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60代、投資信託の運用で「20%以上の損失」に耐えられる人は約27%…リスクも、メンタルの負担も軽減する投資手法の名称【証券アナリスト資格を持つFPが助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月20日 11時15分

60代、投資信託の運用で「20%以上の損失」に耐えられる人は約27%…リスクも、メンタルの負担も軽減する投資手法の名称【証券アナリスト資格を持つFPが助言】

(画像はイメージです/PIXTA)

シニアの資産運用の場合、若年層と違って使える時間が短いことから、大きな損失を出してしまうとリカバリーは容易ではなく、なにより限りある老後資金が目減りするとなれば、精神的な負担は非常に大きなものとなります。そのため、シニアはリスクも精神的負担もできるだけ少ない運用方法を選択することが重要です。元銀行員で大学教授のキャリアを持ち、いまも教壇に立つFPが解説します。

シニアの投資、「ドルコスト平均法」の活用が基本だが…

70代では、「長期投資」「積立投資」「分散投資」がリスクを減らすために有効であることを「知っている」人の割合は17.8%、「聞いたことがあるが詳しくは知らない」人は26.1%であったとする調査があります(日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」2024年)。

シニアの方々が投資を行うには、若い世代向けと思われている積立投資、つまりドルコスト平均法で一定の金額を毎月投資する手法を活用することが大切です。

ドルコスト平均法は万能ではないが、投資効率性において長期投資による効果や機会分散の効果が期待できるため、優れた成果を出す手法と考えることができるとする報告もあります(水野友理那「ドルコスト平均法を考える」ニッセイ基礎研究所、2020年)。

また、投資信託の運用に積立投資を活用した場合には、値下がりの幅が小さくなる傾向があると報告されています(工藤清美「ドルコスト平均法の有効性の分析」日本FP学会、2013年)。この報告によると、投資期間5年の場合、20%の元本割れの確率は日米の株式投資ではいずれも一括投資のほうが積立投資より20~30%大きいとしています。

これらの報告は、積立投資が値下がりについて効果があることを示しています。

投資信託の運用で20%以上の損失に耐えられる60代の人の割合は約27%であるという調査(投資信託協会「2022年度投資に関するWEB調査」2023年)もあり、この報告はシニア世代の方々は見逃せないでしょう。

市場環境の変化に応じた投資判断が不要な「フォーミュラ投資」

行動経済学の点から、客観的な価格の上下と主観的な損得の感情は同様ではなく、価格下落の場合の心理的な痛みが大きいことがわかっていますので、積立投資手法は有益な手法です。年金が主な収入のシニアの方々にとっては、元本割れのリスクを少しでも減らすことはメンタルの面で重要でしょう。

また、積立投資は一度設定すると投資する人の意思に関係なく投資されますので、市場環境の変化に応じた投資判断が不要になるわけです。こうした投資方法を「フォーミュラ投資」と呼びます。

「フォーミュラ」は公式、方式という意味ですが、この手法はフォーミュラ・プランとも呼ばれ、投資判断の材料など相場の変動要因に関係なく、あらかじめ決めた一定の法則に従って機械的に売買する方法のこととされています。相場の先行きを予想することは難しく、上昇局面で強気になり過ぎたり、下降局面で弱気になって投資を手控えたりしがちですが、この方法なら感情に左右されず、中長期的なスタンスで資産形成を行うことが可能となるとされています(大和証券「金融証券用語解説集」)。

こうした自動的な投資は投資家の意思決定の負担を軽減してくれるのであり、価格下落のリスクの低減効果との相乗効果により、シニア世代の方々の投資を取り組みやすいものにしてくれるでしょう。

行動経済学の効果を重視している欧米では、金融教育を「知識を授ける」ものから「(判断の)システムを助ける」ものへとシフトさせることに成功しています。新しい金融教育の現場では、かつて脇役だった「人へのアドバイスの方法」や「人の行動をコントロールする技術」が中心的な役割を果たすようになっています(大庭昭彦「Fin Wing基礎から学べる行動ファイナンス 第2回「直感システムと熟慮システム」野村證券、2023年)。

また、積立投資は価格の下がったときに多くの投資を行い、価格が上昇したときには少なく投資を行う「逆張り」投資の一種です。これを意識的に行うことは株式投資が得意な方は別として、一般のシニアの方々には難しいことですが、フォーミュラ投資としてこの困難な投資行動を可能にしてくれます。つまり、フォーミュラ投資は人間の主観や弱さを排除する方法であり、シニアの方々が活用したい手法と言えます。

藤波 大三郎 中央大学商学部 兼任講師

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