〈年金23万円〉〈貯金2,000万円〉元教師の80歳父の口座から「毎月10万円」引き出して悠々自適に生きる、実家暮らし「52歳・働かない息子」…銀行からのよもやの宣告に「畜生!」と激昂
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月14日 5時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
内閣府の調査によると、国民の50人に1人は引きこもり状態にあるとか。そのなかには働いている人もいますが、無職という人も相当数いるでしょう。なかには親のお金で悠々自適に暮らす実家住まいの中高年も。自由を謳歌する毎日……しかし、思いもしない試練に見舞われることもあるようです。
氷河期世代の52歳。厳しいノルマに悲鳴!心を病み、実家に出戻り
山本健一さん(仮名・52歳)。市内郊外にある実家に戻り20年が経過。大学進学時、実家から通うこともできたにも関わらずひとり暮らしを始め、それから15年ほどして実家に出戻り……なぜ?
――大学進学で家を出たのは、教師だった父からただ逃げたかった
厳格な健一さんの父。生活態度から勉強に至るまで何かと口うるさく、窮屈な思いをしてきたといいます。「ひとりでしっかりと生活できるようようになりたい」と訴えたところ、家を出ることを許してくれたとか。
大学卒業と共に就職し、普通にサラリーマンをやっていた健一さんが、再び実家に戻ってきたきっかけは失業。就職をしたのは、就職氷河期のはしりのタイミング。健一さんの場合、大学を卒業しても職がない、という状況は回避できたものの、自分が望む会社への就職は叶わず、「正直、仕方がなく」という会社で働くことに。
朝8時から朝礼がスタート。ラジオ体操から始まり、社訓を大声で唱和。昨日の営業成果を読み上げられ、ノルマを達成していれば称賛され、達成していなければとことん批判を受ける。朝礼が終われば5分以内に営業活動で外に出なければならない。受注を上げなければ帰社しづらく、すでに陽が落ちているなか、途方に暮れる……そんな毎日を過ごしていたとか。
そんな生活を10年ほど続けたという健一さん。その間、転職を考えたこともありますが、不況が続いていたこと、また名の知れた会社ではあったこともあり踏ん切りがつかず、気づけば10年ほど経っていたといいます。そんなときに体に不調をきたします。
朝、電車に乗ろうとするも足が動かず、動悸が止まらない……医師から心の病と診断され、休職を余儀なくされ、そのまま退職に至ったとか。そんな息子を心配し、実家に呼び寄せた、というのがことの顛末です。
80歳父が認知症で老人ホームに入居…年金振込日に起きた異変
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』によると、15歳~64歳の生産年齢人口において推計146万人、50人に1人がひきこもり状態だといいます。中高年に焦点を当てると、引きこもり状態になったきっかけとして最も多いのが「退職」で37.3%。「新型コロナウイルス感染症の流行」29.3%、「病気」17.3%、「介護・看護」11.5%のほか、「特に理由はない」も13.4%ほどありました。
実家に戻ってから20年ほど。すでに健康となった健一さんですが、今も実家暮らし。すでに母親は他界し、父親との二人暮らし。自身の貯金が500万円ほどあるといいますが、生活費はもっぱら父親の年金。2ヵ月に1回振り込まれる年金は46万円。1ヵ月23万円。振込口座から引き下ろすのは健一さんの役目で、20万円は健一さんのポケットに入り、残りが生活費。健一さん、月10万円の小遣いで、悠々自適な生活を謳歌しています。
――父には年金があるし、貯金だって2,000万円くらいある。いずれ相続するんだし、もう働く必要なんてないじゃないですか
居心地のいい実家での生活に慣れきってしまった健一さん。いまさら仕事復帰などありえないといいます。しかしそんな生活が激変する出来事が。
80歳になった健一さんの父親。認知症となり施設に入ることになり、父の財産は成年後見人が管理することになったのです。健一さんがいつものように年金振込日にお金を下ろそうと銀行に行くと、キャッシュカードが使えず、窓口に詰め寄ると、「申し訳ありませんが、ご家族では対応できません」とひと言。「えっ、私は息子ですよ」と言い返すも、「後見人が付いてキャッシュカードが利用できなくなっているんです」という説明。
――畜生!
怒りのあまり声を荒らげてしまったという健一さん。父親の年金や貯金があてにならないなら、自身の貯金を取り崩していくしかありません。「父親が死んでくれたら……」そんな恐ろしい考えがよぎることもあるといいます。
成年後見制度は、「精神上の障害により判断能力が不十分であるため法律行為における意思決定が困難な方々について、本人の 権利を守るために選任された援助者(成年後見人等)により、本人を法律的に支援する制度」(厚生労働省資料より)。法定後見制度の申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長などで、本人の判断能力に応じて「後見」、「保佐」、「補助」の 3つの制度があります。
成年後見制度の利用者数は、令和5年12月末時点で24万9,484人。認知症患者の増加に伴い、右肩上がりです。また親族が成年後見人等となるのは全体の約18.1%。弁護士や司法書士、社会福祉士などの士業がなることが多いのが現状です。
この制度は本人の財産を守るための制度のため、家族が自由に財産を管理・運用・処分できず、不便を被るのも事実。専門家が成年後見人となると毎月2万~6万円程度の報酬の支払いが発生。また成年後見制度を利用すると、本人の判断能力が回復したと認められない限り、制度は途中でやめられません。つまり報酬は本人が亡くなるまで支払い続けなければなりません。
認知症患者の金融取引は成年後見制度の利用を原則とする
このように、認知症が進み、判断の能力が低下している場合、家族であっても銀行口座から自由にお金を引き出すことができなくなります。
全国銀行協会が2021年2月18日に発表した高齢者や親族による金融取引の考え方によると、
・認知判断能力の低下した本人との取引においては、顧客本人の財産保護の観点から、親族等に成年後見制度等の利用を促すのが一般的
・成年後見制度等の手続きが完了するまでの間など、やむを得ず認知判断能力が低下した顧客本人との金融取引を行う場合は本人のための費用の支払いであることを確認するなどしたうえで対応することが望ましい
としています。認知症高齢者との金融取引の基本は成年後見制度の利用を原則としていますが、生活費を引き出すためだけに制度を利用し、報酬を払い続けるのも考えもの。制度の利用者が24万人ほどにとどまっているのも納得です。
そのため認知症患者の家族による預金引き出しルールとして、一定の要件を満たすことを条件に認める指針を示しました。いずれにせよ、家族の判断で自由に引き出せるわけではないので注意が必要です。
[参考資料]
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』
一般社団法人全国銀行協会『金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)』
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