まだまだ働くぞ!年金月23万円・65歳元営業部長、意気揚々と再就職を決めるも一転、日本年金機構から届いた〈年金停止〉の通知に「働く気が失せました」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月19日 8時45分
「人生100年時代だから、働ける間はできるだけ長く働きましょう」こんな言葉をよく耳にするようになりました。シニアになっても生活のために働かざるを得ない人、健康や生きがいのために前向きに働く人、事情は人によってさまざまですが、なかには年金受給中に“稼ぎ過ぎた”ことで思わぬ落とし穴にはまる人もいるようで……。詳しく見ていきましょう。
65歳どころか70代まで働くのはもはや当たり前?
厚生労働省『令和5年簡易生命表の概況』によると、日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性81.09歳。なおかつ90歳まで生存する人の割合は男性で26.0%、女性では50.1%です。「あまり長生きしたくないね」「短く太く生きたいよ」などと思っていても、実際には長生きすることを覚悟しておく必要があります。
そのためにするべきことは現役時代の貯金・投資・保険などによる備え、そして老後も働くことでしょう。実際、65歳未満で働くことをやめる人は今や少数派。総務省「労働力調査」によれば、2022年時点での年齢階級別就業率は以下のとおりで、70歳を過ぎても働いている割合がかなり多いことがわかります。
年齢階級別就業率
・60~64歳…73.0%
・65~69歳…50.8%
・70~74歳…33.5%
・75歳以上…11.0%
特に男性は、就業者の割合は60~64歳で83.9%、65~69歳で61.0%、70~74歳でも41.8%と、定年という区切りとは関係なしに働いている人が多いことが見て取れます。
では、65歳以上のシニアは経済的にどのような状態に置かれているのでしょうか。内閣府『高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』(令和3年)を見ると、その一端をうかがい知ることができます。
65歳以上の人の経済的な暮らし向き
・家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている…12.0%
・家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている…56.5%
・家計にゆとりがなく、多少心配である…23.7%
・家計が苦しく、非常に心配である…7.5%
※四捨五入の関係で足し合わせても100%にならないが数値的な間違いではない
「家計にまったく心配がない」「それほど心配はない」を合計すると68.5%。その一方で、「ゆとりがなく心配」「苦しく非常に心配」の合計が31%です。つまり全体の3割が家計に不安があり、心配を抱えているという結果です。
後者の3割の人々については、理由は人それぞれではあるにせよ「長く働かざるを得ない」というのも実情といえそうです。
前向きに働くシニアも多いが…
ただ、こんな調査もあります。60歳以上を対象にした内閣府『高齢者の経済生活に関する調査」によれば、働く理由について以下のような結果が出ています。
仕事をしている理由(60歳以上)
・収入がほしいから…45.4%
・働くのは身体によいから、老化を防ぐから…23.5%
・仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから…21.9%
・仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから…4.4%
・その他…4.0%
・不明・無回答…0.8%
これを見ると「収入がほしいから」という理由がやはり1位であるのと同時に、健康面のメリットで働く人、仕事がおもしろいといったポジティブな理由で働く人も多いことがわかります。
ちなみに年代別では、70代になると「収入がほしいから」という理由と「健康によい」の割合がほぼ同じに。仕事がおもしろいという理由も60歳以降から割合は変化せず、高い数値を維持しています。
老後も働くというとどうしてもネガティブな方向に議論されがちですが、
「どうせ長生きするなら健康でいたいから働く」
「自分のスキルを活かして社会に貢献し続けたいし、それが生きがいになる」
こんな風に考えて前向きに働く人も多いようです。
しかし、現役時代に培ったスキルを活かして、年金暮らしになっても前向きに働くシニアが気を付けるべきことがあります。それを知らないと、「たくさん働いて稼いだのに、そのせいで年金が減ってしまった」と憂き目を見る可能性も……。例えばこんなケースです。
なんで年金が減るんだよ!65歳加藤さんがハマった落とし穴
都内の中小企業で会社員として働いていた加藤義男さん(仮名)は、60歳以降も同じ会社で継続雇用を続け、65歳でいよいよ退職することになりました。
高卒ながら敏腕営業マンとして名を馳せ、部長職まで昇りつめた加藤さんは、社内では高収入のエリート。その後、役職定年・継続雇用と徐々に年収は下がりましたが、64歳時点でも800万円ほどの収入がありました。
そして継続雇用の期限65歳が近づく頃、懇意にしていたクライアント企業から「加藤さんのスキルは素晴らしい。そちらを退職したら、ぜひうちの会社で働いてくれないか」そう打診されました。
自分の仕事を高く評価され、うれしくないわけはありません。まだまだ体力もあり65歳で引退して老け込むのは早いと考えた加藤さんは、新しい仕事場で働くことを決めたのでした。
「給料はまたガタっと下がるけど、年金と合わせれば十分だ。現役時代ほど仕事はハードじゃないし、この年でまだ必要とされるのが何よりありがたいよ」
そう妻とも話しながら、新しい会社で働き始めた加藤さん。しかし、ある日、日本年金機構から「年金停止」という驚くべき内容の通知を受け取ります。いったいなぜ?……混乱する加藤さんですが、それこそ「稼ぎすぎるシニアが陥る落とし穴」でした。
年金+給与が一定額以上になると「年金カット」…今後見直しも
公的年金を受け取りながら給与や役員報酬を受け取る場合、「在職老齢年金」という制度に気を付けなければなりません。というのも、老齢厚生年金の基本月額(老齢基礎年金は対象外)給与や賞与の合計額が月50万円(2024年度)を超える場合、年金の一部または全額が支給停止されてしまうからです。
加藤さんが受け取る年金は月23万円程度で、そのうち老齢厚生年金は月16万円。会社から受け取る総報酬月額相当額は42万円程度でした。
カットされる金額は「(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)×1/2」です(※)。
※基本月額…老齢厚生年金(年額)を12で割った額
※総報酬月額相当額月給(標準報酬月額)に、直近1年間の賞与を12で割った額を足した額
この計算の結果、加藤さんの場合は8万円ほど50万円を超えるため、月4万円ほどが支給停止となったのでした。
「こんなに減らされるなんて……年間だとかなりの金額になるぞ。収入だけが目的じゃないけれど、それにしたって世間では散々労働力不足だ、シニアも働けといっておきながら、いったい何なんだこれは。働く気が失せるよ」
当初は怒り心頭だった加藤さん。それでも、国の制度であれば悔しさを飲み込むしかありません。会社とは在職老齢年金の対象にならないよう、仕事量も含めた話し合いをしているとのことです。
経団連は、在職老齢年金の仕組みについて、支給停止になる基準額の引き上げによって対象者を減らすべきとし、「将来的には廃止すべき」という見解を示しています。少子高齢化が進む日本において、シニアが「働き損だ」と思うような制度は見直されていくでしょう。
とはいえ、現状、損をしないためには制度の範囲内で年金と収入のバランスを取り、工夫する必要があります。65歳以降も働く予定がある人は、この「在職老齢年金」という年金減額の仕組みを把握し、勤め先とも話し合いをしておくとよいでしょう。
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