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誰のおかげだと思ってんの?地主の父からの遺産10億円超の大部分を相続しようとする苦労知らずの〈2代目・50歳弟〉に不信感…20年間、遺産分割で揉めている〈55歳長女〉がついに動いたワケ【相続の専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月18日 11時15分

誰のおかげだと思ってんの?地主の父からの遺産10億円超の大部分を相続しようとする苦労知らずの〈2代目・50歳弟〉に不信感…20年間、遺産分割で揉めている〈55歳長女〉がついに動いたワケ【相続の専門家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

20年前に父が亡くなり、不仲な弟と難航しながらも無事遺産分割協議をして、貸し駐車場になって55歳の真美さん。20年の間、増額していく固定資産税に耐えながらも、父が苦労して残してきた土地を守ろうと、必死に駐車場の貸し出しを行ってきた真美さんでしたが、ついにその年間収入のおよそ半額が固定資産税に取られてしまうようになってから、相談に来られました。本記事では、賃貸住宅を建てるなど、土地を保有しながら固定資産税を減額する工夫について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

父親から220坪の土地を相続した

真美さん(55)の父親が亡くなったのは、20年前。父親の財産は10億円を超えていましたが、そのほとんどが土地で、アパートを建てたり、店舗を建てたりして賃貸事業をしていました。

長女の真美さんは、嫁いで実家を離れていましたが、父親が守ってきた土地は5つ下の弟に任せるだけでなく、自分でも相続して守っていきたいという思いで、220坪の土地を希望して相続しました。

賃料の駐車料金の4.3ヶ月分は、固定資産税(年間160万円)の支払いに取られてしまう

それから20年。その土地は、隣接する店舗を運営する法人に駐車場として一括貸しています。駐車場の月額利用料は37万円なのですが、固定資産税は年間160万円。実に、駐車料金の4.3ヶ月分が固定資産税の支払いに取られてしまうのです。

さらに今年、3年毎の固定資産税更改の年にあたり、年額2.7万円も増額されました。

この、固定資産税と賃料のバランスについて、どのように対処するのがよいかご相談いただきました。まず、今回の固定資産税の増額分については、駐車料金を改定し、借主の法人に負担してもらうようアドバイスしました。

ちなみに父親の相続時のいきさつは?

真美さんの父親は代々地主さんで、貸家や貸店舗を所有する不動産賃貸業をしいいました。真美さんの生みの母親は若くして亡くなったので、その後、現在の母が後妻として来ました。真美さんと弟が幼い頃のことだったので、育ててくれたことを感謝しているとのこと。

父親が元気なうちは、家の一切は父が仕切っていましたが、晩年は、高齢になったことから、賃貸業を弟に任せるようになっていました。それまで会社務めをしていた弟も、父親の後を継ぐ名目で会社を辞め、父の跡継ぎとして、不動産賃貸業の会社に入社。現在は、社長になっています。

そのような状況の中、父が亡くなったのですが、遺言書がなかったので、遺産分割協議をする際、不協和音が響きました。真美さんはすでに嫁いだ立場で、相続人は実家に住む母親と弟の3人です。母親は一緒に住む弟夫婦に気兼ねがあるのか、相続の手続きを仕切ったのは、弟だったのです。

弟の頼む税理士が相続には不慣れで…

父の代から賃貸業の申告などの依頼をしていた税理士さんがおり、実家にいる弟も、その方を全面的に信頼していたことから、相続税の申告もその先生に依頼するとのこと。

真美さんにすれば、嫁いでから実家の様子がわからないので、弟が仕切るのは仕方がないとは思いつつも、全体像がわかりません。また、弟が依頼した税理士はどうも相続には慣れていないようで、不安が残ります。

その件について、今回ご相談に来たというわけです。自分が納得する相続をしたい、できるだけ節税して、父の財産を残したいという気持ちです。弟にもこちらを推薦いただき、申告もこちらで依頼したいとの意向でしたが、それは弟が譲りません。

しかし、弟の申告した税理士は遺産分割協議には入ろうとせず、決まれば計算するという態度だったため、最終的には真美さんの依頼で、当社が相続をコーディネートすることになりました。

真美さんの希望は、父が苦労して維持した土地を守るということ

弟は、自分が大部分を相続したいようで、母親へは3割程度の財産を相続させるという案を出してきました。真美さんは苦労をかけた継母には多く相続してもらいたいので、納得できないとのことです。それに無税の特例の枠も残っており、納税の負担を減らすためにも、配偶者の特例を生かせるよう、弟の相続を母親へ変更することを条件に出しました。これで、納税額を約1億円減らすことができました。

弟は、真美さんへは全財産の5%程度の現金ではどうかと提案してきました。納税分も用意するので手取りで数千万円という提示です。しかし、真美さんの希望は、父親が苦労して維持してきた土地を残すことです。会社を辞め、家の財産でのうのうとしている弟に対しては信頼できないところがあるというのです。そこで、こちらは法定割合相当を現金と土地で要望することにしました。

真美さんは実家を離れて久しく、父親の土地の所在の全部はわからないとのこと。先方の税理士に送ってもらうよう依頼しても送られてこないため、名寄せ帳をもとにこちらで調査し、貸し駐車場になっている角地の土地を選択、交渉したところ、かなり難色を示されましたが、最終的には承諾を得られました。現金を合わせて法定割合とすることも承諾をもらえたので、その現金で納税もできました。

遺産分割協議が申告期限に間に合わないと未分割の法定割合となることから、期日が迫っており、税理士からも法定相続分で申告を勧められたようです。弟も、長引いても得策ではないと判断したようで、申告期限の前日に調印、当日に申告、納税ができたのでした。

不仲な姉弟が最終的に落ち着いた、20年前の決断

実の姉弟なのに双方とも相手を信頼できず、正直遺産分割は難航していました。しかし、時間がないことが幸いとなり、これ以上、争わない決断がされたのです。

真美さんの実印は父親が作ってくれたもので、納得いかない書類に押すわけにはいかないと決意していたようです。また、父親の事業を継いだだけで何の苦労もしていない弟に対しては、誰のおかげで今の自分があるか、しっかり自覚してもらいたいとも言ってました。ともに両親や家を思う気持ちは変わらないのに、本人達の溝は深いものがあると感じました。実の姉弟ですから、この先、わだかまりがなくなることを祈るのみです。

真美さんが20年かけて残してきた土地の懸念ー増額する「固定資産税」について

そうして20年が過ぎたわけですが、後妻さんは90代でまだご健在。二次相続はこれからになります。その件についても、姉弟の溝がどうなるか懸念が残るでしょう。

ですが今回はそれよりも、真美さんが更地で維持してきた土地について(特に年々増額する「固定資産税」について)悩んでいるようです。正直、更地のまま維持することは、メリットが少ないと言えます。

というのも、土地の固定資産税額は、評価額の1.4%として計算され、毎年1月1日時点の所有者に対し各自治体の固定資産課税台帳に登録されている人に課税されるものですが、建物が建っている土地の場合、200㎡までの土地に対しては住宅用の特例として「6分の1」に軽減されます。200㎡以上の土地は「3分の1」に軽減されます。

よって真美さんの土地の固定資産税は、建物を建てることにより、160万円から45万円程度に減額されることになります。

建物の固定資産税は当然増えることにはなりますが、家賃が入る賃貸住宅を建てると、その家賃収入から固定資産税を負担すればよいため、持ち出しにはなりません。

そのままで維持するよりも、賃貸住宅を建てるなど、固定資産税の減額の工夫が必要

真美さんが20年で負担した固定資産税は実に3000万円以上と、かなりまとまった金額になります。それを上回る駐車場収入があるから維持はできているのですが、それ以上のプラスにはなりません。

土地は建物を建てて住んだり、貸したりしてこそ、本来の価値がでると言えます。父親の土地を相続して維持する目的は達成できているとはいえ、そろそろ自分の財産として土地の価値を活かせるような活用が必要な時期になっているといえます。

方法とすれば、①賃貸住宅を建てる、②資産組替として売却し、別の立地に買い替える、③半分を売却して売買代金で賃貸住宅を建てる、などいくつもの方法が考えられます。これから真美さんにご提案して負担のない財産にしてほしいと切に思います。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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