「ずっと住んでいい」から一転「アパートは売りに出した」家主が突然退去を迫り…住み続けたい借主がもらえる“妥当な立退料”【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月26日 14時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
賃貸アパートやマンションで暮らしていると、家主の身勝手な振る舞いによって思わぬ不利益を被ってしまう場合があります。もし家主の一存で突然退去を迫られるようなことがあれば、賃借人としては安心して生活することができません。そこで今回は、実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、家主に退去を迫られたときの対処法について、寺岡健一弁護士が解説します。
アパートの修理を依頼すると退去請求され…
相談者は、住んでいる賃貸アパートの雨漏りがひどく、家主に修理をお願いしたところ、突然退去を迫られてしまいました。このアパートは雨漏りのほかにも、アンテナの老朽化でテレビが映らない、インターフォンが壊れている、すきま風や雪が室内に入る等の不具合がありますが、相談者は事情があり引っ越しができないため、このアパートに我慢して住んでいる状況です。
相談者はもともと定期借家で契約していましたが、契約満了後、「ずっと住んでいい」とのことで2年更新の普通借家契約に切り替えました。当初、家主は「アパートに住むつもりはなく売却したい」といっていたにも関わらず、立ち退かせることを口実として現在は「このアパートに住みたい」といっています。
また最近になり、家主から「アパートを売りに出しているので不動産屋と話をしてください」とメールが来ました。相談者は自分が住んでいるにも関わらず、勝手に売りに出されたことから、より一層不信感を募らせています。
相談者としては不具合を修理してもらい、これからも住み続けたいと考えています。またやむなく退去するにしても、1年以上先にしてほしいと思っています。そこで、ココナラ法律相談「法律Q&A」に次の3点について相談しました。
(1)このような場合、家主からの立退き請求は認められるのか。
(2)このような場合、相談者に修繕義務があるのか。
(3)もし退去する場合、相談者は引っ越し費用や損害賠償金などを請求したいと考えているが、実際にはどのような費用を、どれくらい請求できるのか。
(1)立退きの可能性は低い、退去の場合は立退料が大きくなる可能性も
相談のケースでは、家主が建物を使用する必要があるなどの正当事由がないと考えられるため立退き請求が認められる可能性は低いでしょう。
借地借家法の規定により、賃料などを適切に支払っている限り、家主側から契約を解除することはできません。家主側からの契約解除をするためには、家主が建物を使用する必要があるなどの正当事由がある場合に限られます。
(2)修繕義務
家主には借主が建物を使えるようにする義務があるため、建物が壊れていれば修繕する義務があります。
相談の事例では雨漏りなどのように、使用ができなくなるような問題が発生しているので家主が修繕する義務があります。ただし、契約内容などで、借主が修繕するという特別な規定などがあればそれによることになります。一度手元の契約書を確認してみるべきでしょう。
(3)立退料をどれくらい請求できるか
家主から明渡を求める場合、明渡の正当事由が弱い場合には、立退料を支払うことで正当事由を補完することができます。
この立退料は、家主側の建物使用の必要性や、借主側の退去による不利益などを総合考慮して決められますので、事案によってかなり差が生じます。ネットを検索すると「6ヵ月分の家賃」などの記載が多いですが、これよりも多くなる場合もあります。
相談の事例であれば、家主が建物を使用する予定はなく、売却するつもりですので正当事由が弱く、立退料の金額は大きくなる可能性があります。
立退料の交渉は借主側が主張することが重要
今回の相談は居住用不動産のケースでしたが、テナントなどの事業用不動産の場合も同様の問題が発生します。事業用不動産では、建物を使用できないことによる損害も大きくなりますし、建物を明け渡して移転することによる損失も大きくなります。
たとえば、人気のお店を別の場所に移転する場合、顧客に移転先を周知してもらって移転前と同じ収益を得るためのコストや、周知されるまでの売上の低下などによる損失が発生します。これらの損失も立退料に影響されるので、事業用不動産の場合には立退料の額も大きくなりやすいといえます。
一方で、これらの損失は黙っていれば勝手に裁判所が認定してくれるわけではありません。借主側がしっかりと資料を示しながら主張立証する必要があります。家主からいわれたから簡単に明け渡すのではなく、弁護士とも相談のうえ、建物を使用する必要性などをしっかりと主張していくことが重要です。
逆に貸主側としては、簡単に退去を求められないことや、立退料の負担が発生することを前提として、「どれくらいの賃料であれば貸してよいのか?」を考える必要があるでしょう。
寺岡 健一
弁護士
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