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ここにハンコを…生き別れの亡き父の遺産がいつの間にか見知らぬ女性の手に。〈47歳女性〉の前に突然現れた招かれざる訪問者の「まさかの正体」とは?【相続の専門家は見た!】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月14日 10時15分

ここにハンコを…生き別れの亡き父の遺産がいつの間にか見知らぬ女性の手に。〈47歳女性〉の前に突然現れた招かれざる訪問者の「まさかの正体」とは?【相続の専門家は見た!】

(※写真はイメージです/PIXTA)

香さんの元にある日訪れた不動産会社と見知らぬ女性。話を聞くと「香さんの父親名義の建物を解体したいのでハンコをください」とのこと。父親は死亡、土地と建物の借用関係をめぐって香さんの知らぬところで他人に遺産を取り壊されそうになっていたのです。本記事では、使用貸借を行って所有されていた建物が、所有者の死亡によって相続人に相続されなかったケースについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

突然の訪問者がハンコの押印を求めてくる

香さん(40代女性)が相談に来られました。話を聞くと、ある日香さんのもとに全く面識のない不動産会社の人と女性・山田さんが訪ねてきたと言います。香さんが戸惑いながらも事情を聞いてみたところ、2人は次のようなことを説明しました。

「山田さんが遺贈を受けた土地に、香さんの父親名義の建物がある。相続税を払うために土地を売却したいのだが、建物があると土地が売れないため建物を解体したい。しかし香さんの父親は亡くなっていて、建物の相続人は一人娘の香さんだけになるため、解体してもいいという書類にハンコをもらいたい。解体費はこちらで負担する」

困った香さんはどうすればいいかと相談に来られたのでした。

両親は離婚していて父親とは会う機会がなかった

香さんの両親は香さんが生まれて間もなく離婚。母親は香さんを連れて父親の家から出ているため、香さんには父親と暮らした記憶がありません。

母親の話ではそのあと養育費をもらわず、一切の交流がなかったため、父親がどんな生活をしてきたのかまったく見当がつかないといいます。

当然、母親も父親や父親の親族とは交流を絶っていたため、父親が亡くなったことを知らされておらず、今回、不動産会社の人と山田さんの話からようやく知ったのでした。

相続人ではない人が、公正証書遺言で遺贈を受けた

山田さんが遺贈を受けた土地は香さんの父親の妹の名義になっていたのですが、本年、父親の妹が亡くなったため、公正証書遺言で山田さんが遺贈を受けたといいます。

香さんの父親は母親と離婚後、再婚していなかったようで配偶者はおらず、相続人は香さんひとりでした。父親の妹も独身で、配偶者、子どもがいません。親がすでに亡くなっている場合は、相続人はきょうだいとなるため、香さんが亡くなった父親の代襲相続人となるところでした。

けれども、まだ母親は健在ですので、亡くなった父親の妹の相続人はその母親一人となります。

そのような相続を行う予定だったはずが、公正証書遺言により亡くなった妹の財産は、すべて山田さんが遺贈を受けることになったのです。

当社が香さんの依頼をもとに、山田さんから資料を提供してもらい確認したところ、確かにその土地はすでに名義変更登記が終わっていて、父親の妹から山田さん名義に変わっていました。

父親の建物の価値は?

父親名義の建物については築年数15年くらいですが、間取りは一般的なファミリータイプのような需要のあるものではなく、父親の家と、祖母と父親の妹の家の二世帯住宅だったようで、玄関が別々になっている1Kが父親が生活していた部屋ということでした。

建物1棟は父親名義ながら、父親が使っていたのは全体の4分の1、残る4分の3は妹と祖母の家だったようです。建物は40坪、建物の固定資産税評価は800万円分あります。土地は60坪、売る場合は、4,200万円から5,000万円くらいの間の販売価格になりますので、現在の建物を解体して更地にしたほうが売りやすいということのようです。

けれども香さんにとっては、父親の相続や財産のことをなにも知らされていないどころか、父親が亡くなったこと自体初耳でした。このまま財産となる建物も取り上げられるとなるとあまりに理不尽で、すんなりハンコを押していいか、迷うところでしょう。

山田さんが、香さんの建物を買い取るなり、いくらか香さんに費用を払うようにしてもらうなりしないと、決断できないのは無理もありません。

そこで、当社は業務提携先の弁護士と相談し、どのようにするのがいいか検討しました。

土地の使用貸借は、借主の死亡により終了する

土地と建物の所有者が違う場合、建物の所有者は土地の所有者から土地を借りている状態といえます。本来であれば地代や権利金を払って建てるところですが、親族の場合はタダでかりている使用貸借がよくあるパターンです。

香さんの父親の場合も、おそらく使用貸借の状態で土地を無償で借りて、建物を建てたのではないかと推測されます。父親が先に亡くなっていますので、建物を妹に遺贈する手続きをしていれば香さんに話が来ることはなかったのですが、そうした手続きはされておらず、現在も建物の名義は亡くなった父親のままとなっています。

今回法的に問題となるのは、借主である父親が亡くなっていることから死亡により使用貸借契約が終了するか否か、という点になります。

当社の業務提携先の弁護士に確認したところ、この点については、民法597条3項において、「使用貸借は、借主の死亡によって終了する」と規定されており、原則論でいえば、この条項が適用され、借主死亡により使用貸借契約は終了するため、建物所有者は、建物を収去し、土地を明け渡す必要がありますという回答でした。

建物を使用していないため、権利主張が難しい

使用貸借という現状から、法的には原則、権利主張をすることは難しい、という結論になりました。

弁護士の説明では、

「裁判例上、建物所有を目的とした土地の使用貸借の場合、『建物の使用が終わらないあいだに借主が死亡しても、特段の事情のない限り敷地の使用貸借が当然に終了するものではない。』と判断しているものもあります(大阪高裁昭和55年1月30日判決)。

なお、この点については、具体的な事情により裁判例においても判断が分かれているところです。したがって、たとえば、対象となっている建物を相続人である香さんが使用しているような場合には、使用貸借が終了していないとして権利主張をすることができる可能性はあるかと思います。

しかし、もし利用されていないという場合には、『建物の使用が終わった』と評価され、借主死亡により、使用貸借契約が終了したと判断される可能性が相当程度高いものと思われます。」

とのことで、やはり権利主張は難しいと判断しました。そこで、香さんには山田さんからいわゆるハンコ代程度の謝礼を払ってもらい、解体を承諾するほうがいいとアドバイスした次第です。

親族以外の他人が全財産の遺贈を受ける違和感

今回、山田さんは親族ではなく、まったくの他人ながら、公正証書遺言により財産の遺贈を受けています。これは親族である香さんでなくとも、違和感をもつところです。

生前に交流がないとしても、親族に通知もなく手続きをしてしまうところにも意図的なものを感じます。

生前に財産の形成や介護などの貢献をしていないとしても、親族であり、香さんの母は養育費ももらわずにいたのですから、せめて相続のときくらい、まったくの他人に遺産を渡すより「いくらか親族にわたしてあげよう」という配慮がないものか、と残念に思うところです。

残るは亡くなった父親の妹の相続人-父親の母親の権利=遺留分について、侵害請求することを検討してもいいと思えますので、これを機に、香さんにとっては祖母である人物と父親の代襲相続人の立場で、交流を持つようアドバイスをしました。また、そうすることで将来祖母の相続のとき慌てなくてもすむので、香さんにとってはいいきっかけになるはずです。

仮に今回、遺留分侵害額請求をして祖母の財産が確保できるのであれば、祖母の相続財産として受け取ることができるため、今回、もらえなかった財産のかわりになると言えます。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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