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「103万円の壁」「130万円の壁」が話題だが…そもそも「年収の壁」って何?47歳主婦が最終的に選んだ働き方は?【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月15日 11時15分

「103万円の壁」「130万円の壁」が話題だが…そもそも「年収の壁」って何?47歳主婦が最終的に選んだ働き方は?【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

夫婦のうち、どちらかがフルタイムで働いていても、もう一方はパートやアルバイトなどで収入を得、生活費を補塡する世帯もあります。その場合、フルタイムで働いているほうの扶養に入っておくほうが配偶者控除などを利用できるため、できるだけ扶養の範囲内の収入に収めることを意識している人も多いのではないでしょうか。国会でも、年収が一定額を超えると税金や社会保険料の支払いが必要となり、働き控えを招くことにつながる「年収の壁」をめぐり議論が活発化しています。本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、年収の壁の種類やそれに対する政府の取り組みについて事例とともに解説します。

収入によっては税金や社会保険料が発生!?パートやアルバイトはどのくらいまで抑えるべき?

47歳の和美さんには夫と2人の子どもがいます。子どもはそれぞれ大学進学そして高校進学を控えており、これから教育費が一番かかる時期でもあることから、昼間の時間をパートやアルバイトなどに充て、世帯の収入を増やそうと考えています。

夫の年収は約800万円ですが、住宅ローンの返済もまだ残っていることから、教育費の負担をできるだけ減らしたいと思っているのです。

ただ、パートやアルバイトで収入を得る場合、収入によっては和美さん本人に税金や社会保険料が発生すると聞き、どのくらいの年収に落ち着けるか悩んでいます。

年収の壁とは

一口に年収の壁といってもその内容はさまざまで、以下の6つに分けられます。ここではそれぞれの年収の壁の内容について解説します。

1. 100万円の壁

100万円の壁とは、所得税および住民税が課税されないボーダーラインです。なぜなら、給与を受け取った場合、年間に受け取った給与から給与所得控除が受けられるからです。

所得控除額の最低額は55万円です。100万円から55万円を差し引く残りは45万円となり、所得控除額の最低額は55万円です。100万円から55万円を差し引く残りは45万円となり、住民税の所得割および均等割ともに非課税になります。もちろん、所得税もかかりません。

しかし、年収が101万円になると、101万円-55万円-43万円(住民税の基礎控除額)=3万円に対して住民税がかかります。

住民税は所得に10%を乗じて求める所得割と、所得に関係なく課される均等割があり、均等割額は多くの自治体で5,000円もしくは5,500円と決められています。

仮に均等割額を5,000円とした場合、和美さんが支払う住民税額は30,000円×10%+5,000円=8,000円です。

そのため、配偶者控除の適用を受けたい場合や、所得税だけでなく住民税の負担もなくしたいと考える人は年間の給与収入を100万円以下に抑える必要があります。ただ、自治体によっては課税対象になるケースもありますので、事前に確認しておきましょう。

2. 103万円の壁

年収の壁として1番よく聞くのがこの103万円の壁ではないでしょうか? 103万円の壁とは、所得税が発生するボーダーラインを指します。

例えば、年収が103万円あったとして、所得控除額55万円を差し引くと48万円です。所得税における基礎控除額は48万円のため、年収が103万円以上になってしまうと所得税が発生します。

また年収が103万円を超えると、配偶者控除の適用を受けられなくなってしまいます。ただし、配偶者特別控除は適用されます。

例えば、和美さんが104万円パートで稼いだ場合(月収約86,000円)、課税所得金額は1万円です。それに対する所得税率は5%ですので、和美さんは500円の所得税を払わなければなりません。また年収が104万円の場合の住民税は11,000円です。

3. 106万円の壁

106万円の壁は、所得税だけでなく、社会保険料の負担が発生するボーダーラインです。具体的には、以下の要件に当てはまる場合は、社会保険料の負担が発生します。

・1週間の労働時間が20時間以上である

・2ヶ月以上連続して勤務している

・1ヶ月の収入が88,000円以上である

・勤務している事業所の従業員数が51人以上である

・学生ではない

社会保険料は標準月額によって決まり、仮に1ヶ月の収入が88,000円となった場合には、健康保険料と厚生年金保険料の合計である12,443円が毎月徴収されます。40歳以上の場合は介護保険料も徴収されるため、注意が必要です。

4. 130万円の壁

130万円の壁は、配偶者の社会保険の扶養から外れてしまうボーダーラインです。配偶者の社会保険の扶養から外れてしまうと、自分で国民年金保険料および国民健康保険に加入しなければならず、健康保険証も家族とは別のものになってしまいます。

例えば、和美さんが130万円を稼いだ場合、毎月16,980円の国民年金保険料と年間99,600円の国民健康保険料を支払わなければなりません。その他、所得税や住民税も当然発生します。

5. 150万円の壁

150万円の壁とは、配偶者特別控除の額が減少しはじめるボーダーラインです。そのため、控除を受ける納税者本人の税負担が増えてしまいます。

また、配偶者特別控除の額は控除を受ける納税者本人の合計所得金額によっても異なりますので注意しておきましょう。

6. 201万円の壁

201万円の壁とは、配偶者特別控除の適用が受けられなくなるボーダーラインです。年収が201万円以上にあると配偶者特別控除が適用されません。

年収の壁に対する政府の取り組み

政府は上で紹介した年収の壁のうち、106万円の壁と130万円の壁について支援を強化する仕組みを取り入れています。

1. 106万円の壁について

106万円の壁とは、上で説明したとおり社会保険料の負担が発生するボーダーラインです。

年収が106万円以上になることで社会保険料の負担が発生するため、できるだけ残業を少なくする人も多く見られることから、政府は「社会保険適用促進手当の支給」や「基本給の増額」、「所定労働時間の延長」などの取り組みを行った企業に対し、労働者1人あたり最大50万円を助成するとしています。

2. 130万円の壁について

年収130万円の壁は、配偶者の社会保険の負担から外れるボーダーラインです。

そのため、繁忙期など収入が一時的に上がった場合でも、「事業主がその事を証明する」ことによって引き続き配偶者の扶養でいられる仕組みを作っています。

自分に一番合っている働き方を考える

年収の壁の内容を知ることで、税金や社会保険料の負担が発生することや、社会保険の扶養から外れてしまうボーダーラインが分かります。特に103万円の壁と130万円の壁については、世帯の手取りに大きく影響するところでもあり、年収をどのくらいに抑えるかの目安になるでしょう。

ただ、社会保険料の負担が発生するということは社会保険に加入することを意味するため、将来の年金額が上がるメリットも受けられます。

和美さんは専門家に相談し、考えた末、年収を130万円未満に抑えられるような働き方を選択しました。それなら配偶者特別控除も受けられますし、夫の社会保険の扶養のままでいられるメリットがあります。扶養から外れることによる自分で国民年金保険料を支払ったり、国民健康保険の被保険者になり、国民健康保険料を支払ったりすることを考えたうえでの決断です。

和美さんはまだこれからパートもしくはアルバイトを始める段階です。今後の夫の収入や、年収130万円を超えた場合の保険料の負担額、夫の収入に対する影響度などを考えながら、今後も最適な働き方を考えていく予定です。

新井智美

トータルマネーコンサルタント

CFP

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