「うちは貧乏だから」とは言わない…夫の手取りは月25万円、世帯年収400万円で〈子ども5人〉を育てる妻の“静かな決意”【インタビュー】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月28日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
マイノリティとして生きる人々にとって、生活の選択肢は狭まるばかりです。外国ルーツであることに加えて、多子家庭でもあるウォルデ舞さん(仮名)の事例をもとに、その実態をみていきましょう。公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事の今井悠介氏が解説します。
5人の子と海や山には行けない
ウォルデ舞さん……長男(高校生)・長女(中学生)・次男(中学生)・三男(小学生)・次女(小学生)
ウォルデ舞さんは外国出身の夫と20年ほど前に結婚し、今は子ども5人と一緒に7人で暮らしている。夫は工場での仕事をフルタイムで、舞さんは介護の仕事を週に数日している。
―夫婦で共働きをされているんですね。
そうですね。うちの夫は外国人です。外国人を雇ってくれる会社ってそうそういいところはないんですね。これまで3つ、4つと仕事を変わってきていますけど、やっぱりどこも日本人が好まないところなんですよ。
今は工場で仕事をしています。最初は土曜日が休みだったのが、週6日に変わってしまいました。みんな辞めていくから人が足りないんですね。毎朝7時とかに行って、帰ってくるのは夜の9時とか10時とかです。
夫がハローワークで「おたくの国は難しいからね」って言われたこともありました。最初に転職しようと思ったときなので少し前の話ですけど、今思えばそんな言葉よく言えたなって。でも、実際にそうなんですよね。
―お二人の給料は結婚された20代の頃に比べて上がっていますか。
変わってないですね。上がることはないと思います。今は彼の手取りが25万円くらいで、ボーナスはありません。会社側もレベルアップする人を求めてるわけじゃなくて、淡々と文句を言わずに作業する人がほしいという感じです。それが嫌なら辞めて、次の人をまた募集して、ということの繰り返しですね。
―年収にすると夫が300万円、妻が100万円といった感じでしょうか。
大体そうですね。足しても400万円ちょっとしかなくて、それを2で割ると200万円ですよね。うちは子どもが5人いるんですけど、もしひとり親で、収入が200万円で、子どもが2人、3人といたらもらえるような手当が、うちではもらえません。政治家の方たちにはそのあたりが見えていないと思うんです。
舞さんの頭に「生活保護」の4文字がよぎったタイミング
コロナのときに収入が減ってしまって、役所の生活保護課に行ってみました。そしたら生活保護を申し込めるレベルだと言われたんですけど、もうちょっとがんばろうと思って、そのときはやめました。
―生活保護のことを考えたのはコロナのときが初めてでしたか。
いえ、ずっと考えてますけどね。うちの夫が死んだら(役所に)行かなきゃと思ってます。
―先ほどハローワークでの話がありましたが、5人のお子さんたちがこれまで育ってきた中で、周りから差別を受けるような経験はありましたか。
保育園のときに「肌の色がどうしてそんなに黒いの?」と言われるようなことは、どの子も1回はありましたね。
ただ、このあたりは外国人が比較的多い地域で、学校にも色々な国の子がいるんです。うちの子たちは肌の色では目立ちやすいですけど、その中で子どもたちも慣れてるというか。
あとは、夫が日本語がそんなにできなくて、漢字とかもそんなに書けないので、子どもたちの書類関係は私が全部やらなきゃいけないですね。
―きょうだい同士の仲はどうですか。
テレビで見るような仲良しの大家族という感じではないです。子どもたち同士の組み合わせによって仲が良かったり悪かったり。面倒を見るというほどではなくても、私が買い物に行くときに上の子が下の子をちょっと見てくれてるとか、そんな感じです。
多子家庭だからこその困難
―5人の子どもを育てる大変さというのは、ちょっと想像がつかないです。
みんな0歳から保育園に入れたので、ほとんど保育園が育ててくれたような感じですよ。一番上の子が小さいときにはその子に時間をかけられたんですけど、一番下の子は同じようには見てあげられていないですね。逆にそれがいいのか、伸び伸び過ごしてますけど。
海とか山とかも、子どもの事故のニュースとかもあるので、そんな危険を冒してまでは連れていけないですね。2人の親で子ども5人とか見れないじゃないですか。
―お子さんが多い場合にはそういった難しさも出てくるんですね。
女の子二人が週末にダンスを習っていた時期があったんですけど、日本の風習というか、悪習というか、親も一緒にずっといないといけなくて。
でもそうすると、その時間はほかの子たちがほったらかしになっちゃうじゃないですか。陰で犠牲になってるほかのきょうだいもいるわけなので。
男の子たちがスポーツ少年団に入っていたときも親の負担が大きくて。下の子たちがまだちっちゃかったのに炎天下で連れていかないといけないのも大変でしたね。
子どもに「お金がない」とは言えない…多子家庭の苦悩
―お金の面に関わるところではどうですか。
それぞれの誕生日には好きなものを1個買ってあげるというふうにしているんですけど、子どもたちの誕生日がくっついてる時期があって、そこがちょっとつらいですね。
貯金という貯金はないので、児童手当が年に何回かまとめて入るのを貯金のように使っています。ただ、一番上の子は高校生になったので、児童手当はもうありません。実際には、高校生になってすごくお金がかかっています。
―どんなお金がかかっていますか。
お米はいっぱい食べるし、定期代もかかるし、バスケ部の遠征費も結構かかります。高校に入ったらパソコンとか教科書とか制服とかも買わないといけなくて。果物をあまり買っていないので、ビタミンが取れてないかもしれません。お米がどんどんなくなるので、ほかのところで削るしかないですよね。
長男は中学時代に、バスケで有名な私立の高校の監督から「ぜひうちに来てくれ」という話もあったんですけど、本人が県立を選びましたね。「私立に行ってもいいよ」と言ってはいたんですけど、内心はドキドキしていました。やっぱりきょうだいのトップバッターにお金を全部使っちゃったら後が続かないので。一番上の次が中学生で年子なんですよ。
今の県立高校のチームは弱小なんです。だから、人生の分かれ道だったのかなと思います。「うちは貧乏だから」とか、「お金ない」とか、そういうことは子どもたちにあまり言わないようにはしています。でも、上の子は特によく気が付くから、家のこともわかっていて、県立を選んだんでしょうね。
―限られたお金を5人の成長に合わせてどう使っていくか、難しいですね。
今は上の子二人を塾に行かせています。本当はその下の子も行かせたほうがいいと思うんですけど、経済的に難しいので我慢の時期ですね。英語でつまずかないように小6から通っていた英会話も途中でやめさせました。本人はそんなに好きじゃなかったみたいで、やめられて喜んでましたけど。
上の子3人は部活でバスケをやっています。お兄ちゃんからのというよりは漫画の影響かなと思います。バスケでお金がかかるのは、最初にシューズを買うのと、靴下ぐらいですかね。ユニフォームは学校のやつを着回せるので。ただ、もうすぐ冬になりますけど、そうするとジャージを買うんですよ。そろそろ3番目の子が言ってくるだろうと思います。それが1万円以上にはなっちゃうのかなという感じです。
今井 悠介 公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン 代表理事
※インタビュイーのプライバシーに配慮して名前は仮名とし、一部の情報に加工を施している。
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