死亡した人の預金、「口座凍結される前」に引き出しても大丈夫?【司法書士が回答】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月13日 12時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「役所に死亡届を出したら、故人の銀行口座は凍結されてしまうのでしょうか?」「口座凍結前に預金を引き出すことはできますか? 引き出してもよいのでしょうか?」司法書士・佐伯知哉氏は、相続手続きの依頼を受けるなかでよく、このような質問を受けるといいます。実際のところどうなのでしょうか? 本稿で見ていきましょう。
役所に死亡届を出す=口座凍結になる?
結論からいうと、市町村役場に死亡届を提出しただけでは、口座は凍結されません。というのも、行政機関である市町村役場と民間の金融機関は、決して情報がリンクしているわけではないからです。
行政機関に死亡届を提出すれば戸籍には「死亡」という記載がされますが、だからといって、口座をストップするよう行政機関から各金融機関に連絡することもありません。
口座凍結が行われるタイミングとは
金融機関に対して相続発生の連絡をしたり、相続届を提出したりなどをしない限りは、そもそも口座は凍結される事態にはならないとされています。
ただし、金融機関の担当者が葬儀や新聞の訃報欄などから口座名義人が死亡した事実を知った場合には、凍結されるケースもあります。
例えば、地元でよく知られた地主や大きな預貯金を持った人などが亡くなったときなどは、金融機関の関係者が葬儀に参列することがあります。このような場合は口座名義人の死亡が把握されますので、相続人側から手続きを取らずとも口座が凍結され、預貯金の払い戻しを受けられなくなることもあります。
とはいえ多くの人々には、このような心配はないと考えてよいでしょう。亡くなった途端に口座が凍結されたり、死亡届を提出しただけで凍結されたりということは、通常はありません。
口座凍結前に預貯金を引き出しても大丈夫?
次に、口座凍結前に預貯金を引き出してもよいのか?という問題です。これについては、お伝えしたいリスクが2点あります。
1つは、相続人の間でトラブルが発生する可能性がある点です。相続発生後の預貯金は、相続財産(遺産)に該当します。他の相続人に無断で引き出したうえに、そのお金を何に使ったのかわからなかったり(=使途不明)、あるいは相続人が自分自身のために消費したりなどすれば、遺産が目減りし、他の相続人とトラブルになる可能性があります。
2つめは、場合によっては「相続放棄」や「限定承認」を選べなくなる可能性がある点です。預貯金を引き出す行為は「遺産の処分」に該当し、これを行うと「みなし単純承認」となる可能性があります。プラスの財産を上回る債務(借金や未払金など)がある場合は、その債務を被ることになりかねません。
相続の方法は大きく3つあります。財産を無条件で受け取る「単純承認」は最も一般的な方法ですが、財産を一切受け取らない「相続放棄」や、相続した範囲で被相続人の債務を返済する「限定承認」もあります。しかし預貯金の引き出しなどの「財産の処分」に該当する行為をすると、いわゆる「みなし単純承認」となり、相続放棄や限定承認ができなくなる可能性があるのです。
あくまで「可能性がある」とする理由は、「葬儀費用のために預貯金を引き出した場合は単純承認にならない」とした判例などもあるからです。
とはいえ、判例があるということは、争いが発生したという証拠でもあります。ですから相続放棄や限定承認を検討している場合は、口座凍結前であっても引き出しを避けたほうが無難です。
どうしても預貯金を引き出したい場合の「制度」
口座凍結前に預貯金を勝手に引き出すと、相続人間のトラブルが発生したり、相続放棄や限定承認ができなくなったりする恐れがあります。しかし、どうしても引き出したい場合は、正式な制度である「遺産分割前の相続預金の払戻制度」を利用するとよいでしょう。
遺産分割前の相続預金の払戻制度は2019年7月1日に施行された制度で、引き出せる金額は【相続開始時の預貯金額 × 1/3 × 払戻しを行う相続人の法定続分】です。ただし、1つの金融機関から払い戻せる上限額は150万円までです。
本制度を使えば、他の相続人の承諾を得ずとも、法律で定められた範囲内で預貯金を引き出すことが可能です。
手続きの方法は金融機関ごとに若干異なりますが、主な必要書類は次のとおりです。
---------------------------------------------------
<必要書類の例>
・被相続人の出生~死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・預貯金払戻しを受ける相続人の印鑑証明書
※金融機関ごとに若干異なりますので、詳しくは各金融機関にお問合せください。
---------------------------------------------------
これらを用意したら、金融機関の指定フォーマット等に記入し、提出していくという流れになります。上記書類はいずれも、遺産分割前の相続預金の払戻制度のみならず、さまざまな相続手続きにおいても必要な書類です。
以上、今回は相続実務のなかでよく受ける質問を基に解説しました。本稿がお役に立てば幸いです。
---------------------------------------------------
<まとめ>
●死亡届を出しても、基本的に口座凍結には繋がらない。
●凍結前に預貯金を引き出す場合は、相続人全員に話を通したうえで行うか、もしくは法定された預貯金の払戻制度を利用するという方法がおすすめ。
●口座凍結前の預貯金の引き出しは「みなし単純承認」となり、相続放棄や限定承認ができなくなる可能性があるので要注意。
---------------------------------------------------
佐伯 知哉
司法書士法人さえき事務所 所長
この記事に関連するニュース
-
「遺産はない」と言っていた父の死後、預金「1000万円」が発覚! 母は“生命保険金”があるので、妹と2人で受け取って大丈夫でしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年11月19日 3時0分
-
無効になるリスクも…相続放棄前後に“やってはいけないこと”とは?避けるべき行為をしてしまった場合の「3つの対処法」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月14日 10時15分
-
えっ?被相続人の銀行口座が凍結された!難解な口座解約手続き、相続人全員の合意が必要です【相続専門税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月3日 11時15分
-
相続が発生…いつまでも悲しんでいられない、〈相続手続き〉に必要な4つのハードルを越えられるか【相続専門税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月28日 11時15分
-
遺産相続手続き、いつまでに何をすべきか?「9つの手続き」のポイントを税理士が解説
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年10月27日 9時15分
ランキング
-
1【冬の乾燥対策に】ドラッグストアで手軽に買える! ハンドクリーム5選
マイナビニュース / 2024年11月21日 17時0分
-
2書店に行くとなぜか急にトイレに行きたくなる「青木まりこ現象」とは?
マイナビニュース / 2024年11月21日 16時2分
-
3【風呂キャンセル界隈】医師「心身が疲れた時こそ入浴を」 - 安全で健康的な方法とは
マイナビニュース / 2024年11月21日 11時0分
-
4とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
-
5生産性を上げ、まわりと差がつく5つの栄養素 ライバルを出し抜くために必要なのは「食事」
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 10時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください