活が心配となり、FPに相談に訪れたのでした。

Aさん夫婦の今後の家計を考える

相談を受けた筆者は、Aさん夫婦の現況と今後の家計を整理してみました。

Aさん65歳の退職後、A家の主な収入は次の通りです。

■Aさん65~67歳、Bさん60~62歳:夫婦で月約30万円

Aさん:「老齢厚生年金」月約22万円(「加給年金」を含む)

Bさん:パート収入月8万円

■Aさん68,69歳、Bさん63,64歳:夫婦で月約32万円

Aさん:「老齢厚生年金」月22万円(「加給年金」を含む)

Bさん:「特別支給の老齢厚生年金」月約2万円+パート収入月8万円

■Aさん70歳以降、Bさん65歳以降:夫婦で月約27万円

Aさん:「老齢厚生年金」月19万円

Bさん:「老齢厚生年金」月8万円(65歳でパートは辞める予定)

※ 加給年金の令和6年度の受給額は月3万4,000円。

Aさんが退職してからこの2年間、勤めていたころと比べると、支出の内容は変わっても、家計からの支出額は変わらず約30万円だそうです。

退職直前の給与と特別支給の老齢厚生年金とで月約43万円で、実直な家計運営をしてきたA家。現役中は、なにか入り用のあった月は貯蓄で調節できていました。

しかし退職後の収入は月約22万円の老齢厚生年金のみ。給与の約半分に減り、また退職後にまとまった出費をすれば、退職金だけではなく貯蓄までも底をつくのは必然といえます。

今後は現状の収入に見合う支出に削減することは、いうまでもありません。

65歳以上の半数の人々はまだ現役

内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版)」によると、65歳以上の高齢者世帯の平均所得金額(令和2年の所得)は332.9万円と、全世帯から高齢者世帯と母子世帯を除いたその他の世帯(689.5万円)の約5割です。

※ 65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯。

高齢者世帯で公的年金・恩給の受給額が家計収入に占める割合は、すべて(100%)が24.9%、80~100%未満が33.3%と、約6割の世帯が家計収入の大半を公的年金等で補っていることがわかります。

また、令和4年の労働力人口比率(人口に占める労働力人口の割合)は、65~69歳=52.0%、70~74歳=33.9%、75歳以上=11.0%と、男性は60代後半でも全体の半数以上が働いています。

さらに、現在収入のある仕事をしている60歳以上にいつまで働きたいかとの質問に、「働けるうちはいつまでも」「70歳くらいまで、またはそれ以上」と答えた人は合計で約9割を占めています。高齢期にも高い就業意欲があることがうかがえるでしょう。

老後の生活を維持するためにAさんが始めたこと

貯蓄は底をつき、家ですることもなくなってきたため、Aさんは新しく働き口を探すそうです。

ただ、A家の今後の支出は、減少する傾向にあります。たとえば、1年間延びた長男の教育費の負担は、卒業の見込みが立ち、都内の会社にも内定したそうです。就職後は厚生年金に加入しますから、現在、世帯で納付している国民健康保険料の長男分の月2,000円程度、また食費なども減らせます。

現在の家計支出からも、加入中の保険の保障内容やサブスク、携帯電話などの契約内容を見直し、毎月の負担額を軽減することが可能です。

筆者が簡易的に試算しても、約月6~7万円削減はでき、年間50万円は、今後の介護や看護の費用などに充てられるでしょう。

未設計で迎える老後は危険

その後、しばらくしてAさんが仕事帰りに筆者の事務所に寄ってくれました。現在は現役時代の事務系の業務とは異なる、一度やってみたかった造園の仕事に就いているそうです。

また、長女は自治体の「ひとり親家庭の支援」制度を活用しながら、娘と孫で新しい生活を始めたそうです。A夫婦は、今後は経済的な支援ではなく、よき相談相手に徹することにしたそうです。

Aさんは、「計画通りに退職金を使い、残高が減ってもなんとかなるだろうと、あのまま生活を続けていけば、家計が破産したかもしれません。また住宅ローンも、退職までに完済できるように借りれば、退職金に手を付けることもなかった。後悔先に立たずです」と日焼けした顔で笑っていました。

家庭によって、老後生活の準備は30代、40代からすでに始まっているといえます。

「お金のことを考えるのは煩わしい。ましてや老後のプランを立てるのはなおさらだ」と思うのではなく、限られた年金収入や退職金で老後を過ごすには綿密なプランニングが欠かせません。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

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