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だから税務署は信用ならんのだ…年金月6万円、会社は3年連続赤字も“愛車はベンツ”の80歳ワンマン社長、税務調査官の「無慈悲なひと言」に悲鳴【税理士の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月24日 11時15分

だから税務署は信用ならんのだ…年金月6万円、会社は3年連続赤字も“愛車はベンツ”の80歳ワンマン社長、税務調査官の「無慈悲なひと言」に悲鳴【税理士の助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

税務調査の対象は、一部の富裕層や儲かっている法人だけではありません。たとえ赤字企業であっても、税務調査によって多額の追徴税を課されるケースが少なくないのです。80歳ながら“現役バリバリ”なA社長の事例をもとに、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が解説します。税務調査の対象となりやすい法人の特徴や、調査の場で“絶対に言ってはいけないNGワード”などを詳しくみていきましょう。

年金月6万円、会社は赤字だが…80歳ワンマン社長の生活

とある政令指定都市で土木工事業と不動産賃貸業を営むA社長(80歳)は、かなりの“ワンマン経営者”として有名でした。会社には数人の従業員と、後継ぎとして入社させた息子50代が勤めているものの、社長のAさんには意見できないイエスマンばかり。というのも、過去に社長に意見した人はその後明らかに待遇が悪化し、全員辞めてしまったのでした。

そんなA社長が経営する会社は、ほとんどの年が赤字であり、さらに、A社長は60歳から年金を受給しているものの、その受給額は1ヵ月あたり約6万円と、決して十分な額とはいえません。

にもかかわらず、Aさんはかなり“羽振りが良い”様子です。愛車のベンツは、数年ごとに乗り換えています。また、夜の街にも顔が利き、80歳のいまでもクラブや料亭にしょっちゅう通っているのだとか。

そんなある日、税務署から連絡がありました。

調査官「法人税の申告書で確認したいことがありますので税務調査に伺いたいのですが」

しかし、これに対しAさんは、「うちは3年連続で赤字で全然儲かってないんだぞ! なのに税務調査!? まったく、だから税務署は信用ならんのだ。うちみたいな貧乏法人を調査する暇があったら、政治家の裏金でも調べたらどうなんだ!」と、電話口で調査官に説教する始末です。

しかしあくまでも税務調査に伺いたいとの要請に社長のさAんも渋々応じることになりました。

税務調査当日…調査官の追及に声を荒らげるA社長だったが

そして数日後、調査官が2名でやってきました。最初は社長の経歴や会社の概要など、なごやかな雑談から始まったものの、午後になり具体的な調査が行われることに。

調査官「会社のベンツは個人的な目的で使用はされていませんか?」

   「このゴルフはどなたと行かれましたか? 仕事に関係ないご友人とですか?」

   「この料亭やクラブはどなたと行かれましたか? 仕事関係者とですか? どういう目的で行かれたのでしょうか?」

   「この海外への社員旅行は、家族しか行っていないんじゃないですか?」

Aさん「そ、それは……でも、前回の調査の時はそんなこと指摘されなかったぞ! それにほかの会社もやっていることじゃないか! なぜ私ばかりが指摘されなければいけないんだ!」

調査官「前回の調査ではその点に気づかなかっただけでしょうね。では前回の調査のときまで遡って修正しますか? あと、他の会社もやっていると言われましたが、その会社名を教えていただけませんか? 調査に伺いますので」

Aさん「……あぁ~、もう!」

結局、Aさんの叫びも虚しく、法人税・所得税・消費税に加算税と延滞税を加えたおよそ500万円を課されてしまったのでした。  

Aさんに多額の追徴税が課されたワケ

今回、Aさんが追徴税を課された理由は、会社の経費のなかにAさん個人の私的な費用が多額に混入していたからです。

税務署が経費として認めなかったのは次のようなものでした。

■家族従業員や個人的な友人も参加した社員旅行の費用

■明らかに高すぎる料亭、クラブでの飲食費

■ゴルフのプレー代等

もちろん、事業活動に必要な費用は経費として処理することが可能です。しかし、支払った経費が社長個人的な目的で使用されている場合などは、会社の費用として否認され、社長の役員賞与などに認定されます。

なお、役員賞与となった場合、まず社長に対して個人所得税と個人住民税が課税されます。加えて、社長の役員賞与とされた場合、会社の経費に算入することができないため、法人税・法人住民税・法人事業税が課されることに。また役員賞与は消費税の仕入税額控除とならないため、消費税の納税も必要です。

税務調査の対象になりやすい法人の特徴とは

今回紹介したA社長の会社がそうであったように、赤字であっても、社長の給料を高く設定している場合や、会社の経費を多く計上して黒字を出さないようにしている法人は少なくありません。そのため、たとえ業績上は赤字であっても、次のような会社は税務署から狙われやすい傾向があるでしょう。

■申告内容に不審な点がある場合

■売上は順調に拡大しているものの、赤字が一向に解消されない場合

■交際費や福利厚生費など「個人的な費用」が含まれそうな科目の金額が、同業他社に比べて明らかに多い場合

また、今回のA社長のように「前回の調査では指摘されなかったぞ!」や「他の会社もやっているじゃないか!」などのセリフは、税務調査の場では絶対にNGです。

一般的に、法人の場合は一定の期間が経過すると税務調査に入られる可能性が高まります。法人税の申告書に記入漏れや誤りがないように、また毎年ある税制改正にも対応し、適切に申告することが大切です。

そのほか、調査に入られやすい法人の特徴として、前年度と比べて売上が大きく伸びていることや、修繕費などの経費科目が大きく増加していることなどが挙げられます。

申告書を見たとき、税務署が疑念を抱きそうな点に関して、「今期の事業概況として、こういう理由で売上が増加した」、「修繕費が増加したのは、こういう理由です」などと、その旨の補足説明を記載しておくようにすると、税務調査に入られる可能性を下げることができるかもしれません。

会社の経費で贅沢三昧した結果…多額の追徴税に息子“ブチ切れ”

いかがだったでしょうか? ワンマン経営の場合、社長の個人的な費用を会社の経費に入れてしまうケースも少なくありません。

Aさんの経費が税務調査で否認された結果、法人税と所得税、消費税の“トリプルパンチ”となり、多額の追徴税が課されることとなってしました。

今回の件で、長年父親のいいなりであった息子もついにブチ切れ、Aさんに大説教。その結果、反省したA社長は現在、息子への事業承継をすすめているそうです。  

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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