母の死後「実家暮らし・独身長男」が撃沈…「ゴネた妹大勝利」のワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月19日 20時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
いつの時代もなくならない相続トラブル。親/子ども/きょうだいと、死後のことを話すのは気まずい…。といった声は多いものですが、生前対策を怠ってとんでもないトラブルに巻き込まれる事例が相次いでいます。そこで本記事では相続対策の基本を紹介していきます。
実家暮らし長男を襲ったまさかの事態
相続のシーンでは、故人の遺産をめぐりドロ沼の争いになることが少なくありません。特に不動産の相続は平等な分割が難しいため、相続人の間で不平不満が噴出してしまうことも……。
たとえば下記のような例。自分事ではなくとも、親戚や友人で身に覚えのある人はいないでしょうか。
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〈加藤一家の事例〉
加藤義男さん(仮名)。55歳独身、地方公務員です。高校卒業後は上京し都内の有名大学に進学しましたが、卒業と同時に帰郷。地域を支える市役所職員として、真面目に働いてきました。
結婚を考える相手もいましたが、縁は実らず、現在まで独身です。父は10年前に他界。高齢で一人暮らしになった母を気遣い、5年前から実家で暮らしています。
義男さんには妹がいます。50歳・専業主婦の佳代子さん(仮名)です。佳代子さんは東京近郊の郊外で夫・娘・息子と4人で暮らしています。実家に帰省することは滅多になく、加藤さん一家が顔を合わせるのは数年に1回あるかないかです。
仲が良くもなく、悪くもなく……と微妙な関係が続いていた兄妹でしたが、事態が一変したのは1年前のこと。母の急死でした。
80歳を超えていた母・ヨシヱさん(仮名)。数年前から軽度の認知症傾向にありましたが、大きな問題となることはありませんでした。しかしある日、食事をのどに詰まらせて救急車を呼ぶ騒ぎに。誤嚥性肺炎を起こしてしまったのです。
若いころからタバコを好んでいたこともあり、肺が非常に弱かったヨシヱさん。みるみるうちに身体が弱っていき、長男、長女に看取られながら静かに亡くなりました。
父すでに他界しているので、相続人は義男さんと佳代子さんの2人だけです。遺言書はなく、残されたのは自宅と預貯金500万円でした。
葬儀後まもなく、遺産分割について話し合いの場が設けられましたが、そこで思わぬ展開になります。双方の意見に食い違いが生じたのです。
ゴネる妹…長男がふと気づいた、とんでもない事実
母が亡くなった今、義男さんは長年住んできた自宅を手放す気でいました。1人で暮らすには広すぎるし、建物も古くなっている。実家暮らしだった分預貯金は存分にあるため、職場から近いマンションの一室を借りようと検討していたのです。自宅の売却益と預貯金をあわせて、折半しようと持ちかけました。
それに「待った!」をかけたのが、妹の佳代子さん。「私は500万円を相続するから、お兄さんは家に住み続けてほしい」というのです。
「お母さんの思い出が詰まった家だし、手放すなんて嫌よ」と言葉を続けます。滅多に帰省しなかった妹がなぜ急にそんなことを……。訝しがる義男さんですが、間もなく、ある疑念が湧いてきます。
「妹は、俺が死んだあとのことまで考えているんじゃないか?」と。
義男さんは独身で、この先結婚する予定もありません。もし義男さんが独り身で亡くなれば、佳代子さんが相続権を有します。このまま自宅に住み続けたら、佳代子さんは自宅+義男さんの預貯金等を継ぐことになるのです。
一方、もし義男さんが家を手放しマンションを借りてしまったら、義男さんの預貯金は減るでしょう。結果、佳代子さんは自宅を相続できず、相続財産も少なくなることは明らかです。
いやいやいや、考えすぎかと義男さんは頭を振りましたが、一度疑ってしまった以上、疑念は晴れません。どうして「思い出が詰まった家だし」なんてもっともらしいセリフを吐くんだ? いずれ住みたいのか?……頭の中では大量に言葉が出てきますが、コミュニケーションをまともに取ってこなかった間柄。うまく話すことができませんでした。
結果として、折れたのは義男さんでした。姪っ子・甥っ子は可愛いし、妹家族が幸せになるのなら、と佳代子さんの要求のとおりの遺産分割をしたのです。義男さんは今でも、だだっ広い一軒家で淡々とした日々を過ごしています。
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「結局、ゴネたもん勝ち」…相続のプロが断言する悲しき事実
……この事例は相続トラブルの典型例といえましょう。ただでさえお金が絡むと揉めるものですが、「長年のコミュニケーション不足」がもたらすストレスは甚大です。資金繰り次第では、どんな手を使ってでも遺産を手に入れようとする相続人が現れるのです。
残酷な現実ですが、相続のプロのなかには「結局、ゴネたもん勝ち」と断言する人も少なくありません。遺産分割協議がこじれにこじれ、はては裁判に……となるのを避けたい心優しい相続人が折れるケースが相次いでいます。
遅かれ早かれ起こる「相続」。自分の遺産をめぐって家族がバラバラになってしまう結末は避けたいものです。いつ何があっても問題ないように、事前の情報収集が求められます。
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