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思い出の実家を返せ!…年金月20万円・元公務員の68歳妻、「別居22年」同じく元公務員の69歳夫が死去。相続放棄を迫る義姉と一触即発【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月27日 10時45分

思い出の実家を返せ!…年金月20万円・元公務員の68歳妻、「別居22年」同じく元公務員の69歳夫が死去。相続放棄を迫る義姉と一触即発【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

長年、別居状態にあり事実上夫婦関係が破綻しているあいだに配偶者の一方が亡くなってしまうことがあります。その場合の相続では、亡くなった配偶者の親族とトラブルになるケースが少なくありません。本記事では、渡部さん(仮名)の事例とともに、婚姻関係と相続トラブルについてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

別居中の夫の死

渡部幸さん(仮名/68歳)は長年公務員として勤務し、現在は年金生活を営んでいます。渡部さんには1歳年上の夫の哲也さん(仮名)がいますが、お互いの生活スタイルの違いや、渡部さんに家事はすべて任せきりにする哲也さんとの生活が嫌になり、22年前に家を出てアパート暮らしを選択していたのでした。

当初は距離を空けて冷却期間のつもりで別居したのですが、どちらもその後のことについて話すことはなく、職場も同じでしたので体裁を気にしてなかなか離婚に踏みきれず、関係性は悪化する一方。必要最低限の会話しかしないまま22年が経過してしまったのでした。

渡部さん自身、現役のころは年収600万円程度あり自分が生活していくには十分でした。退職したあとも退職金と合計し4,000万円の資産を持ち、公的年金は1人で月額20万円以上受け取ることができるため、十分生活していける余力はありました。別居してからはほとんど連絡を取らず、夫の存在は心のなかで遠いものになっていました。

そんな生活が22年続いたとき、突然夫の姉である明美さん(仮名)から夫の死を知らせる連絡がありました。夫の近くに住んでいた義姉はこの22年間、1人で暮らす家事の苦手な弟を気遣い、家におかずを届けたり家の掃除をしたりと面倒をみていました。ある日、いつものようにその日の食事を届けに行くと、寝室で亡くなっている哲也さんを発見。死因は急性心筋梗塞でした。

バタバタと葬儀を終えて1週間が過ぎ、ひと段落していたところで明美さんから哲也さんの遺産の相続についての話がありました。

哲也さんが住んでいたこの自宅と土地は、哲也さんや明美さんの両親がもともと所有していたものなので自分が引き継ぎたいとのことです。さらに、哲也さんの預金や保険も自分が生活をサポートしていたからいまの財産を築くことができたもので、すべての相続を放棄してほしいと要求されました。

家と現預金2,000万円の遺産分割

今回のケースの場合、哲也さんと幸さんには子供がいないため、法定相続人は幸さんと義姉である明美さんの2人のみです。法定相続分では、幸さんが4分の3、明美さんが4分の1を相続することになります。また、生命保険金は「受取人固有の財産」としてみなされ、遺産分割の対象からは除外されます。受取人の名義は別居前から変更しておらず、幸さんのままになっていました。

そのため、自宅建物、土地(資産価値は1,000万円程度)と、現預金2,000万円が遺産分割の対象となり、法定相続分どおりにわけるとなると、遺産2,250万円分を幸さんが相続し、明美さんは750万円分を受け取ることができ、生命保険金1,000万円については全額が幸さんのものになります。

妻と義姉、それぞれの事情

しかし、20年ものあいだ弟と関わらず、事実上夫婦とはいえ、幸さんが財産を相続することに明美さんは納得がいきません。まして、家と土地は明美さんや哲也さんが幼少のころから過ごしてきた家族との思い出の詰まった家。それを渡すことは決して許せなかったのです。

一方で、幸さんにとっても事情があります。30代後半で遅めの結婚をした幸さんは、当初、子供がほしいと強く望んでいました。哲也さんは子供の話題を結婚前にうやむやにしていましたが、結婚後に子供を持つ気がないことを正式に意思表明。何度も話し合いを重ね、幸さんは懸命に夫の説得を試みましたが、結局哲也さんの考えが変わることはなく、数年が経過してしまったという過去があります。さらに、残業で遅い時間に帰宅しても家事もすべて自分が行い、対等なパートナーではなく、家政婦のように扱われていたことを忘れていません。同居していたころのことを思い出すと、放棄するなど考えられなかったのです。

幸さんからの提案は、実家は姉の明美さんに渡してもいい、預金は自分が相続するという提案でしたが、姉の明美さんは預金も自分が相続すること、幸さんが受取人となっている保険金も自分に渡すことを頑なに譲りません。こうして双方の感情がぶつかり合い「争族」になってしまったのでした。

婚姻関係はもつれの原因になることも

今回の件のように、相続は感情が絡んで問題になってしまうことが多いものです。そして、明美さんの言い分も理解できますが、やはり最終的には法律が基準となってきます。

今回の件は亡くなった哲也さんが自身の想いを残し、対策をしておくことでトラブルを防ぐことができたでしょう。しかし、生命保険の名義人は相変わらず幸さんのまま、離婚することもなく体裁を気にして婚姻関係を続けてしまい、幸さんに相続権の大半を渡してしまったことが問題です。

状況的には早々に離婚し、しっかり財産分与等について話し合って決着をつけておくべきだったでしょう。またその後も、60代とまだ若かったとはいえ、自分の死後のお金の問題について考えていなかったことが大きな問題といえます。

哲也さんにとっての親族は姉だけになります。20年ものあいだ婚姻関係にあったとはいえないような状態の妻に財産が渡る状況であれば「姉に遺産を渡したい」という意思表示と対策を生前にしておくべきだったでしょう。

反対に、事実婚状態であった場合には法定相続人になることもできますが、事実上の婚姻関係であったことを申し出る必要があり、そうでないと遺産を受け取ることができない場合もあります。

「相続なんて自分には関係ない……」こう思っている人も多いでしょう。しかし、このような理由でトラブルになることもあります。相続のトラブルは財産の多い少ないに関わらず誰にでも起きる可能性がありますので、自分はどうしたいのか、元気なうちに考えておくことが大切です。

いつ亡くなるかは誰にもわからない

今回の事例のように、「相続」はお金持ちだけが考えなければならない問題ではありません。2020年の司法統計によると調停・審判となった事例の80%近くは遺産の金額が5,000万円以下で起きています。

自分の財産を誰にどのくらい渡したいのか、そのためにどうしたらよいか、いまのままで遺された家族が困るようなことがないか、まずは自分の意思とそれに対する問題を知り、どうしたらよいかを考えて対策する必要があります。

自分の死後に家族が困るようなことになるのは誰にとっても不本意なはずです。そして、人生の最期は誰にでも必ず訪れるものです。そのときに自分や家族が困らずにいられるように、相続のことを考えておきましょう。

小川 洋平

FP相談ねっと

CFP

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