トリプルレッドとなった「次期トランプ政権の政策」を考察する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月18日 15時0分
(※写真はイメージです/PIXTA)
本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。
●トリプルレッドでトランプ氏の政策は進めやすい体制に、ただし主な政策には良い面も悪い面もある。
●前トランプ政権時、減税は規模縮小で2017年中に成立、関税引き上げは中国に対し長期戦に。
●減税は年内成立、関税引き上げは時間をかけて実施か、市場は慣れもあり総じて冷静な反応も。
トリプルレッドでトランプ氏の政策は進めやすい体制に、ただし主な政策には良い面も悪い面もある
米大統領選と連邦議会選の結果、共和党候補のトランプ氏が勝利し、上下両院とも共和党が多数派を占める「トリプルレッド」が達成されたことで、トランプ氏にとって自身の掲げる政策を進めやすい体制が整いました。トランプ氏は来年1月の大統領就任後、通商政策や移民政策、規制の改廃など大統領令でできる政策に加え、税制改正など議会の協力が必要な政策も、順次進めていくと思われます。
トランプ氏の大統領就任後、早々に着手が予想されるのは、不法移民対策やエネルギー生産の規制緩和などですが、現時点で各政策の具体的な内容や優先順位については、まだ明確ではありません。トランプ氏の主な政策は、米国経済にとって良い面だけでなく、悪い面もあるため(図表1)、市場は期待や思惑に振れやすい状況にあり、特に減税や関税引き上げには高い関心が集まっています。
前トランプ政権時、減税は規模縮小で2017年中に成立、関税引き上げは中国に対し長期戦に
そこで、前回のトランプ政権時、減税や関税引き上げがどのように実施されたかを振り返ってみます(図表2)。トランプ氏は2017年12月22日、10年で1.5兆ドルという大型減税法案に署名し、同法が同日成立しました。ただ、減税規模は2016年の選挙期間中に掲げた5兆ドルからは減額となりました。また、10年で1兆ドルのインフラ投資を促進するという政策は、前トランプ政権の4年間で実現しませんでした。
関税引き上げの動きは、2018年11月の中間選挙が近づくにつれ、目立つようになりました。日本、カナダ、欧州連合(EU)との貿易協議は短期戦(成果を中間選挙でアピール)に位置付けられた一方、中国との貿易協議は長期戦と位置付けられ、実際に、米中の関税引き上げ合戦は、2019年9月の第4弾まで続き、2020年1月15日に両国が経済貿易協定に正式に署名、米中貿易摩擦問題はいったん落ち着いた格好になりました。
減税は年内成立、関税引き上げは時間をかけて実施か、市場は慣れもあり総じて冷静な反応も
以上より、改めて政策実施の順番を考えた場合、トランプ氏は前述通り、まずは不法移民対策やエネルギー生産の規制緩和などに着手し、2025年中にトランプ減税延長などの税制改革法と予算の成立を目指すと思われます。弊社はいくつかの条件のもと財政支出による2026年の経済成長押し上げ効果は0.6%ポイント程度とみていますが、議会がトランプ減税延長以外の支出を3割程度に抑えれば0.2%ポイント程度にとどまることも想定されます。
関税引き上げについて、中国には強硬姿勢継続、それ以外は個別交渉が予想され、米国経済にも悪い面がある以上(図表1)、前回と同じく、相応に時間をかけて行われる見通しです。ただ、関税で相手を脅して譲歩を引き出すのはトランプ流の交渉術で、市場も十分慣れているなど、トランプ政権も2回目となれば既知の部分も多いため、トランプ氏の言動に対する市場の反応は、前政権時より総じて落ち着いたものになることも考えられます。
(2024年11月18日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トリプルレッドとなった「次期トランプ政権の政策」を考察する【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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