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不動産の「相続登記」と「名義変更」の違いは?…相続で名義変更を怠った場合の主な“3つのリスク”【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月26日 11時30分

不動産の「相続登記」と「名義変更」の違いは?…相続で名義変更を怠った場合の主な“3つのリスク”【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

大切な家族を見送った後には、多くの手続きが待っています。特に、不動産に関する手続きは複雑で、法的な手続きを進めるには登記や名義変更の流れを理解することが重要です。この記事では、弁護士である中澤泉氏が、不動産の相続にまつわる基本的な知識や名義変更の方法、注意点などについて解説します。

相続登記と名義変更の違い

相続登記と名義変更は一見似ている手続きですが、目的や状況により異なります。両者について簡単に説明します。

相続について

相続は、亡くなった人の財産や権利を遺族が引き継ぐことを指します。法的には、財産は死亡時点で法定相続人に自動的に移転しますが、その後、相続手続きを経て正式に管理・処分できるようになります。

相続手続きには、相続人の確定、相続財産の名義変更(登記)、相続税の申告などが含まれます。相続自体は自動で発生しますが、財産を管理・処分するにはこれらの手続きが不可欠です。

相続登記とは

相続登記は、被相続人が所有していた不動産の名義を相続人に変更する手続きです。不動産は法務局で管理されており、相続が発生すると相続人は相続登記を申請し、所有権を移転します。これにより、不動産を管理・運用することができます。

相続不動産の「名義変更」

相続不動産の名義変更は、被相続人の不動産権利を相続人に移転する手続きであり、「相続登記」と呼ばれます。2024年4月1日から、相続登記は義務化され、相続人は相続を知った日から3年以内に登記を申請しなければなりません。これを怠ると、最大で10万円の過料が科されるため、早期の対応が求められます。

相続登記と名義変更の違い

相続登記は、相続によって不動産の所有権が法定相続人や遺言に従い移転するための手続きです。これに対し、名義変更は相続に限らず、売買や贈与などで所有者が変わる場合にも行われます。名義変更は、相続のほかにも、不動産取引における所有権移転に関わる手続きです。

不動産の名義変更手順と必要な準備

不動産の名義変更には、正しい手順と十分な準備が欠かせません。以下で詳しく解説します。

不動産の名義確認

不動産を相続する際や名義変更を行う前に、まずはその不動産の所有者や権利状況を確認することが重要です。単に不動産の場所を知っているだけでは十分ではなく、所有者や権利関係の詳細を把握しておく必要があります。

なぜ名義確認が必要なのか?

「父親が所有していると思っていた土地が祖父名義のままだった」や、「住宅ローン返済後も担保が残っていた」というケースは珍しくありません。このような場合、相続手続きには祖父の相続人全員の協力が必要となり、担保の抹消手続きも求められます。その結果、手続きや必要書類が大きく変わる可能性があります。

不動産の名義や権利状況の確認方法

不動産の権利関係を確認するには「登記事項証明書」を取得します。ここには所有者情報や担保権、不動産の場所や面積などが記載されています。この証明書は法務局で誰でも取得可能で、相続手続きにも役立ちます。

登記事項証明書の取得方法と注意点

取得方法には、法務局窓口、郵送、オンラインがあります。不動産特定には「地番」や「家屋番号」が必要ですが、住所と異なる場合があるため注意が必要です。これらは固定資産税の通知書や登記済権利書に記載されていますが、ない場合は法務局で調べることも可能です。

名義変更に必要な被相続人・法定相続人に関する書類

名義変更には、被相続人と法定相続人に関する書類が必要です。各書類の入手方法や重要なポイントについて抑えておきましょう。

被相続人に関する書類

・戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍

入手先:被相続人の本籍地の市区町村役場

取得方法:窓口または郵送・オンライン申請可能。申請には本人確認書類が必要。出生から死亡までの全ての戸籍を揃えます。

備考:相続人確定のために必要です。

・住民票の除票または戸籍の附票

入手先:住所地または本籍地の市区町村役場

取得方法:窓口・郵送・オンライン申請可能。本人確認書類が必要。

備考:登記簿上の住所確認に使います。転籍があればその分も取得します。

・死亡後に発行された戸籍謄本

入手先:被相続人の本籍地の市区町村役場

取得方法:死亡日以降に窓口または郵送で申請。

備考:死亡の証明として使用。

・固定資産課税明細書

入手先:所有者に毎年市区町村から郵送。紛失時は役場で再発行可能。

備考:登記申請時にその年度のものが必要です。

法定相続人に関する書類

・住民票

入手先:相続人の住所地の市区町村役場

取得方法:窓口または郵送・オンライン申請可能。

備考:新しい所有者となる相続人の住民票を提出します。

・印鑑証明書

入手先:住所地の市区町村役場

取得方法:印鑑登録後に申請。郵送・オンライン申請も可能。

備考:遺産分割協議書の実印押印確認に使用します。

作成が必要な書類

・登記申請書

作成者:相続人または代理人

備考:法務局のウェブサイトから様式をダウンロード可能。自作も可能ですが、複雑な場合は司法書士に依頼するのも一案です。

・委任状

作成者:相続人

備考:代理人が登記申請を行う際に必要です。

・遺産分割協議書

作成者:法定相続人全員

備考:相続人全員の署名・実印が必要。

・相続関係説明図

作成者:相続人または代理人

備考:家系図形式で相続関係を図式化します。

登記申請の手続き、申請書の作成方法

登記申請書を法務局に提出することで、不動産の名義変更を行います。2024年4月以降は相続登記が義務化されるため、手続きを怠るとペナルティが発生する場合があります。

登記の目的:「所有権移転」や「持分全部移転」など。

原因:被相続人の死亡日を記載。

相続人情報:住所や持分割合を記載。

添付書類のリスト:戸籍謄本や住民票など。

不動産情報:登記事項証明書をもとに記載。

申請方法:登記申請書と添付書類を不動産所在地を管轄する法務局に提出。登録免許税は課税価格の0.4%を収入印紙で納付します。審査後、登記識別情報通知や登記完了証が発行されます。

名義変更に必要な書類と注意点

名義変更を行う際には、その理由に応じて提出する書類が異なります。また、名義変更には期限が設けられている場合もあるため、早めの準備が重要です。

名義変更時に必要な書類一覧

不動産の名義変更時に必要な書類は、以下の通りです。

相続登記による名義変更の必要書類

・被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から死亡までの連続したもの)

・被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票、登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの)

・法定相続人全員分の戸籍謄本

・新しく名義人になる人の住民票

・固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)

・相続関係説明図(戸籍謄本などの原本を還付する場合に必要)

・遺産分割協議書(法定相続分以外で名義変更する場合)

・印鑑証明書(法定相続分以外で名義変更する場合)

・不在籍証明書、不在住証明書(必要書類が揃わない場合に使用)

・登記済権利証(登記識別情報、必要書類が揃わない場合に使用)

・上申書(必要書類が揃わない場合に提出。印鑑証明書も添付)

・登記申請書

生前贈与による名義変更の必要書類

・贈与者の登記識別情報通知(対象不動産に関するもの)

・贈与者の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内のもの)

・受贈者の住民票

・固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)

・贈与契約書、贈与証書

・売買契約による名義変更の必要書類

・売主の登記識別情報通知(対象不動産に関するもの)

・売主の印鑑証明書(発行後3ヵ月以内のもの)

・買主の住民票

・固定資産評価証明書(名義変更する年度のもの)

・売買契約書

名義変更の期限と注意事項

不動産の名義変更には、通常、期限や義務はありません。しかし、相続によって不動産を取得した場合には特別な規定があります。2024年4月1日からは、相続による不動産の名義変更(相続登記)が義務化され、相続が発生してから3年以内に登記を完了させる必要があります。

この期限を守らない場合、10万円以下の過料が科される可能性があるため、注意が必要です。

不動産の名義変更にかかる費用と税金

不動産の名義変更を行う際には、費用と税金の2つの主な支出が発生します。

費用としては、名義変更に必要な書類、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書など、相続に関係する書類の取得費用が必要です。これらの書類の取得費用は、手続きする役所や証明書の数によって異なりますが、比較的単純な相続であれば、全体で1万円以内に収まることが多いです。

また、相続登記の際には、登録免許税を納める必要があります。これは、不動産の固定資産税評価額に基づいて計算され、相続する不動産の評価額に対して0.4%の税率が適用されます。

例えば、固定資産税評価額が1,000万円の場合、4万円の登録免許税がかかります。評価額は、不動産が所在する市区町村役場や都税事務所で発行される「評価証明書」に記載されています。

名義変更をしなかった場合のリスク

1.次の相続時に発生する複雑な手続き

名義変更を長期間放置すると、次の相続の際に相続人が増えて権利関係が非常に複雑になることがあります。

例えば、父親が亡くなり子が相続人になった場合、相続登記を行わないまま子が亡くなってしまうと、次にその孫が相続人となります。そして、その孫がさらに亡くなれば、その子、つまりひ孫が相続人となり、相続人が世代をまたいで増えていきます。

このように相続人が増えると、全員の同意を得て名義変更を行うことが必要になりますが、相続人の中には協力しない人や、病気で話し合いができない人、さらには行方不明者が出てくる可能性もあります。こうした状況では、名義変更が非常に困難になり、手続きを進めるためには調停や裁判が必要になるケースもあります。

2.法定相続分が差し押さえられるリスク

遺産分割協議や遺言で特定の人が不動産を相続することが決まっていたとしても、相続登記を行わない限り、その事実は第三者に対して有効に主張することができません。もし他の相続人の一人に借金があった場合、その債権者は相続登記が行われていない不動産に対して、その相続人の法定相続分を差し押さえることが可能です。

しかし、相続登記を済ませていれば、他の相続人の債権者は不動産の差し押さえをすることができなくなります。相続登記を行うことによって、第三者に対して自分の権利を法的に守る「対抗要件」が得られるため、法定相続分が差し押さえられるリスクを回避できるのです。

未登記のままでは、この対抗力がないため、第三者に対して自分の権利を主張できず、先に登記を行った者が優先されてしまいます。

3.共有持分が売却される可能性

相続において、相続人の一人は他の相続人の協力がなくても、自分の法定相続分に基づいて相続登記を申請することができます。また、相続人の債権者も、その相続人に代わって法定相続分の範囲内で登記を申請することが可能です。

例えば、長男と次男が相続人の場合、長男または次男は、相手の同意を得ることなく、それぞれ自分の法定相続分(2分の1)の持分で相続登記を完了することができます。このような状況で、次男が経済的な理由から自分の共有持分を第三者に売却したり、担保に入れたりすることも可能です。

このように、共有持分が第三者に渡ってしまうと、不動産の所有権が他者に及び、後に名義変更を行う際に複雑な手続きが必要になる可能性が高まります。また、売却された共有持分を取り戻すためには、追加の費用や時間がかかることになります。

名義変更の際に考慮すべき「名義人の選び方」

相続による不動産の名義変更では、誰に名義を移すべきか慎重に検討する必要があります。

相続人が複数いる場合、名義を誰に変更するかで財産の承継に大きな影響を及ぼします。配偶者、子供、共有名義のいずれを選ぶかによって、異なるリスクや利点が生じるからです。

母名義にする場合のメリットとデメリット

母親名義にする主なメリットは、配偶者控除による相続税負担の軽減と、母親が住み続けられることで生活が安定する点です。ただし、母親が亡くなった際の二次相続では、再び手続きが必要となり、その過程で兄弟姉妹間のトラブルが起きる可能性があります。

子供名義にする場合のメリットとデメリット

最終的に子供が不動産を引き継ぐ場合、初めから子供名義にしておけば、二次相続を避けられ、登記や税金のコストを削減できます。しかし、母親が住み続けている場合、子供名義に移すことで母親の権利が制限されることや、子供が予期せず不動産を売却するリスクも考慮が必要です。

共有名義にする場合のメリットとデメリット

複数の相続人で共有名義にすれば、全員の権利を公平に扱えます。ただし、将来不動産を処分する際、全員の同意が必要となり、意思統一が難しくなることがあります。また、共有者の一人が債務を抱えている場合、持分が差し押さえられるリスクも考えられます。

最適な名義人の選定方法

名義変更では税金や登記コストだけでなく、将来の財産承継や相続人間の関係性も考慮して判断することが大切です。例えば、最終的に財産を残したい子供が決まっている場合、配偶者を経由せず直接子供に名義変更することでコスト削減や手続きの簡略化が可能です。ただし、相続税率や他の相続人との調整も必要です。

夫婦の一方が先に亡くなった場合、残された配偶者に名義を変更するのが最適とは限りません。場合によっては、子供に直接名義変更するほうが、二次相続を避ける上で有利です。

名義変更に関するよくある質問

名義変更を行わないとどうなる?

相続した不動産の名義変更を行わない場合、不動産の売却や贈与が難しくなるだけでなく、相続税の申告や納付にも支障が生じます。また、法的トラブルの原因となる可能性もあります。特に2024年4月以降、相続登記が3年以内に義務化され、期限を過ぎると10万円以下の過料が科されることがあります。早めの対応が重要です。

相続登記が義務化される理由とは?

相続登記の義務化は、所有者不明土地の増加を防ぐためです。所有者不明土地は土地管理を困難にし、公共事業や民間取引の妨げになるなど、社会的な問題を引き起こしています。2021年の法改正による義務化は、土地の適切な管理と利用を促進するための重要な措置です。

名義変更にかかる税金は?

名義変更時には、登録免許税がかかります。この税金は不動産の固定資産税評価額に0.04%を乗じた金額です。例えば、評価額が1,000万円の場合、税額は4万円となります。

名義変更に必要な書類は?

相続による名義変更には、以下の書類が必要です:

・被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から死亡まで)

・被相続人の住民票の除票

・相続人全員の戸籍謄本と住民票

・不動産の固定資産評価証明書

・遺産分割協議書(法定相続分以外で変更する場合)と相続人の印鑑証明書

また、相続関係説明図や登記済権利証、登記識別情報が必要になる場合もあります。すべての書類を揃えて、法務局に登記申請書を提出します。

名義変更を自分で行う方法は?

名義変更は専門知識が求められるため、司法書士や弁護士に依頼するのが一般的ですが、自分で手続きすることも可能です。

まず、必要書類を準備し、登記申請書を作成します。申請書は法務局のウェブサイトからダウンロードでき、記載例を参考に記入します。書類を揃えたら、不動産の管轄法務局に提出します。事前に法務局で相談するとスムーズに進むでしょう。

ただし、手続きには多くのステップがあり、ミスが発生しやすいため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

弁護士

中澤 泉

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