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パート社員を解雇後「不当だ!」強面第三者から示談金を求められ…サイン寸前で踏みとどまるも、絶体絶命【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月25日 14時15分

パート社員を解雇後「不当だ!」強面第三者から示談金を求められ…サイン寸前で踏みとどまるも、絶体絶命【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

問題社員から「不当解雇だ」と主張されてしまったら、会社側は毅然とした対応が求められます。トラブルが激化してしまうと、問題社員からの慰謝料請求や、ネットに拡散され風評被害、他社員からの信頼を失う危険性などもあります。そこで今回は、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、パートからの不当解雇を理由とした示談金請求について、寺岡健一弁護士が解説します。

パート社員を解雇後、強面の第三者がやってきて…

相談者は小さなお店を経営しており、パート社員を1人雇い、2人で営業をしています。パート社員はとてもよく働いてくれますが、労働条件に不満を持っているようで、度々交渉されていました。相談者はパート社員の希望に応えようと努力してきましたが、あるときから要求が過剰になり始め、声を荒らげて相談者に伝えてくるようになりました。相談者は真摯に対応してきましたが、次第に耐えきれなくなり、パート社員に「辞めてもらいたい」と伝えました。

すると、パート社員の友人を名乗る第三者が現れ、「これは不当解雇だ。録音もあるし、当人は心療内科に通っている」と主張し、示談金を請求してきたのです。その方はとても怖い雰囲気であったため、相談者はやむなくその流れに応じてしまい、示談書にサインをする寸前まできていますが、相手側が計画的なゆすりを仕掛けてきたようにしか思えず、躊躇しています。

今回に限らず、交渉するとなると「当人は精神的に参っている」という理由で必ず第三者が出てきます。相談者は、これまですべていいなりになっており、相手側の言い分を飲むのが辛い状況です。

そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。

(1)このような場合、相手が「不当な要求をしている」と言えるのか。

(2)もし不当解雇に該当した場合、店側はなにかしらの罰則を受けることになるのか。

(3)解雇の正当性を主張したい場合には、どのような証拠が必要か。

示談金の要求方法が不当の可能性あり、脅迫の証拠が肝

(1)「不当な要求」か

「不当な要求」といった場合、要求する「内容」が不当という場合と「方法」が不当という場合があります。今回のケースであれば、解雇が違法と認定される可能性があるため、「内容が不当」とはいえないでしょう。

他方で要求する「方法」は不当といえます。示談金請求の代理は弁護士しかできないので、友人を名乗る第三者が代理することは弁護士法違反となります。また、そのような人との合意であれば後から蒸し返されたり、示談金を横領されたりする危険もあります。弁護士の代理人でない以上、相手にするべきではないでしょう。

(2)不当解雇とされた場合の罰則

不当解雇として解雇が無効になると、就労をしてもらっていなくても、復職までの期間の賃金を支払う義務が生じます。解雇から判決までは2年くらいかかる場合もあるので、その期間の賃金であれば数百万円になります。使用者にとってはかなり重い負担となるでしょう。

(3)解雇の正当性を主張する証拠

相談の事例では、「労働条件についての過剰な要求」と「声を荒らげての要求」が解雇の理由になっているようです。労働条件の改善を求めること自体には違法性はないのでそれを理由とした解雇であれば正当性は認められません。一方で、「声を荒らげての要求」などのような、脅迫的な手段での交渉については程度によっては解雇の理由となり得ます。そこで、交渉の内容などを記録にとどめたり、指導の記録を記録にとどめたりするなどして、解雇が正当であることの証拠を残す必要があります。

いずれにしても、解雇の後から証拠を準備することは困難ですので、解雇を考える時点から適切な手続や証拠の確保を考えながら進める必要があります。

解雇するには合理的な理由を立証する必要がある

経営者の皆さんがご存じのとおり、解雇を行うことは簡単ではありません。解雇するには解雇の「合理的な理由」が必要であり、そのハードルはかなり高いです。

さらに、解雇の有効性を争われた場合、解雇に合理的な理由があることを「使用者側」が立証する必要があります。たとえば「社内で何度も暴力事件を起こす人」がいたとしても、訴訟でその事実を立証できなければ違法な解雇として解雇無効となります。そして、労働者から訴訟提起されてから証拠を集めても足りません。解雇を行う時点から、適切な手続を踏みつつ、証拠を確保していく必要があります。

また、解雇ではなく退職勧奨(説得)でやめてもらう場合でも、その方法が違法なものとならないように注意する必要があります。この場合にも、単に気を付けるだけではなく、いざ訴訟になった場合に適法性を主張できるように記録を残すなどの準備が必要になります。

解雇は労働者にとって生活への影響が大きいため、訴訟提起などがされる可能性も大きいです。従業員の解雇が必要になるかもしれない場合には、弁護士と相談しながら進めることが重要になります。

寺岡 健一

弁護士

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