とんでもない通帳残高に妻、絶句。家族のために生きてきた65歳元会社員が老後破産まっしぐら…遅くに授かった「ひとり娘」溺愛の果て
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月21日 8時45分
親であれば子どもにはできる限りよい教育を受けさせてあげたいと思うもの。しかし、晩婚化や出産年齢の上昇もあり、子どもの教育費がかかる時期と自分たちの老後資金を準備すべき時期が重なってしまうケースが増えています。こうした場合、お金の管理をきちんとしなければ想像以上に大変なことになる場合もあるようです。詳しく見ていきましょう。
晩婚化・出産年齢の高齢化、その実態と理由
晩婚化の進行と出産年齢の高齢化が進んでいるといいますが、その実態はどうなっているのでしょうか。厚生労働省「人口動態統計」によれば、平均初婚年齢は以下のように推移しています。
【平均初婚年齢の推移】
1975年:夫27.0歳、妻24.7歳
1995年:夫28.5歳、妻26.3歳
2015年:夫31.1歳、妻29.4歳
2023年:夫31.1歳、妻29.7歳
1975年と2022年を比較すると、47年間の間に夫は4.1歳、妻は5歳、平均初婚年齢が上がっていることになります。これだけ見ると「想像していたよりは晩婚化が進んでいない」と感じる人がいるかもしれません。しかし、これは平均値であり、実際には若年層の未婚率が高まり、中高年で結婚する人が増えているという内部的な変化があるといいます。
また国立社会保障・人口問題研究所が行った「第16回出生動向基本調査」(2021年)によると、25~34歳で独身の人が「独身にとどまっている」理由は以下のようになっています。
【独身にとどまっている理由(25~34歳)】
・適当な相手にめぐり合わない:男性43.3% 女性48.1%
・自由や気楽さを失いたくない:男性26.6% 女性31.0%
・まだ必要性を感じない:男性25.8% 女性29.3%
・結婚資金が足りない:男性23.1% 女性13.4%
・趣味や娯楽を楽しみたい:男性22.4% 女性24.5%
・異性とうまくつきあえない:男性20.0% 女性18.2%
・仕事(学業)にうちこみたい:男性14.3% 女性14.4%
・住宅のめどが立たない:男性5.2% 女性4.5%
・まだ若すぎる:男性3.8% 女性2.3%
・親や周囲が同意しない:男性1.4% 女性2.9%
※複数回答3つまで
圧倒的に多いのが男女ともに「適当な相手にめぐり合わない」という理由です。また、ほとんどの理由の比率は男女で大きく変わらないのに対して、「結婚資金が足りない」という理由については、男性は23.1%、女性は13.4%と差が出ているのも特徴です。
平均出産年齢は42年間で4.5歳上昇
では、出産についてはどうでしょうか。母親の平均出生時年齢の推移は以下の通りで、1980年から2022年の42年間で4.5歳上昇しています。
【母親の平均出生時年齢/第一子】
1980年:26.4歳
1990年:27.0歳
2000年:28.0歳
2012年:30.3歳
2022年:30.9歳
また、前出の厚生労働省「人口動態統計」(2022)によれば、母の年齢別出生数は以下の通り。30代が圧倒的に多く、40代も4万人以上いることも目を引きます。
2022年 母の年齢別出生数
・20代:25万5,355人(33.0%)
・30代:46万2,844人(60.0%)
・40代:4万7,938人(6.2%)
※10代は4,558人、50代以上は58人。カッコ内は総数77万759人から単純に割り戻した割合。総数には母の年齢不詳も含む
このように晩婚化と出産年齢の高齢化が確実に進む中で、子どもの教育費と自分の老後資金準備の時期が重なり、経済的に立ちゆかなくなるという事例も増えています。
仮に40代後半の男性が結婚し子どもを授かったとします。すると子どもが大学入学の18歳になるころには60代になり、年金受給も近づいている中で教育資金のピークがやってくることになります。
しかも、収入は年金を受け取るまで右肩上がりというわけではなく、50代以降は下がる傾向にあります。そのため、お金の管理をしっかりしておかないと、大変な事態に陥る可能性も……。例えばこんなケースです。
65歳元会社員が老後破産の危機…「娘のため」と暴走
田中幸一さん(仮名)は65歳。中小企業で長年営業マンとして働いていました。8歳年下の妻と出会ったのは田中さんが44歳のときです。
ひとり娘が誕生したときには46歳になっていた田中さんは、「この年で父親になれるなんて。でも、年をとった父親だと娘が引け目を感じるかもしれない。そうならないよう、できるだけのことはやってあげよう」そんなことを考え、娘溺愛パパに変貌したのです。
その結果、娘にかけるお金には糸目をつけなくなりました。欲しいものは買い与え、教育にも熱を入れ中学校から私立へ。通学が楽なようにと駅近のマイホームも購入しました。
家計に余裕があれば問題はなかったのですが、実際はその逆でした。結婚当初は営業課長として年収700万円程度を受け取っていた田中さんですが、50代で役職定年となり、60歳以降の嘱託社員時には年収が350万円ほどになっていました。
一方、妻は週3日のパート勤務。田中さんの収入が下がっても勤務を増やすことはありませんでした。というのも、家計の手綱は夫である田中さんが握っており、妻は実態を把握していなかったからです。
そんな不安定な家計の中で娘にお金をかけ続けた結果、自分の老後資金を一切準備できないまま65歳に突入してしまったのでした。独身時代に貯めた貯金はとっくに枯渇し、60歳時で受け取った退職金もみるみる減っていくばかりです。
しかし、その事実を妻と娘に話すことはなかなかできません。甲斐性のない夫・父親だと思われたくないという妙なプライドがあったからです。
65歳になり受け取り始めた年金は月20万円程度(加給年金含む)、妻のパート代と合わせれば30万円程度です。しかし、住宅ローンの返済や家族の生活費、娘の学費やおこづかいでそのほとんどが消えてしまいました。
そうして数カ月がたち、いよいよ危機的な状態だと悟った田中さんは、妻に通帳を見せて状況を告白しました。
「すまない、このままでは生活していけそうもない……」
残高は100万円を切るほどになっていました。お金のことは夫に任せておけば安泰だと信じていた妻は、あまりのことにしばし呆然。
しかし、自分が家計に無関心すぎたことを反省し、夫には1日も早く再就職をするように言い、自分もパートを増やすために奔走。家を売ることも視野に入れ始めました。
娘にも事情を説明しましたが、そこそこ裕福だと思っていた自分の家の金銭的危機に「信じられない」「この先が怖い」と言うばかり。
娘のためと思ったことが、結果的に大きな不安を抱えさせることになり、田中さんは無計画なこれまでの行いを心底悔やむことになったのでした。
晩婚はライフイベントが一気に押し寄せる
この事例ほどではなくても、幼稚園から大学までずっと公立の場合で約1,000万円と言われるなど、教育資金には想像以上にお金がかかります。
そのうえ、子どもができた時に年を取っていれば、その分現役時代も短くなり、教育費や老後資金の準備、住宅ローンの返済と、さまざまな負担が短期間で押し寄せることになります。
「子どもの教育資金がかからなくなったら本格的に老後資金を貯める」というのも難しいでしょう。教育資金がかかるピークが過ぎたら年金暮らしになっているためです。
こうしたことから、自分の老後生活を守るため、そして子どもに迷惑をかけないためにも、貯蓄や節約の意識を普通以上に高める必要があるでしょう。
【参考】
厚生労働省「人口動態調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html
国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/doukou16_gaiyo.asp
生命保険文化センター「ライフイベントから見る生活設計」
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