騙されるな、おやじ!南国帰りの〈商店街理事長・75歳父〉の告白に〈3人の息子・娘〉が仰天。「目を覚ませ」と必死に説得する相続事情
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月14日 7時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
いつかは誰もが直面するだろう親の死。それに伴い、必ず相続が発生します。相続ではお金はもちろん、いろいろな感情が絡み合い、トラブルに発展することも珍しくはありません。特に将来の相続に対し「新たな登場人物」の存在は、トラブルの火種になりがちのようです。
駅前にビルを5棟所有する、地元では有名な不動産王
駅前商店街を中心にビルを5棟所有する山田真さん(仮名・75歳)。元々は先代が紳士服専門店を創業。2代目の真さんは事業を拡大し、婦人服専門店、子ども服専門店など、駅を中心に5つの服飾店を経営していました。しかしバブル崩壊あたりからビジネス環境は一変。ファストカジュアルの台頭などもあり、徐々に客足は鈍っていったといいます。
ちょうど3~4階建てだった店舗も古くなり建て替えのタイミング。そこで5つの店舗を一気に閉店し、8~10階建てのビルに建替え。1~2階は店舗ですべてテナント貸し。2~3階以上は貸事務所や賃貸マンションという構成にして、業態を一気に不動産会社へと変更したところ大成功。どのビルも駅チカということもあり常に満室経営が続いていました。
不動産会社といっても管理等はすべて外部に委託していて、実質、単なる資産管理会社。特に仕事をすることなく、50代にして悠々自適な生活。その代わりに熱を上げていたのが商店街活動。若くして理事長に就任し、それまで秋に1回だった商店街の祭りを春・秋の年2回に。スタンプラリーを企画したり、日曜日には歩行者天国にしてみたりと、商店街振興に尽力。不動産王にして名物理事長と、地元ではちょっとした有名人になったといいます。
商店街振興にのめり込んだのは、ただ暇だったからだけではありません。不動産会社へと業務転換し、成功が見え始めていたころ、結婚25年の愛妻を亡くした真さん。心にぽっかり空いた穴を埋めるために忙しくしていようと、商店街活動に力を注いだのでした。
海外旅行のお土産を渡されるのと同時に、75歳父、衝撃告白
そんな真さんには3人の子どもがいました。愛妻を亡くしたのは子どもたちが皆、社会人、大学生となったタイミング。「家のことは何もできないから、子どもたちが小さいころに妻が亡くなっていたらエライことになっていた」と真さん。愛妻は亡くなるタイミングにも気を遣っていたのかな……と振り返ります。
また子どもたちにジリ貧の服飾店を継がせるようなこともなく、一方で“稼いでくれるビル”を遺すことができ、「もう心残りはない。まだまだ生きるけど(笑)」と真さん。
ビル5棟のうち2棟は売却し、税金の支払いなどにあて、残るビルは子ども1人に1棟を遺す……これが万一のことを考え、すでに作成した遺言書の中身でした。
将来に関しても、全方向的にパーフェクト。そう誰もが思っていましたが、ある日、そんな安定が覆ることがおきます。真さんの呼びかけで、3人の子どもたちが実家に集合したときのこと。真さんは「この前、海外に行ってきたからお土産」と、子どもたちにお土産の入った袋を渡します。商店街仲間と年に何回か旅行に出かけていることを知っていた子どもたち。てっきりいつものだと思い込んでいましたが、ここで真さんが衝撃的な告白を始めます。
――実は再婚しようと思っている
――45歳年下のフィリピーナ
――向こうの家族に挨拶に行ってきたんだ
「うっ、嘘だろ、おやじ。45歳年下ということは……30歳!?」と明らかに狼狽する長男。弟や妹の顔も驚きの表情を浮かべます。
――こんな冗談あるか
――あと連れ子がいる
――上から12歳、10歳、5歳……仲良くしてやってくれ
母(真さんの妻)が亡くなり、ずいぶんと経ちますし、真さんもいい大人。親の新たな門出に、本来であれば反対などしません。しかしあまりの歳の差に、子連れの外国人……子どもたちも口を出さずにはいられません。
――騙されるな、おやじ!
――冷静になれよ、45歳も年下だぞ
――そうよ、目を覚まして!
警察庁『令和6年9月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について』によると、SNS型ロマンス詐欺は今年1~9ヵ月で認知されているだけで2,570件、被害額は約271.0億円に達し、昨年から大きく件数も被害額も増えています。
このような事情があるだけに、どんなに「詐欺!? そんなわけ、あるわけがなかろう(笑)」と父が自信を覗かせたところで、子どもたちは簡単に信じることはできません。また相続に大きく影響するだけに、父の幸せを単純に祝うことなど、子どもたちにできるわけがありません。
相続の際、「再婚する妻の相続分」をできるだけ少なくするには
相続トラブルに発展しやすいパターンのひとつに「再婚」が絡むものがあります。
民法で相続人となることができると定められた相続人を法定相続人といい、配偶者と血族に分かれます。そのうち配偶者は何があろうと相続人となります。血族には優先順位があり、第1順位は子ども、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹。第1順位がいなければ第2順位、第2順位もいなければ第3順位が相続人となります。
配偶関係になければ相続人にはなれないので、離婚した場合、元妻には相続権はありません。しかし元妻との間に子どもがいれば、その子どもたちは相続人になります。
同じように再婚した際、新しい妻には相続権がありますが、その連れ子には相続権はありません。ただ養子縁組などをした場合は実子と同じように相続権を持ちます。
今回の事例では、真さんの再婚前の状態では、相続人は3人の子どもたち。遺産配分は1/3ずつとなります。再婚したらどうでしょう。新しい妻は遺産の1/2。子どもたちは残りの遺産を3等分、つまり遺産の1/6ずつとなります。さらに連れ子と養子縁組した場合、血族と同じ扱いとなるので新しい妻は遺産の1/2。子どもたちは残りの遺産を6等分、つまり遺産の1/12ずつとなるわけです。
再婚するかどうかは父の自由とはいうものの、相続が発生した際には受け取る遺産が大きく減るかもしれないので、簡単には承諾できるものではないでしょう。また事例のように詐欺を疑うのも無理のない話です。
再婚は仕方がないにしろ、新しい妻の取り分をできるだけ下げたいというなら、改めて遺言書をつくってもらうのも手。その際、気を付けたいのが遺留分。これは相続の際に最低限もらえる取り分のことで、法定相続分の半分が認められます。
事例であれば、新しい妻の取り分は1/4まで下げ、残り3/4を子どもたちで分割するようにはできるということ。遺留分を侵害した遺言書は新しい争いの火種になりかねないので、気を付けたいところです。
[参考資料]
警察庁『令和6年9月末におけるSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について』
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