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月収55万円・貯金2,000万円だった62歳・元トラック運転手「こんなはずでは」…定年後わずか2年で〈老後破産危機〉のワケ【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月29日 11時15分

月収55万円・貯金2,000万円だった62歳・元トラック運転手「こんなはずでは」…定年後わずか2年で〈老後破産危機〉のワケ【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

退職までに2,000万円を貯めた60代夫婦。ひとり息子も結婚して独立しており、将来は安泰だと安心していたものの、予想外の事態に「老後破産」が現実味を帯びてきたのでした。いったい夫婦になにがあったのか、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、老後の“思わぬ落とし穴”について事例をもとに解説します。

長距離トラックの運転手だったAさんの老後計画

Aさん(62歳)は、妻のBさん(64歳)と、東京近郊の戸建て住宅に住んでいます。

Aさんは、長距離トラック運転手として勤めた中規模の運送会社C社を60歳で定年退職。またBさんも、昨年まで派遣社員としてある会社に勤めていました。今後の収入は、夫婦ともに老齢厚生年金と個人年金保険です。

世帯収入は、Bさんが61歳になるタイミングから、特別支給の老齢厚生年金である月5万円を65歳まで受給。65歳からは、Aさんは月約15万円、Bさんは月約12万円の老齢厚生年金を受け取る予定です。個人年金保険は、夫婦とも65歳から15年間、月5万円を予定しています。

<Aさんの年齢別の世帯収入>

■59歳から60歳(の誕生日の前日)まで=60万円(うち55万円はAさんの月収)

■60歳から63歳まで(同上)=5万円(Aさん、61、62歳は月13万円と想定)

■63歳から65歳まで(同上)=17万円

■65歳から78歳まで(同上)=37万円

■78歳から80歳まで(同上)=32万円

■80歳以降=27万円

夫婦が勤めていた会社には、ともに退職金制度はありませんでした。そこで老後の生活資金として、Aさんが退職する60歳までに2,000万円を貯める目標を立て、計画通り達成していました。

そのため、Aさんは65歳までの収入減も「1人息子も結婚して独立したことだし、貯めた2,000万円を取り崩せば何とか生活できるだろう」と考えていました。

あれっ?ちょっと待って…Aさんの誤算

Aさんは退職後、65歳まで返済が残っていた住宅ローンの残債約465万円(月7万7,500円)を一括返済。さらに、車の買い替えや夫婦での旅行、さらには自宅の修繕を済ませました。

以前から計画していたこととはいえ、昨今の物価高騰のあおりを受けて予定以上の出費に。さらに追い打ちをかけたのが、想定の収入に誤りがあったことです。

Aさんは、Bさんが61歳から月額5万円受給している特別支給の老齢厚生年金について、妻より稼ぎがあった自分は少なくとも月8万円は受給できると考えていました。

しかしこの年金は、男性は昭和36年4月1日生まれまでが受給対象で、昭和37年11月生まれのAさんは対象ではなかったのです。

※ 女性は、昭和41年4月1日まで。対象者の生年月日と性別によって、受給開始年齢が異なる。現在また今後の受給者の受給額は、老齢厚生年金の「報酬比例部分」の額。

Aさんの計画では、65歳までに500万円は残す予定でした。しかし、預金残高は定年から3年足らずで100万円台にまで減っています。

「あれっ? ちょっと待ってくれ、なんでこんなに残高が減っているんだ? おかしい……こんなはずじゃなかったのに」

安泰の老後どころか、このままでは破産の危機です。なんとか家計を改善しなければと危機感を抱いた夫婦は、以前からの知り合いであったFPのもとへ相談に訪れたのでした。

現役時代に貯めた「老後資金」いつから取り崩すのが正解?

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査結果の概況」によると、勤続20年以上かつ45歳以上の退職者がいた企業の退職者に退職給付(一時金・年金)制度がある企業は、平均=74.9%となっています。

■従業員数1,000人以上の企業=90.1%

■300~999人=88.8%

■100~299人=84.7%

■33~99人=70.1%

平均で約25%、つまり4社に1社は退職金制度がないことがわかります。

また同調査で、主な産業別の退職金制度がある企業は、複合サービス事業(郵便局や他に分類されない協同組合)=97.9%、鉱業、採石業、砂利採取業=97.6%、電気・ガス・熱供給・水道業=96.4%と続き、Aさんが勤務していた運輸業、郵便業=69.9%、宿泊業・飲食サービス業=42.2%の順となっています。

老後資金を使いはじめる平均年齢は66.8歳

生命保険文化センター「『生活保障に関する調査』2022(令和4)年度」によると、預貯金や個人年金保険、有価証券などの老後資金を使い始めようと考えている年齢は、平均66.8歳。また老後資金を使いはじめる年齢は、65歳=34.2%、70歳=23.4%、60歳が11.7、70歳以上=9.3%の順になっています。

Aさんと同様に60歳で使い始めるのは11.7%、約11人に1人です。

A家の家計の現状を知る

筆者はAさんに、なぜ退職までに2,000万円を貯めることができたのか聞きました。

A夫婦は、株式や投資信託といった金融商品への投資運用が苦手な分、ひとり息子が大学を卒業してから約10年間、お互いの収入から4~5万円ずつ出し合って定期預金を積み立てたそうです。

現在の家計支出額は、住居費、水道光熱費、通信費、保険料、サブスクリプションサービスの料金、自動車維持費、固定資産税といった固定費と、食費、日用品、医療費、冠婚葬祭費、理美容費といった変動費です。おおよその金額を書き出してみると、あわせて月38万円前後だとわかりました。

旅行や外食も多く、月によっては50万円以上になり、勤めていたときよりもむしろ出費が多くなっています。このままの生活を続けると、近い将来破産することは誰の目にも明らかです。

家計改善で月5万円以上の支出削減も可能

筆者はAさんへ、家計の立て直しの方法を提案しました。

筆者「家計を改善するには、定石通り、収入を増やすか支出を減らすか、また両方をすることです。A家の支出を削減する方法として、客観的にみて、特に退職後契約したサブスクや保険などを解約することで、少なくとも月5万円の支出を削減できます」

Aさん「ちょうど、子どもが大学を卒業するまでの節約時代に戻るイメージですね」

と、納得された様子でした。

さらには、健康上問題がなければ再び働いて給与を得ることを提案すると、Aさんは年金が受給できる65歳まで、非常勤のトラック運転手としてC社で働くことを決めました。C社の社長は「給与が高いのは痛手だが、この人手不足にベテランの運転手が戻ってきてくれて嬉しい」と喜んでいたそうです。

Aさんは、「2,000万円をコツコツ貯めるのに時間がかかったし、家計の節約もしました。しかし使うときは、本当にあっという間になくなってしまって……頭ではわかっていたんですが、驚きでした。今は以前の生活に戻りほっとしています」と安堵した表情で話してくれました。

老後資金を確保していても油断は禁物

長年支出を我慢して使う目的のために貯めた資金でも、貯めたことに安堵することなく生活することが重要です。

A夫婦の場合、新車の購入費や旅費の予算を立て、貯蓄残高を確認しながら使わなければ、貯蓄の主目的であった「老後の生活費」がなくなり、取り返しのつかない事態になりかねませんでした。

通常、収入は年齢とともに先細ります。終の棲家で悠々自適な生活を過ごすために、資産状況をこまめに確認しながら、その時々で無理のない支出を心がけましょう。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

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