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70歳母・脳卒中で急死。残された〈年金月23万円〉の81歳父〈貯金2,000万円〉を元手に「老人ホームに入居」したが…3年後、ひとり娘が歯ぎしりをして「悔しがった理由」とは

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月24日 5時15分

70歳母・脳卒中で急死。残された〈年金月23万円〉の81歳父〈貯金2,000万円〉を元手に「老人ホームに入居」したが…3年後、ひとり娘が歯ぎしりをして「悔しがった理由」とは

(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の住まいとしてニーズが高まる老人ホーム。妻に先立たれた男性の場合、「一人暮らしはしんどい」と入居を決める場合も多いとか。家族としても高齢者の一人暮らしは不安なので「老人ホームに入ってくれたら嬉しい」という声も多いでしょう。しかし、必ずしも安心というケースばかりではないようです。

妻を亡くした78歳男性…住居型有料老人ホームに入居

清水陽子さん(仮名・53歳)の父、茂さん(仮名・81歳)が老人ホームに入居したのは3年前のこと。介護を必要とするわけではなく、70代後半でも健康体そのものでしたが、なぜ住み慣れた自宅での暮らしではなく、老人ホームに入居することを決めたのか……それは「一人暮らしの孤独」にあったといいます。

茂さんの妻は、3年前に脳卒中で急死。70歳でした。亡き妻が8歳年下であったことや、男女の平均寿命から考えて、「自分が先にくたばると思っていた」という茂さん。妻の急死は大きなショックだったといいます。

自宅が急に広く感じるようになり、強い孤独感に襲われたという茂さん。家事は妻に任せっきりだったので、食事は基本的に外食か、持ち帰り弁当。ごみ出しの日を忘れて、複数のごみ袋が玄関に重なる日も。洗濯機に任せたらいいとはいうものの、洗剤の分量や干し方がわからず、洗濯物はためがちに。着るものに困ることもしばしば。一人暮らしに限界を感じるものの、子たちと同居するのはまっぴら。

そんなとき、老人ホームに入居する友人から快適な生活ぶりを聞かされ、「それなら自分も」と感化されたといいます。

老人ホーム選びの際、考えるべきは費用。家賃の前払いにあたる入居一時金は、0円から数百万円、数千万円とピンキリ。富裕層が対象となる高級老人ホームの場合、億を超える場合も。月額費用は15万〜25万円程度が相場ですが、高級老人ホームだと50万〜100万円程度。さらに月額費用に含まれないコストも考えなければなりません。

自身の収入(多くが年金)と貯蓄から、無理なく入居できる費用感から絞り込んでいきます。

茂さんの年金は月23万円。手取りにすると20万円程度。預貯金は2,000万円強。これらを考慮して決めたのは、地元では高級とされる住居型有料老人ホーム。万一介護が必要になった際には、隣接する介護棟への入居もスムーズ。自立している(健康な)人が多く入居していることもあり、自由な雰囲気も気に入ったポイントだったといいます。

老人ホーム入居3年目で起きた「まさかの出来事」

陽子さんは老人ホーム=介護を必要とする人が入る施設というイメージがあったため、茂さんから老人ホームに入居することを聞いたときは、正直、賛成できなかったといいます。

しかし、母が急逝して以来、生活が乱れていることを気にしてきた陽子さん。父のためになるならと、最終的に老人ホーム入居を賛成。さらに初めの面会で老人ホームを訪れたとき、洗練されたオシャレな雰囲気、イキイキとした入居者に、老人ホームへの印象はガラリと変わったとか。

株式会社 LIFULL seniorが1年以内に家族または親族が介護施設に入居した人を対象に行った『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』では、「介護者が介護施設に抱いていたイメージが、家族や親族の入居前後でどのように変化したか」を尋ねています。その結果は、「スタッフの対応やサービスがきちんとしている」が30.0%から36.4%に上昇するなど、ポジティブなイメージの項目はすべてが向上。一方で、「高齢者への尊厳と個別のニーズへの配慮が不十分」が10.0%から5.4%に減少するなど、ネガティブなイメージについての項目はすべてが改善しました。このことから、家族の入居によって老人ホームに対するイメージが大きく改善されるケースが多いといえるでしょう。

ただ茂さんの老人ホーム入居から3年、陽子さんは「やっぱり老人ホームへの入居を反対していれば」と後悔しているといいます。

父が老人ホームで出会った女性と結婚すると言い出したんです

50代にして新しい母ができ、血の繋がりのないきょうだいができる――いろいろと面倒なことが起きる可能性があります。相手方の家族も同じことを考えているでしょう。もっと慎重に考えてほしい。そのような周囲の懸念はどこ吹く風、当の本人たちは結婚に向けて盛り上がり、ついに籍を入れてしまったのだとか。

一瞬でも亡くなった母のことや家族の顔を思い浮かべてくれたなら、こんな軽はずみなことはしなかったはず

自分たちのことしか見えてない父・茂さん。一瞬でも亡くなった母や家族の顔が浮かんだなら、このタイミングでの再婚などなかっただろうに……陽子さん、歯ぎしりをして悔しがるしかないといいます。

遺言書があっても新妻は遺産の1/4を主張できる

相続が発生した際、遺言書があればその遺言書に則って、遺言書がなければ法定相続人が話し合って遺産分割を進めていきます。

法定相続人は民法で相続人となることができると定められた相続人で、配偶者と血族の2種類があります。配偶者は必ず相続人となり、血族には順位がついており、先順位の者が相続人となります。第1順位は被相続人(亡くなった人)の子。子がいなければ、第2順位はである直系尊属=被相続人の親等が相続人になり、親がいなければ第3順位である被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。

今回、茂さんが再婚をする前、仮に相続が発生したら、陽子さんをはじめとする茂さんの子どものみでした。兄弟姉妹が3人いれば、遺産を3分割する……単純な相続となります。

しかし今回、茂さんが再婚したことで、仮に相続が発生したら、新妻が必ず相続人になります。この場合の法定相続分は妻に2分の1、子が2分の1。子が3人いれば、1/6ずつということになります。遺産の1/3が1/6になるわけなので重大です。しかも陽子さんたちにとっては、突然わいてでてきたような女性に、遺産の半分をもっていかれるのですから心穏やかではありません。これは相手方にとってもそう。新妻が先に亡くなって相続が発生したら、茂さんが新妻の遺産の半分を受け取れるというわけです。

遺言書によって遺産分割は子どもたちだけにすることも可能です。しかし、このような場合でも新妻は遺留分を主張できます。遺留分は遺言書であっても侵害されることのない遺産の取り分。法定相続分の半分を主張できます。つまりこの場合、遺産の4分の1は「遺留分の侵害だ!」と主張できるというわけです。

このような事情があるだけに、陽子さんが茂さんの幸せを素直に喜ぶことはできないのは、仕方がないことといえそうです。

[参考資料]

株式会社 LIFULL senior『介護施設入居に関する実態調査 2023年度』

法テラス『法定相続人とは何ですか。』

法テラス『遺言がある場合、相続はどのようになされますか。』

法テラス『遺留分の相続財産に対する割合はどうなっていますか。』

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