実家に引きこもる34歳元サラリーマン…外出は近所のコンビニへ月3回程度「もう、生きているのもツライ」と絶望の10年。それでも社会復帰を実現した62歳母「きっかけのひと言」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月17日 7時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
内閣府の調査によると、国民の50人に1人は引きこもり状態にあるとか。年代によって引きこもり状態になる理由はさまざまですが「うまくいかない人間関係」は大きな要因になることも多いようです。そんな引きこもりから、どうしたら脱出できるのでしょうか。
新卒入社した会社で人間関係に悩み…引きこもり
塾講師として働く中島翔太さん(仮名・34歳)。実は10年ほど実家に引きこもる生活をしていたといいます。それまで、都内有名大学に進学し、就職も人気企業と、順風満帆な人生そのもの。しかし、初めての挫折を味わいます。
――入社した会社で、うまく人間関係をつくることができなかった
直属の上司とは折り合い悪く、同期の間でもどこか浮いている感じがしたという翔太さん。知らず知らずにためこんでいたストレスからか、ある日、急に朝の通勤電車に乗るのが怖くなったといいます。「きちんと病院に行っていたら、病名がついていたかもしれない」といいますが、病気と認めるのも怖く、結局そのまま。1週間後には会社を辞める意思を伝え、そのまま退職。以来、引きこもりの生活が始まったといいます。
――父も母も、最初はすごく怒っていました。「そんないい加減なことをしたらいけない」とか「病院にいって治してもらえ」とか。そんな父と母を避けるよう、父と母がいるときは寝る、いないときに起きるというサイクルになりました
どうすることもできないと感じたのか、翔太さんの父親と母親は、とにかく翔太さんのそばにいてただ見守る、ということに徹するようになったといいます。
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)』によると、15~39歳の引きこもり傾向のある人に現在の外出状況になった理由を尋ねたところ、調査時期からトップは「新たなコロナウイルス感染症が流行したこと」で31.7%。続く理由が「人間関係がうまくいかなかった」で16.5%。「病気」「退職した」「職場になじめなかった」「就職活動がうまくいかなかった」と続きます。また「特に理由はない」も20.1%と、自分でも引きこもりの原因はわからない、というケースも多いようです。
自分だけが取り残されているという現実に直面し、状況が一変
さらに調査では「あなたは今までに、社会生活や日常生活を円滑に送ることができなかった経験がありました か。または、現在、社会生活や日常生活を円滑に送れていない状況がありますか」と困難に直面した経験について聞いています。仕事や職場においては、「上司や同僚との関係が悪い」が最も多く23.2%。「仕事の量や内容が自分の能力を超えている」「仕事が自分に向いていない」「本当に自分がやりたい仕事ではない」「職場になじめない」と続きます。
翔太さんの引きこもりの生活はどのようなものだったのでしょうか。
――はじめのほうは、ひたすら自室でゲームをして、それ以外は寝ていました。外出は月に2~3回程度。近所のコンビニに行くくらいです。周囲の目も気になるので、深夜から早朝にかけて
――親が口うるさくいわなくなってからは、家事を手伝うこともありました。私が食事の用意をするようなことも
変化が訪れたのは、引きこもり状態になってから10年目。高校のころに仲のよかった同級生が結婚をしたということを風の噂で知りました。このとき、自分は10年間引きこもっていたこと、自分だけが取り残されていることが急に現実のものとして押し寄せてきたといいます。そして「自分は生きている価値はないのではないか」「このまま生きているのもツラい」と絶望感に打ちひしがれることになりました。一方で、「どうせ死ぬなら、もう1回、外に出てみようか」と、ポジティブとネガティブが入り乱れる、何ともいえない感情が湧いてきたといいます。
――そのとき母が「外に行くなら一緒に行こうか」といってくれたんです。その言葉を聞いて、母も、そして父も、ずっと私を見守ってくれていたことを実感し、涙が止まらなくなりました
家族の支えを身に染みて実感したのをきっかけに翔太さんはカウンセリングを受けるようになり、半年後には少しずつ仕事をするように。そして今はフルタイムで塾講師をしているといいます。
また引きこもり状態になった当初、父は53歳、母は52歳でしたが、当然、父も母も10歳年を重ね、気づけばもうすぐ年金世代。「これからはたくさん親孝行をしないといけませんね」と翔太さん。
前出の調査においても、「状態が改善したきっかけや改善に役立ったことは何だと思いますか。」の問いに対して、「家族や親せきの助け」が最も多く50.2%。翔太さんの場合も、10年間に渡り、ただ寄り添い続けた親の存在が、引きこもり脱出のきっかけになりました。
厚生労働省では、ひきこもりに特化した専門的な相談窓口「ひきこもり地域支援センター」をすべての都道府県や指定都市に設置しています。またより住民に身近なところで相談ができ、支援が受けられる環境づくりを目指し、「ひきこもり地域支援センター」の設置主体を市町村にも拡充。さらにひきこもり支援の核となる、相談支援・居場所づくり・ネットワークづくりを一体的に実施する「ひきこもり支援ステーション事業」(令和6年度110自治体)を開始するなど、引きこもり支援を強化しています。
引きこもりにおいては、引きこもりの当事者はもちろん、その家族も社会から孤立しがち。最悪の結末を迎えてしまう要因になっています。さまざまな支援が展開されているので、引きこもり家族は外に助けを求めていくことが第一歩。また、引きこもり家族を孤立させないよう、“社会の目”も必須です。
[参考資料]
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