こんな家買わなければよかった…。7,000万円で二世帯住宅を購入した68歳元会社員、幸せを噛みしめた3年後に娘夫婦と怒鳴り合いの大喧嘩→「地獄の同居生活」へ【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月20日 8時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
妻と穏やかな年金暮らしを送る大川昭夫さんは、マイホームが欲しいけれど自分たちの貯金ではとても買えないと悩む娘の言葉を聞き、ひとつのアイディアを提案します。それが「二世帯住宅での同居」です。当初は自分たちも娘夫婦も満足をしていましたが、しばらくすると関係に思わぬ変化が。そして、それは最終的に取り返しのつかない事態を招くことに……。今回は大川さんの事例を通して、親子の同居や二世帯住宅購入を慎重にすべき理由などについて小川洋平FPがお伝えします。
メリットしかない…そう考えて7,000万円の二世帯住宅を購入
大川昭夫さん(68歳・仮名)は地方の大企業を退職した後、夫婦で年金生活を送っていました。総額で5,000万円の資産を保有し、公的年金も妻と合計し28万円程度。まさに絵に描いたような「悠々自適な老後」です。
大川さんの一人娘である博美さん(35歳・仮名)は、すでに結婚して子供が1人います。博美さんは子育てしながら扶養内のパートで働き、ほぼワンオペの育児をしながら生活していました。
大川さんの家から車で30分程度のところでアパート暮らしをしているため、博美さんは頻繁に実家に帰ってきては、子育てしながら働く大変さを母にこぼしていたのでした。
家族3人で暮らせるマイホームも欲しいけれど、博美さんの夫の隆さん(34歳)の年収は400万円ちょっと。自分も子育てをしながらのパート勤務で給料は少なく、とてもではないが買える余力はない……。
そんな娘の悩みを聞いた大川さんは、以前から頭の片隅で考えていたアイディアを博美さんに伝えます。それは、築40年近く経って古くなった自宅を二世帯住宅に建て替えるという提案でした。
大川さん夫婦と娘夫婦が一緒に暮らせば孫のサポートもしやすくなります。また、まだ68歳とはいえ自分も年を取ってきました。何かあったとき、娘やその夫が一緒だったら妻も安心だろうと考えてのことです。
博美さんも、いざとなればすぐに子供を預けることができるうえに新しく広い家に住めるとあって、この提案に即賛成します。夫の隆さんを説得し、二世帯住宅の購入が決まりました。
二世帯住宅は2階建てで、玄関は一緒ですが上下の階で生活を分けることができるようになっており、延べ60坪以上もある大きな家です。総額は7,000万円ほどで、そのうち4,000万円を大川さんが頭金として出し、残りの3,000万円をローンで博美さん夫婦が支払っていくことにしたのでした。
この時点では、どちらの家族にとってもこの住宅購入にはメリットしかない、そう思っていました。
次第に強くなる違和感…汚れた部屋の苦言を発端に大喧嘩が勃発
二世帯住宅が完成し同居を始めてしばらくすると、娘夫婦との間に次第に違和感を感じるようになっていきました。
1階に大川さん夫婦、2階が娘夫婦が暮らしていますが、娘夫婦は家の掃除をしばらくしていないのか床のあちこちに埃が積み重なるようになっていきました。それが下の階に来るときに足の裏についてきてしまうのか、大川さんが掃除をしても廊下が汚れてしまうのです。キレイ好きな大川さんは、それが気になってしかたありません。
そして、同居したことをきっかけに、娘の博美さんは両親に過剰に頼るようになりました。博美さんは自分の暮らす2階ではなく大川さんたちの暮らす1階に子供と一緒に入り浸り、子供が泣き止まないときは大川さん夫婦にすぐに押し付けるように。いくら孫が可愛くても、さすがにそこまでされると疲労もストレスも溜まります。
また、隆さんは仕事の客先の接待等で帰りが遅くなることもあり、休みの日もスマホでゲームをしている姿が目立ちます。大川さんは、そんな隆さんに対しても不満を募らせるようになってきたのでした。
そして、そんな生活が3年続いたある日、掃除をしていない2階の廊下の埃が気になった大川さんは、博美さん夫婦が不在のときに2階の掃除をしに行きました。リビングには服や孫のおもちゃが散らかり、足の踏み場もないような状態です。
さらに廊下の隅っこには、大きな埃があちこちに溜まっています。そんな惨憺たる家の状態を見ては、さすがの大川さんも黙っていることはできません。それまでもやんわりと指摘したことはありましたが、今回は厳しく博美さんと隆さんに注意しました。
「おい、いくらなんでも部屋が汚すぎるぞ。なんでこんなに片づけられないんだ。こっちのスペースにまで埃が入り込んでくる。二人ともなんでこんな基本的なことができないんだ」
しかし、勝手に部屋に入られたことを不愉快に思った博美さん夫婦は、逆に文句を言いだす始末。
「いくら二世帯住宅だからって、プライバシーってものがあるでしょ? 無許可でこっちの家に入っておいて文句言わないで。監視されてるみたいで本当に嫌!」
こうして、これまでの不満がお互い爆発し大喧嘩に発展してしまったのでした。
別々に暮らしたいのに…身動きがとれない理由
「お互いにとって良いことだと思って同居をしてきたけれど、こうなってはもう難しいか……」
大川さんはそう考えました。同時に博美さん夫婦も、もう家を出て別々に生活したいと言い始めたのです。
しかし、再び別で暮らすためには二世帯住宅をどうにかしなくてはなりません。博美さん夫婦にとってはローンに加えて家賃を支払うことなど到底難しい状況で、大川さんに名義変更することもできません。しかし、夫婦二人だけで住むには60坪の二世帯住宅はあまりに大きく維持費も掛かります。
「仕方がない、家を手放そう……」
こう思った大川さんは地元の不動産会社に相談をすることに。しかし大川さんに伝えられたのは二世帯住宅は需要が無く、なかなか売るのは厳しいという言葉でした。
そうはいっても何とかなるだろう、当初はそう思っていた大川さんですが、しばらくして二世帯住宅が売れにくいという現実を受け止めることになりました。結局7,000万円で買った二世帯住宅を4,000万円にまで値段を下げても買い手がつかず、今にいたります。
そして、大川さん夫婦と娘夫婦は買い手が見つかることを願いながらも、いまだに仕方なく同居を続けています。せっかくお互いのためと思って買った二世帯住宅でしたが、親子関係を悪化させ、今は大きな足枷となって双方の夫婦を苦しめることに。大川さんに心穏やかな老後生活が戻ってくるのは、まだ先のことになりそうです。
二世帯住宅を建てる前に考えること
親子で一緒に暮らすことを考える際には、今回のケースのように生活スタイルやお互いの距離感の問題でトラブルになってしまうことに注意しなければなりません。また、二世帯住宅は需要の問題などから売却しにくく、もし今回のように関係性が悪化して別居したくなっても簡単には買い手が見つかりません。
ですので、もし二世帯住宅を考えるのであれば、同じ敷地内で二棟別々の家として建てるなど、生活を分離することができるようにするのをおすすめします。そうすれば、いざとなればお互いの家を行き来することもできる上に、仮にトラブルが起きたり離婚したりして手放さなければならない場合、両親が他界した場合などでも。建物が分かれているので買い手を見つけやすくなります。
また、もし二世帯住宅を建てて買い手が見つからない場合などには、売却するのではなくシェアハウスとして賃貸住宅にしてみたり、地元の企業に買い取ってもらい、社員寮として使ってもらったりするのも手段の一つです。シングルマザー向けやシニア向けなど、近年では特定の層に向けたシェアハウスなどもあり、家賃も安く水道光熱費も安く抑えて生活することができるため注目されています。
中には子供が結婚もしていないのに、子供が結婚した後に同居することを前提に二世帯住宅を建てようと考える方もいますが、今回のケースのように関係性が上手くいかなかった場合にどうするのか、家族構成が変わり二世帯住宅が不要になった際のことなどを考える必要があります。
建坪が大きければその分固定資産税や冷暖房などのランニングコストも高くなってしまいますし、屋根や外壁のメンテナンスにもお金が掛かります。もし暮らしが順調であっても、後々両親がいなくなったときにはそれらが大きなコストとして家計を圧迫してしまうことにもなります。
住宅を購入する際にもライフプランを考え、家族の環境が変化した際にどうするかも考えながら購入を検討しましょう。
親子関係にヒビ、ローン問題なども…同居や住宅購入は慎重に
今回は二世帯住宅を購入して後悔する結果になってしまった事例をお伝えしました。離れて暮らしていれば良好な関係性を保てても、一緒に暮らすと生活スタイルや考え方の不一致がどうしても気になってしまいますし、甘え過ぎてしまう、干渉し過ぎてしまうことで関係性が悪化してしまうこともあります。場合によっては、親とのトラブルが原因となり離婚してしまうような事例もあります。
親と同居すること自体をまずはよく考えた方が良いのですが、もし同居する際には前述のように、別々の建物にして売却したり賃貸にしやすい状態にしておくなど、柔軟に対応できるよう考えておくことが必要です。
また、親とのトラブルだけでなく、夫婦が離婚することもあります。その際ペアローンや連帯債務でローンを組んでいたことが離婚時に問題になってしまうこともあります。
マイホームは一生を左右する大きな買い物ですので、どういった問題が起きているのか情報を集め、家を買うべきかどうか、どのような家にするか、予算はいくらにするかなどを慎重に考えていきましょう。
小川 洋平 FP相談ねっと
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