元手100万円が5億円に。仮想通貨で夢のタワマン暮らしを実現した26歳に憧れるも…「自分もそうなりたい」と安易に考えてはいけない〈恐ろしい理由〉
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月25日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「投資は長期でリスクを分散する。投機はNG」…これは投資の基本です。しかし、投機にあたる「仮想通貨」で一気に儲けてFIREする人の方がインデックス投資でFIREする人より多い……そう聞いたらどう思うでしょうか。本記事では29歳でFIREを達成したヒトデ氏の新刊『1万回生きたネコが教えてくれた 幸せなFIRE』(徳間書店)より一部を抜粋し、仮想通貨でFIREした26歳男性のエピソードと共に、投機の表と裏をご紹介します。
〈登場人物〉
・佐藤智也…FIREしたいと願う25歳会社員。不思議なネコ小鉄を拾った。
・小鉄…1万回生きたネコ。人間の言葉を話す。これまでの猫生で見てきた飼い主たちのFIREの成功と失敗の記録を共有できる。今回は過去の飼い主である浅田翔(26歳)の記録を智也に共有。
・浅田翔…小鉄の元飼い主。
FIRE成功パターン:浅田翔(26歳)男性
ゴージャスな暮らし
彼の部屋は、高い天井の広々としたリビング。大きな窓からは都会のビル群が一望でき、夜景が煌きらめいている。窓際にはゆったりとしたソファセットが配置されており、その前にはガラス製のコーヒーテーブルが置かれている。
その上にあるワイングラスはとても高そうで、中には赤ワインが注がれている。ソファのクッションはふかふかで、そこに若い男性がスマホを片手に寝そべっていた。
「小鉄、なんだこの部屋。すごいな」
「六本木にあるタワーマンションですね。彼、翔さんは、〝仕事以外の方法〟でFIREをした1人です」
今まで見たことがないきらびやかな空間に自然とテンションが上がってしまう。同時にどうにも場違いのような気がしてそわそわする。
仮想通貨で5億の資産
「ところで、翔さんはどうやってこんな家に引っ越したの?」
「仮想通貨で一発当てました」
「ギャンブルじゃん!」
「そうです。投資ではなく、投機と呼ばれるハイリスク・ハイリターンな取引ですね。翔さんは、当時の貯金100万円を仮想通貨に突っ込み、その後も売買を続け、最終的には5億円もの資産を築いたのです」
「ご、5億……。わけがわからない……。しかも、この人相当若いよね」
「そうですね、このときで26歳です。彼がはじめて仮想通貨を買ったのは22歳のときなので、4年でここまでの成長を遂げました」
僕と1歳しか違わない。しかも、動き出したのは僕よりも若いときだ……。なのに、資産はとてつもなく大きい差になっている。桁違いどころの話ではない。
その事実にクラクラしてしまう。
投機のほうがFIREする確率は高い
「今回で言う仮想通貨のように、時代の節目にはこういったケースが出現します。とりわけ、若い方が波に乗ることが多いですね」
「でもさ、これってさすがにギャンブルだよね!?」
「そうですよ。ハイリスク・ハイリターンに勝利したということです。他にも株の信用取引やFX等の投機で資産をすごく増やし、そこからFIREにシフトしていくケースはあります。少なくとも、智也さんのように毎月の給料をこつこつインデックス投資に回す、という方法よりはFIREをしている人の比率は高いです」
そんな……。僕が今まで学んできたことで、最もダメだと言われているのがこの「投機」だった。そんな一発逆転は考えずに、こつこつと積み上げようと、皆そう言っていた。リボ大の学長だってダメだって言ってた。
でも、現実問題それではFIREできず、投機のほうがFIREする確率は高いという。
ということは……。もしかしたら、今の自分に足りないのはリスクを取ることだったのかもしれない。このキラキラと輝くタワーマンションの一室を見ていると、よりその気持ちが強くなってきた。
うん、そうだ。確かに、ちまちまとインデックス投資で安全に増やそうとしていても埒(らち)があかない。複利の力はすごいが、僕がほしいのは豊かな老後ではない。豊かな若い時間なのだ。
世の中そんなに甘くない
そうか、つまり長期投資とFIREは相性が悪いのだ。だってFIREするためには、若くしてたくさんの資産を作らないといけない。複利の力は時間が長ければ長いほど大きくなる。ある程度短い期間で成果がほしいなら、ギャンブルが必要なのかもしれない。
よし、完全に理解した。僕もこれから思い切って仮想通貨のトレードを勉強して……。
「ちなみに、投機にチャレンジして破滅する方や、生活が立ち行かなくなる方は非常に多いです。というよりも、そういう方が大半で、翔さんのような人はごくごくわずかな超レアケースです。失敗して、自ら命を断つ方も珍しくありません」
やっぱ、やめとこ……。
血の気が引いた。そりゃそうだ。世の中そんなに甘くない。
「実際のところ、投機で〝一発当てる〟レベルの人はそこそこいます。しかし、〝一発当てた上で生き残る〟人は本当に稀まれです。一発当てた人は、次も当てようとするし、段々と感覚も狂っていくので、そこのバランス感覚を保つのはとっても難しいことなんです。1億円稼いだのに、その後全て失って借金生活、みたいなことが普通にありえます」
つまり、ハイリスク・ハイリターンでお金をしっかり作り、それを資金に優雅な生活を送っている翔さんは、勝ち組の中の勝ち組ということだ。
「翔さんは、本当にラッキーなんだね。羨ましいよ」
「運の要素があるのは確かです。でも、ラッキーというのは違います」
「どういうこと?」
「トレーダー」という職業に就ける人間が一握りしかいない理由
「翔さんは何も考えずにひたすら積み立てたり、運任せに買ったり売ったりはしません。分析し、期待値を見極め、常に冷静に、時に大胆に勝負をしかけます。つまり、〝トレーダー〟というひとつの職業です。それこそ、一部の才能のある人しか続けられない道です」
改めて目を凝らすと、翔さんが寝転がって見ていたスマホの画面に映っていたのは何かのチャートだった。そこに動きがあったのか、急に起き上がると6つも画面があるPCの前に座り、素早く操作をはじめていた。
「彼は、いつもこうですよ。優雅な暮らしに見えたかもしれませんが、頭の中はいつだって市場のことを考えています」
とんでもないスピードでマウスとキーボードを操作している翔さんの目は、とてつもなくギラついていた。
勝った人の何倍、何十倍損をした人がいる
ハッと目が覚めると、自室のソファに座っていた。どうやら戻ってきたらしい。我が家のリサイクルショップで4,000円で買ったソファと、翔さんの家のおそらくハイブランドの高級ソファを比べて溜め息をついた。
すぐ横で毛づくろいをはじめた小鉄に語りかける。
「SNSを見てるとさ、こうやって一発ドカンと財を成してる人って結構いる気がするけれど、あれはごくわずかな生き残りの人ってことなのかな?」
「おっしゃる通りです。詐欺にはめようとして偽りの投稿をする人も多いですが、もちろん本当にうまくいった人もいるでしょう。ただその何十倍、何百倍も損している人がいます。自分は勝てると思うなら参入してもいいと思います」
「いや普通に無理だ……」
僕は、先程の翔さんのギラついた目を思い出していた。
「こういった売買の恐ろしい点は、〝何もわかってない素人でも、短期的には勝てることがある〟という点です。結局上がるか下がるかという話なので、何も考えずにコインを投げて決めたとしても、当たるときは当たります。
自分で考えた適当な理論、インフルエンサーから言われた謎の投資手法、そんなのでも、儲かるときは儲かってしまうのです。これが、一番恐ろしいところです」
「勝てるならいいんじゃないの?」
「勝ち続けられないなら、意味がありません。むしろ中途半端に勝てるからこそ、やめられません。実際、常に期待値のある行動をとり続けられる人であれば、専業トレーダーとしてうまくやれるでしょう」
SNSで見かけるカリスマトレーダーも、簡単にお金を稼いでいるように見えて、実際はとんでもない苦労を重ねているのだろう。
株式会社HF 代表取締役
ヒトデ
※本記事は『1万回生きたネコが教えてくれた 幸せなFIRE』(徳間書店)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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