トランプ・トレード後の日本株相場は膠着も…日経平均「4万円回復」はありえる【ストラテジストが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月19日 6時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
本記事は、マネックス証券株式会社が2024年11月14日に公開したレポートを転載したものです。
本記事のポイント
〇トランプ・トレード一巡後の日本株相場、膠着の理由 〇日経平均4万円回復はありえるが、その先はそのほかの条件次第トランプ・トレード一巡後の日本株相場、膠着の理由
トランプ・トレードも一巡した感がある。当然だろう。前回記事で指摘したとおり、初動の反応は条件反射のようなもので、トランプの政策に沿ったシナリオに賭けるなら、その政策の実効性を見極める必要があるからだ。
目下のところ日本株相場は膠着状態にある。下値では押し目買いも見られるが、上値が重い。ドル円相場が156円台の円安水準に振れても上値が重い。これは主に、以下の理由によると考えられる。
1)日米の大きな選挙、FOMC(米連邦公開市場委員会)などのビッグイベントを通過した材料出尽くし感
2)トランプ政策の負の影響(関税など)への懸念
3)日銀の12月利上げに対する警戒感
4)日本企業の4-9月期決算での業績頭打ち感
ここでは4)について取り上げる。図表1は日経平均と日経平均構成銘柄の今期予想EPS(1株当たり利益)の推移を示したものだ(予想EPSは日本経済新聞社予想)。EPSは10月15日の2,500円超をピークに右肩下がりとなっている。
日経平均4万円回復はありえるが、その先はそのほかの条件次第
これだけ業績が明確に頭打ち~下方屈折しているのに、株価が保ち合っているのは、しっかりしていると見るべきか。その理由は、
1)バリュエーションに割高感がないこと
2)業績の下方修正は一部の企業による影響が大きいこと
が挙げられる。図表2は日経平均の予想PER(株価収益率)を示したものだ。
年初来の平均(μ)は16.2倍、標準偏差は0.8倍なので、平均+標準偏差(μ+σ)は17倍、平均-標準偏差(μ-σ)は15.4倍である。2024年前半、8月に「令和のブラックマンデー」が起きるまでは、平均とその1標準偏差上あたりでのバリュエーションで推移していた。しかし8月の暴落以降は、平均とその1標準偏差下あたりのレンジで、対照的なバリュエーション水準になっている。市場に過熱感はなく、下値では押し目買いが入りやすい。
問題は業績の下方修正で市場のセンチメントが沈み、平均を上回るバリュエーション・レンジに移行できないことだ。しかし、業績の下方修正は一部の企業に引っ張られている。日経平均構成銘柄を対象に、EPSがピークを付けた決算発表前の10月15日と11月13日までを比較した業績修正は以下のとおりである。
上方修正した企業は、下方修正した企業より社数では5割も多い。しかし下方修正の額が大きいため、日経平均全体ではEPSは下方修正となり、図表1のような下向きのトレンドになっている。下方修正の合計額は、1兆2,000億円強だが、このうち上位3社で半分の6,000億円を占める。その上位3社はすべて自動車である。
下方修正上位10社で、上方修正した60社の上方修正額合計を相殺してあまりある。これらを見ると、自動車・鉄鋼という景気敏感セクターでほぼ占められている。なかでも自動車の悪化が目立つ。
11月8日に出そろった乗用車7社の4-9月期決算は、スズキ(7269)とSUBARU(7270)以外の5社は純利益ベースで前年同期対比、減益であった。自動車全般に逆風が吹いているが、これは世界的な傾向である。日本でいえば、日産(7201)の低迷が群を抜いており、かなり特殊ケースに引っ張られている。
これらのことを勘案すれば、業績が伸び悩んでいるのは事実だが、上場企業全体ではそれほど悪化しているわけではない。この業績でもバリュエーションの切りあがりでじゅうぶん日経平均4万円回復はあるが、その先は、そのほかの条件次第ということになるだろう。
広木 隆
マネックス証券株式会社
チーフ・ストラテジスト 執行役員
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