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一時「1ドル157円」に迫ったが…年末にかけて「米ドル高・円安」が大きく進む可能性は低いといえるワケ【国際金融アナリストが考察】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月19日 6時15分

一時「1ドル157円」に迫ったが…年末にかけて「米ドル高・円安」が大きく進む可能性は低いといえるワケ【国際金融アナリストが考察】

(※画像はイメージです/PIXTA)

トランプ・ラリーの影響により、1ドル157円に迫った先週の「米ドル/円」。しかし、今後はこの時期特有の年末にかけての円売りポジションの調整が影響し、円高傾向に進む可能性がある、とマネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏はいいます。その根拠と、今後の米ドル/円の展開をみていきましょう。

11月19日~11月25日の「FX投資戦略」ポイント

・先週の米ドル/円は157円近くまで一段高となったが、金曜日に大きく反落した。この時期特有の年末にかけての円売りポジションの調整が影響した可能性あり。

・トランプ氏の大統領選挙勝利を受けた米ドル高が、8年前の「トランプ・ラリー」ほど長く続かず、すでに終わりつつある可能性にも注目。

・その場合、米ドル買い・円売りポジション手仕舞いの米ドル安・円高への影響が大きくなることから、今週の米ドル/円は151.5~156.5円で想定する。  

先週金曜日に米ドル/円が急反落

先週の米ドル/円はこの間の高値を更新し、157円近くまで一段高となりました。ただ金曜日は一転して、最大で3円近くもの大幅な反落となりました(図表1参照)。この日は、注目された米10月小売売上高などもむしろ予想より強い結果となるなど、米金利上昇、米ドル買いに反応しそうな材料がありました。一方で、特段の米ドル売り材料があった様子もないなかで、なぜ米ドルの大幅反落となったのでしょうか。  

米ドル/円と日米金利差の関係を細かくみると、155円を大きく米ドル/円が上回った動きは「行き過ぎ」だった可能性があります(図表2参照)。その意味では、行き過ぎた米ドル高・円安の修正が金曜日に広がったことで、米ドル/円が大きく反落した可能性はあったでしょう。そしてもう1つ注目されたのは、ポジション調整の影響です。

過去2年連続で、11、12月は2ヵ月連続で米ドル陰線(米ドル安)となりました(図表3参照)。これをもたらした主因は、年末にかけての米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いだったと私は考えてきました。

過去2年とも、10月末から11月にかけて大幅な米ドル高・円安となりました。このため為替市場では米ドル買い・円売りポジションが大きく積み上がったと考えられました。そのポジションの利益を確定する動きが年末にかけて広がり、それが2022年の場合は約20円もの、そして2023年も約10円の比較的大きな米ドル安・円高をもたらした可能性がありました(図表4参照)。

この場合に重要になるのは、年内の米ドル高・円安の見極めです。米ドル買い・円売りポジションの立場からすると、少しでも米ドル/円が高いところで利益確定したいと考えるでしょう。逆に年内の米ドル高・円安が一段落した可能性がありそうなら、大きく米ドル/円が下がる前に利益確定を急ぐことになります。

2024年の場合、夏場に米ドル/円が急落したことから、過去2年ほど米ドル買い・円売り戦略は大きな利益をもたらさなかった可能性があります。それでも、米大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受けた米ドル高・円安は、年内の最後の勝負所と位置付け、過去2年ほどではないにしても米ドル買い・円売りポジションが拡大していたと考えられます。

この米ドル買い・円売りポジションは、年内米ドル高・円安が160円まで進むならさらに拡大するでしょうが、そこまでに達することなく米ドル高・円安が終わりそうとなったら、利益確定を急ぐことになるでしょう。先週金曜日、特段の米ドル売り材料があったわけでもなく、予想より強かった米小売売上高などの材料を無視するように米ドル売り・円買いが広がったのは、少しでも米ドル/円が高いうちに、米ドル買い・円売りポジションの利益確定を目指す動きが強まった影響が大きかった可能性があります。  

今週の注目点=円売りポジション手仕舞いが鍵

米ドル買い・円売りポジションの損益確定の動きを考えるうえで注目されるのは、トランプ氏勝利を受けた米金利上昇・米ドル高がまだ続いているのかの見極めでしょう。米ドル高がまだ続いているなら、米ドル買い・円売りポジションは維持されるでしょうが、終わった可能性があるとみたら、少しでも米ドル/円が高いうちに利益確定を狙う動きが米ドル/円の上値を抑えることになるでしょう。

8年前の2016年、大統領選挙でのトランプ氏勝利を受けた米金利上昇・米ドル高の「トランプ・ラリー」は12月上旬にかけて約1ヵ月続きました(図表5参照)。

このときは開票が進むなかでトランプ氏が勝利しそうとなって初めて金利上昇・米ドル高などを見込んだ「トランプ・トレード」が本格化したので、それが約1ヵ月も続いたのではないでしょうか。  

これに対して今回は、選挙中から「トランプ・トレード」は大きな話題となっていました。その意味ではすでに「トランプ・トレード」はかなり消化されており、正式な勝利確定後に拡大する余地は限られる可能性もあります。この見立て通りなら、「トランプ・トレード」の影響を受けた年内の米ドル高・円安はほぼ終わりの可能性すらあるため、米ドル買い・円売りポジションはさらに拡大するより、その手仕舞いによる米ドル安・円高への影響が注目されると考えられます。

代表的な投機筋であるヘッジファンドは、120日MA(移動平均線)が売買転換点の目安になっていると見られています。足下のそれは151.2円なので、米ドル/円が151.2円を割れそうになると、米ドル買い・円売りポジションの損益確定売りは加速する可能性も出てきます(図表6参照)。  

以上を踏まえ、今週の米ドル/円の予想レンジを考えてみましょう。私はすでに年内の米ドル高・円安は終わった可能性もあると考えており、一方で152円を割れると米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが加速する可能性があるため、今週の予想レンジは151.5~156.5円で想定します。

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

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