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あんたが死んだら大損だよ!〈月収30万円〉〈年金月12万円〉相談なしに「繰上げ受給」を始めた60歳夫、妻の激怒理由に唖然

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月20日 7時15分

あんたが死んだら大損だよ!〈月収30万円〉〈年金月12万円〉相談なしに「繰上げ受給」を始めた60歳夫、妻の激怒理由に唖然

65歳から受け取れる老齢年金ですが、年金増額を狙い繰下げ受給する人が増えています。一方で、減額になってもいいからと繰上げ受給を選ぶ人も。その思惑とは?

年金の繰下げ受給者は増加傾向…背景にある「老後不安」

現在、老齢年金の受給開始は基本的に65歳ですが、希望すれば、60~64歳で早めることも、66~75歳で遅くすることもできます。早めるのは「繰上げ受給」といい、1ヵ月早めるごとに0.4%、最大30%減額。遅くするのは「繰下げ受給」といい、1ヵ月遅らせるごとに0.7%、最大84%増額となります。

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、国民年金(5年年金を除く)の受給権者3,433万6,782人のうち、繰上げ受給者は369万3,670人で、全体の10.8%。繰下げ受給者は67万2,466人で、全体の2.0%。経年でみてみると、繰上げ率は低下傾向、繰下げ率は上昇傾向にあります。

一方、厚生年金保険(第1号)受給権者2,804万5,102人のうち、繰上げ受給者は20万6,757人で、全体の0.7%。繰下げ受給者は37万4,481人で、全体の1.3%。経年でみてみると、繰上げ率、繰下げ率ともに上昇傾向にあります。

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』によると、老後生活に対しては不安を覚えている人は、60代で74.5%、70代で67.2%に達します。また不安の理由として最も多いのが「十分な金融資産がないから」で、60代では65.7%、70代では65.4%。「年金や保険が十分ではないから」が、60代で53.6%、70代で61.8%と続きます。

――少しでも年金を増やしたい

そんな思いの人が多いのでしょう。また繰上げ受給と繰下げ受給、比較してみると、やはり、受給額が増える繰下げ受給を選ぶ人のほうが増えていることがわかります。

そんななか、繰上げ受給を選択した高橋健一さん(60歳・仮名)。65歳から受け取り開始であれば月17万5,000円を受け取れるはずでしたが、現在、30%減の月12万2,500円を受け取っているといいます。

60歳の再雇用サラリーマン、毎月の給与があっても「繰上げ受給」を決めた理由

高橋さん、なぜ繰上げ受給を選んだのでしょうか。その問いに対しては、父親の影響が大きいといいます。

――父が亡くなったのは67歳のとき。進行性の胃がんが見つかって。亡くなるまであっという間でした。早く亡くなったから、年金なんて全然受け取ることができなかったわけです。

――自分も長くないかもしれないし、父のように年金を十分受け取れないかもしれない。できるだけ早く受け取ったほうが得策だと考えました

また高橋さん、60歳で定年となりましたが、再雇用で引き続き働いているといいます。ただ月収は50万円から30万円ほどと急降下。その一部を年金がカバーしてくれているから助かっているといいます。

――いわゆる「収入の崖」。準備不足でしたが、年金を早く受け取ることで計画的に準備を進められそうです

高橋さんにとっては納得の繰上げ受給でしたが、実は奥さんには相談なく決めたことだったとか。そのことで大目玉をくらったといいます。

――「あんたが死んだら大損だよ!」と怒られました。ビックリです、何をいっているんだと。さらに理由を聞いて思わず唖然としましたね

話を聞いてみると、健一さんに万一のことがあった際に受け取れる遺族年金が減ってしまうというのが、妻の怒りの理由。確かに奥さんが怒るのも無理はありませんが、それは単なる勘違い。健一さんに万一のことが起きた場合に受け取れるのは、遺族厚生年金。厚生年金に由来する遺族年金で、その受給額は老齢厚生年金の3分の4。繰上げ受給で30%減額となっているのであれば遺族厚生年金も……というわけではなく、65歳で受け取るはずった金額で計算します。

ただ老齢年金を繰上げ受給したことで、寡婦年金の受け取りについては影響があります。寡婦年金は亡くなった夫が国民年金に10年以上加入しているなどの条件を満たすと妻がもらえる年金で、夫が繰上げ受給して死亡した場合、妻は寡婦年金を受け取ることができなくなります。

とりあえず、勘違いだったことがわかり奥さんの怒りは無事鎮火。その怒りの背景にも老後生活と同じように漠然とした不安があったのかもしれません。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和5年)』

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