なんだ、このニオイは…年金22万円・元公務員の80代の父がひとり身を横たえていた、衝撃の場所【50代長男の後悔】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月22日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
高齢の親のことは気がかりでも、自分の生活でいっぱいいっぱい…。そんな40代、50代の人は多いだろう。しかし、自分の親に対する「たぶん大丈夫」という甘い見通しが、大きな後悔を生むこともある。実情を見ていく。
仕事と配偶者両親の介護に追われ…自身の父親は放置気味に
近年では、日本国民が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や、「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などから「働き方改革」が推進されている。
各企業も努力を重ねているものの、実現はなかなか厳しい模様で、時間に余裕がある就労者ばかりではない。とくに40~50代の場合、親の介護や子育てが重なりがちだが、一方で会社での責任も重く、家族のケアに注力できる人ばかりではないだろう。
「静岡の実家にひとり住まいの父のことで、後悔しています…」
そう語るのは、都内在住の会社員の鈴木さん(仮名、50代)だ。5年前、70代の母親が死去してから、80代の父親がひとり暮らしをしていた。鈴木さんには妹がいるが、配偶者の仕事の都合で、10年近く海外在住だ。
issin株式会社が20代〜70代の男女に行った『高齢の親の健康と生活に関する調査』によると、親のことで気がかりなことのトップは「健康状態」で27.0%。「介護が必要になる可能性」16.0%、「認知症の兆候・認知機能の低下」14.6%と続く。
【親のことで気がかりなこと】
1位「健康状態」…27.0%
2位「介護が必要になる可能性」…16.0%
3位「認知症の兆候・認知機能の低下」…14.6%
4位「実家の掃除や片付け」…8.3%
5位「詐欺対策や防犯」…8.2%
6位「財産管理」…5.7%
7位「精神的なストレスや鬱」…5.6%
「父の様子を見に行きたくても、多忙で時間が取れず…。平日は残業も多く、土日はヘトヘト。それに、一昨年から近居する妻の両親の介護が始まり、その手伝いもあります。なかなか自分の父のことまで手が回らなくて…」
鈴木さんの父親は元公務員で、年金は月額およそ22万円。高齢者が持ち家でひとり暮らしするには十分だといえる。また、父親はまじめな性格で、飲酒の習慣もない。
「父は毎朝キッチリ7時に起きて歯を磨き、味付け海苔と納豆でご飯を食べます。私が知っている限り、50年以上この生活です」
「掃除や洗濯は、週1回、家事代行サービスに来てもらい、昼と夜は、自分で弁当を買ったり、出前を取ったりしていると聞いています」
鈴木さん自身も、月に1回程度は父親と電話をしているが、とくに変わった様子は感じられなかったという。
「父と直接会ったのは2年前の夏です。実家に2泊ぐらいしましたが、母が亡くなったあとに不用品を整理しており、寝具は父のものしかありません。リビングのソファで寝ましたが、エアコンで冷えて風邪を引いたうえ、腰まで痛くなってしまい…。帰りの車の運転がつらかったです」
とはいえ、本人は至って健康そうで、鈴木さんの印象は〈これなら当分ひとりでも大丈夫〉というものだった。
「あれ…?」久しぶりに訪れた実家に感じた、強烈な違和感
仕事と妻の両親の介護サポートに追われる鈴木さんだったが、海外暮らしの妹からの突然の電話で、父親の危機的状況を知る。
「妹は12時間近い時差のある国にいるため、ほとんど電話はしないのですが、土曜日の夜、いきなり電話をかけてきたのです」
鈴木さんの妹は父親の誕生日に電話をしたが、そのときの会話がまったくかみ合わず、様子がおかしいと感じ、兄である鈴木さんに連絡したのだった。
「お兄ちゃん、お父さんに電話をしたら、様子がおかしいの。私がだれかもよくわかってないみたいだし、全然話が成立しないの。様子を見に行ってあげて!」
「えっ、そうか? 先月も電話したけど、別にどうってことなかったような…」
「いいから、様子を見に行ってあげて!!」
鈴木さんの妹が〈絶対におかしい〉といい張ったため、鈴木さんは翌日、疲れた体を引きずって車を運転し、久しぶりに実家を訪れた。
「――あれ?」
門から玄関までのアプローチは膝の高さまで雑草が生い茂り、2階はすべて雨戸が閉まっている。門柱のインターフォンを鳴らしても応答がない。
「いないのかな?」
預かっているスペアキーで玄関を開けたとたん、脳を突き抜けるような悪臭が立ち込め、鈴木さんは思わず顔をしかめた。
「なんだ、このニオイは――!」
すさまじい臭気のなか、父がひとり横たわっていた場所
思わず刺激に息を止め、薄目になりつつ目を凝らすと、玄関正面から部屋の奥まで延々と広がる、大量のゴミと思しきものが見えた。
「父は、食べ終わった納豆の容器が放つすさまじい臭気のなか、リビングのソファにひとり、横たわっていました。本当に脳を突き抜けるような、すごいニオイで…」
鈴木さんは慌てて声をかけたが、反応は鈍い。
「すぐに、妹がいっていた認知症だと直感しました。妻にも即連絡して事情を話しましたよ。いまは施設入所の準備を進めているところです…」
「家事サービスの会社は、自分で断ってしまったようでした。他人が家に出入りするのがストレスだったのでしょうね。毎月の電話では普通に思えたのですが、いま考えると、生存確認程度で、長く話すこともなかったので、様子の変化に気づけなかったのかも…」
内閣官房の資料によると、70~74歳で4.1%だった認知症有病率は、75~79歳で13.6%、80~84歳で21.8%、85~89歳で41.4%と上昇。また認知症患者の今後の推移については、各年齢の認知症有病率が一定の場合2025年に675万人、2030年には744万人、2040年には802万人と、高齢者の5人に1人は認知症。さらに各年齢の認知症有病率が上昇する場合では、2040年に953万人、高齢者の4人に1人が認知症を発症するとされている。
子どもにとって、自分の親が認知症という状況は認めがたく、現実を直視できないケースもあるようだ。しかし、70代、80代ともなれば、いつ認知症の症状が出てもおかしくはない。離れて暮らす親であっても、できる限り足を運んで直接様子を見るなどして、しっかりと見守っていくことが大切だといえる。
[参考資料]
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