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5,000万円も払ったが…72歳・元気な富裕層老婦人、同居の長男嫁に嫌気が差し「高級タワマン老人ホーム」へ入居も束の間。3ヵ月で「高額退居費用」を払い、嫌味女のもとへ戻ったワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月20日 10時45分

5,000万円も払ったが…72歳・元気な富裕層老婦人、同居の長男嫁に嫌気が差し「高級タワマン老人ホーム」へ入居も束の間。3ヵ月で「高額退居費用」を払い、嫌味女のもとへ戻ったワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

マンションの高騰が話題になった2024年ですが、老人ホームも同様です。入居金だけで1億円を超える老人ホームも増えました。しかし、入居の問い合わせも多く、契約率もそう悪くはない現状だそう。高齢者の世界でも格差を感じる世の中です。本記事では、Aさんの事例とともに、高級老人ホームの注意点についてFP1級の川淵ゆかり氏が解説します。

長男夫婦と仲の悪い老婦人が決めた終の棲家

Aさんは72歳の夫を亡くしたおひとりさまです。亡き夫は経営者で資産家でしたが、Aさん自身も役員でしたので、かなりの財産を所有していました。Aさんには2人の息子がおり、いまはこの2人に会社を任せてAさんは引退しています。年金は月に19万円。加えて十分な財産があるため、悠々自適の老後を送る、人から羨まれるような暮らしぶりをしているようにみえますが、ひとつ、大きな悩みが。長男の嫁との関係です。

Aさん夫婦はもともと長男家族と同居しており、夫の生前中はなんとか長男夫婦や孫たちとやっていけましたが、現在は自分だけが「仲間外れ」にされているような気持ちに。気の強いAさんは嫁や長男と言い合いになることも少なくなく、部屋に閉じこもったり外出の回数が増えたりするようになりました。

Aさんと仲がいい身内は、亡くなった実姉の娘(姪)のBさん(50歳)です。Bさんも早くに夫を亡くしていますが、アパート経営等の収入で何不自由なく暮らしています。暮らしに余裕があるという意味で2人には共通点がありました。Bさんは母親のようにAさんを慕ってくれて、文句もいわずAさんの外出に付き合ってくれたり電話で愚痴を聞いてくれたりしていました。

高級老人ホームの存在を知り…

そんなある日、Aさんはテレビで「入居資金が最高6億円、月々の利用料が55万円(食事代別途)」というシニア向け超高級タワーマンションのニュースを見ます。大浴場をはじめとする豊富な共有施設はもちろん、最上階部分のダイニングルームでは某有名ホテルのシェフが毎日3食作る食事を堪能でき、都心を一望できる高階層の部屋からの眺めも最高で、高額ながら人気だそうです。

そんなニュースを見たAさんは「将来寝たきりになったときに嫁や息子は看てくれないだろう」と考え、自分も高級シニアマンションに入ることを思いつきます。Bさんに相談して入居施設を一緒に選んでもらいました。

Aさんが入居を決めた施設は都心から離れた海の見える高層シニアマンションです。入居金に5,000万円ほど支払い、毎月の支払いも30万円程度かかります。いままでの住まいからはだいぶ距離がありましたが、長男夫婦とは仲良くもなかったため、Aさんは「関係ない、私の勝手だわ」と、入居が決まるとさっさと出て行ってしまいました。

Aさんが入居したホーム内もカラオケに図書館や大浴場など共有設備は充実しており、不自由はありません。積極的なAさんは地元にあるカルチャーセンターでの俳句の会にも入り、老後の生活を楽しむようになります。

至れり尽くせりの高級老人ホームを退居…その理由

3ヵ月ほど経ったころ、仲良くなったある一組の入居者の夫婦から突然「私たち、このホームを出ようと思うの」と告白されます。Aさんは驚きました。

ご主人は「2年ほどここで暮らしましたが、たしかに毎日は充実しています。食事も美味しいし、時間を費やして楽しむ場所もあり不満はありません。でも『張り合い』がなくなってしまったんです。もう70歳も過ぎたし老人ホームに入ったほうがいい、と思って入居したんですが、まだまだ体は動くし頭も働くと思っています。この建物の中で生活は十分に成り立ちますが、気が付けば全然外に出ない日が何日もあるんですよ。会社はとっくに息子に任せてしまいましたが、自分はまだなにか社会に貢献できるのではないか、と最近考えるようになりまして。外に出て、また心機一転、頑張ってみようと思うんです」といいます。

Aさんは思わず「奥さんはいいんですか?」と聞いてみました。奥さんのほうは「2人で四六時中一緒にいるのもなかなか辛いものよ。それに主人の元気のない顔を見ているとこっちまで暗くなっちゃうわ」といいます。

立派な施設でもやはり老人ホーム。当然、いろいろな人がいます。退居を決めた夫婦のように元気な人ばかりではありません。「前はできたのにね」こんな会話がいつしか日常となっています。体の自由が利かなくなった老人たちを見る、とAさんも「自分もやがてはこうなるのか」と思ってしまい、仲良しだった夫婦の退居を心から寂しく感じました。

ある日、俳句の会で

そんなある日、Aさんが参加している俳句の会でトラブルが起きます。Aさんがほかの人の作品にちょっと意見したところ、「やっぱり裕福な人の考え方は違うわねぇ」「タワマンなんて高い所からものを見ている人は発想がちがうのよ」と、数人の人たちから茶化されたようにいわれてしまいました。Aさんは、この人たちは私のことをそんな風に見ていたんだ、とショックを受けます。

それからというもの、Aさんは行き場のない孤独感を感じるようになり、自室に閉じこもるようになります。ある日、AさんはBさんに電話をして、泣きながら寂しさを訴えました。するとBさんは「気丈な叔母様が泣くなんてやっぱり年なんじゃないの? 合わないなら出ちゃえばいいじゃない」と後押しされました。

老人ホームの退居費用

終の棲家と決心し入居した老人ホームでもAさんのようなケースで途中退居を決める人達もいます。しかし、退居にはそれなりのお金がかかりますから、入居時に高額な支払いをしたとしてもいろいろな金額が差し引かれることになります。

特に高額の老人ホームでは、入居費用も高いですが、退居費用も高くなります。施設によって規則も違ってくるため、入居の際は必ず退居時の費用についても確認しておきましょう。

代表的なものには、原状回復のために部屋等の修繕や清掃にかかる費用があります。入居時に納めた入居一時金から差し引かれますが、不足であれば追加で支払わなければなりません。また、入居していた期間に応じて、入居一時金の一部が施設の維持や管理のための費用として償却されるため、入居期間が長かったり設備を多用したりした場合には、金額が大きくなってしまいます。

一般的には数十万円ですが、高級老人ホームになると数千万円が差し引かれることもあり、ケースによっては入居時に支払った一時金が全額戻ってこないこともあります。

長男夫婦からは嫌味連撃も…

わずか1年も住まなかった高級老人ホームですが、Aさんは悔いは感じませんでした。

ですが、家に戻ると息子夫婦からはさんざん嫌味を言われました。「自分から決めて高い老人ホームに入ったのにもう出てくるの?」「どれだけ無駄使いすれば気が済むんだよ!」「入るときも出るときも全然相談もなくて勝手なのもいい加減にしなさいよ! もうお義母さんの面倒はみないからね!」Aさんは寂しさを感じ、姪のBさんに連絡しました。

すると、「こっちで一緒に暮らさない? 叔母様1人の面倒くらいみて差し上げてよ」と言ってくれたのです。Bさんがいて本当によかったと感じ、これからの暮らしに胸を膨らませるのでした。

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所代表

ファイナンシャルプランナー

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