「一人につき一法人を持つ時代」がやってくる…「法人設立“後進国”ニッポン」の汚名返上
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月22日 18時0分
会社を設立するのは、いまや起業家だけではありません。会社員による法人設立も一般的になりつつある今、加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が「会社設立の現状」を解説します。
「新設法人数」は過去最多を更新し続けている
帝国データバンクによると、2023年に全国で新設された企業は、15万2860社(前年比7.9%増)と過去最多を記録。会社法人の新設時の代表者の年齢(起業年齢)は48.4歳となり、過去20年で約3歳上昇しています。起業者の高齢化は、若年層や女性だけでなく、現役を引退したシニア層など、さまざまな世代が起業に挑戦していることが要因として挙げられています。
日本はスタートアップが出てこない国といわれてきましたが、それも昔の話です。いまやスタートアップの数は増加しており、政府や自治体による起業支援の拡充や、クラウドファンディングなどの資金調達手段の整備がされて、起業のハードルが下がっています。また、地方や多様な層からの起業も進んでおり、日本ではある程度経験のあるシニアが起業するケースが増えています。
「一人一法人」の時代がやってくる
個人が会社を設立するのは、何もビジネスだけが目的ではありません。ひと昔前は、会社をつくるといえば、起業=リスクをとるイメージでしたが、近年は、会社を設立する目的は多様化しています。ビジネスはもちろん、副業による収入源の確保、節税効果、資産の効率的な管理、自由な働き方の実現なども、設立の動機として一般的になりつつあると感じます。
近年の動向を見ていますと、近い将来、一人一法人を持つ時代が必ずやってくると筆者は予想しています。特に次の3つは、会社設立のハードルを大きく下げる要因となっています。
1. 副業・兼業の一般化・フリーランスや個人事業主の増加
大手企業を中心に副業や兼業が広く認められつつある現代では、多くの人が本業とは別に個人事業やプロジェクトを進めています。例えば、ITスキル、デザイン、マーケティングの知識など、既存の職場で学んだスキルをもとに、フリーランスやコンサルティング業を展開することで、ビジネスチャンスやキャリアを広げることが可能です。
フリーランスや個人事業主の増加は、特にデジタル技術の普及とリモートワークの広がりに伴っています。会社員として安定的な収入を持ちながら、ライフスタイルに合わせて事業活動を行う「サラリーマン起業」は増加傾向にあり、この流れに沿って、法人を設立することがより一般的になりつつあります。法人を設立することで、副業収入の税務上のメリットが得られたり、事業の信頼性が向上したりするため、一人一法人の傾向が強まるでしょう。
2. 資金調達手段の整備と起業リスクの低下
「スタートアップ創出促進保証」などの経営者保証を必要としない国・自治体による創業支援制度の取り組みなどは、起業の増加を後押ししています。
日本国内では、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家によるスタートアップへの投資も増加しています。特に、テクノロジーやバイオテクノロジー、AIなどの成長分野において、多額の資金がスタートアップに投じられています。また、クラウドファンディングなどの新しい資金調達手段の普及も起業を支えています。起業にリスクは付きものといいますが、いまやリスクを極限にまで抑えた起業が可能になりつつあります。
3. 税務面でのメリット・資産管理
法人を持つことで、経費の計上や税制面での優遇を受けることができ、節税効果が高まる可能性があります。特に、一定の収入がある場合、法人を設立して法人税を適用するほうが、個人の所得税よりも有利な場合があります。また、将来の資産形成に関しても、法人のほうが有利に働くことがあります。特に、不動産投資や株式投資などの資産運用を行う場合、法人として運用することで税制面での優遇や、事業経費の計上が可能になり、資産の効果的な管理が可能です。資産を管理することだけを目的とした資産管理会社の設立も一般的になりつつあります。
個人が会社をつくることはメリットが大きいのですが、デメリットも存在します。会社をつくろうかな?と思ったら、会社をつくるメリットとデメリットをきちんと理解したうえで判断をする必要があります。
法人化するうえでのメリット・デメリットは、次回以降で詳しく解説します。
加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士
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